どの子も達成感を味わえるゴム跳び・走り高跳びの授業は、どうしたらいいの? 【使える知恵満載! ブラッシュアップ 体育授業 #31】
走り高跳びや走り幅跳びは、ふわっと宙に浮くような感覚や、記録向上の達成感を味わえる魅力的な種目です。その一方で、子どもの体格や走力が記録に影響しやすく、子どもによっては苦手意識をもち、意欲が低下してしまうことがあります。今回は、ゴム高跳びと走り高跳びを例に、どの子も達成感を味わえる記録の得点化を紹介します。
執筆/新潟県公立特別支援学校教諭・酒井慎一郎
監修/筑波大学附属小学校教諭
体育授業研鑽会代表
筑波学校体育研究会理事・平川 譲
目次
1 ゴム高跳び(中学年)
場の設定や高さの調整を簡単にし、活動量を保障するために、友達の体のどこまで跳び越せるかを得点化します。得点の具体は、下の<得点の目安>を参考にしてください。
体育の学習班を使用することで、似通った身長の友達の体が得点の指標となり、身長の高低による不公平感を解消できます。
学習班に1枚ずつ下のような得点表を配り、各自の最高得点を記入できるようにします。得点のたし算を使うことで、クラス全体の学習意欲を高めたり、雰囲気をよくしたりすることができます。
なお、安全な着地を意識付けるために、足の裏以外(手やお尻、膝など)が地面に着地した場合は0点とすることを指導しておきます。
2 走り高跳び(高学年)
走り高跳びの授業では、池田らが開発した、走り高跳び目標値の計算式であるノモグラムを用いて記録を得点化する方法があります。
※【参考文献】池田延行・蒲池直志『体育学習における標準設定の方法に関する研究』(体育経営学研究)/池田延行・長畑秀幸『個人差に応じて、ひとりひとりが楽しむ走り高跳びの授業』(学校体育)/平川譲『体育授業が得意になる9つの方法』(東洋館出版社)
50m走の記録と身長を使って、目標の記録を算出します。
走り高跳びの目標記録=0.5×(身長cm)-10×(50m走の記録)+120
120を110や100にすると、目標達成がしやすくなり、意欲を高めることができます。
この目標記録を10点として得点表をつくります。子どもが計算する場合は、この計算式のままでは、負の数の計算をしなければなりません。次のように式を入れ替えると計算しやすくなります。GIGA端末を利用するのも1つの方法です。
走り高跳びの目標記録=110+0.5×(身長cm)-10×(50m走の記録)
走り高跳びは、大単元にしても、単元後半までの継続的な記録の向上は、望みにくい種目です。20分×4~5回の授業で記録向上を目指すことがお薦めです。ゴム高跳び同様、安全な着地を意識付けるために、足の裏以外で地面に着地した場合は0点とすることを指導しておきます。
平ゴム(幅2cm程度):1本(伸ばした時の長さ3m程度)
塩ビ管(高さ2m程度):2本
※上端に十字の切り込みを入れた公式テニスボールを差し込ませて安全対策を施す。
今回は、ゴム高跳び・走り高跳びを例に、記録の得点化についてご紹介しました。次回は、川跳び・走り幅跳びを例に、記録の得点化についてご紹介します。
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執筆
酒井 慎一郎
新潟県公立特別支援学校 教諭
1979年 新潟県見附市生まれ。小学校や特別支援学校において、運動に苦手意識や抵抗感のある子どもの指導・支援に重点を置いて研鑽中。新潟学校体育研究会幹事。『「資質・能力」を育成する体育科授業モデル』(共著)(学事出版)等、共著・雑誌原稿等執筆多数。
監修
平川 譲
筑波大学附属小学校 教諭
体育授業研鑽会 代表
筑波学校体育研究会 理事
1966年千葉県南房総市生まれ。楽しく力がつく、簡単・手軽な体育授業を研究。日本中の教師が簡単・手軽で成果が上がる授業を実践して、日本中の子どもが基礎的な運動技能を獲得して運動好きになるように研究を継続中。『体育授業に大切な3つの力』(東洋館出版社)等、著書多数。
イラスト/佐藤道子