よりよい学校づくりのために トイレ改修プランを磨き合おう!【6年3組学級経営物語10】
通称「トライだ先生」こと、3年目教師・渡来勉先生の学級経営ストーリー。今回は、「低学年トイレの改修」にトライします。
大河内先生のかけ声で、西華小学校のトイレ改修プロジェクト「チームトイレ」が始動! 規格通りの改修ではなく、子どもたちの意見を取りいれた改修を。……それは、子どもたちの思いや願いに向き合う学校づくりの実現でもあります。
怖い、汚い、薄暗い低学年のトイレがどのように変貌するのか!? みんなの願いがこもった夢のトイレの実現に向けて、レッツトライだ!
文/大和大学教育学部准教授・濱川昌人
絵/伊原シゲカツ

8月②「トイレの改修」にレッツトライだ!
目次
<登場人物>

トライだ先生(渡来勉/わたらいつとむ)
教職3年目の6年3組担任。 真面目で子ども好きの一直線なタイプ。どんなことでも「トライだ!」のかけ声で乗り越えようとするところから、「トライだ先生」とあだ名が付く。今年度は、新採のメンターも務める。特技は「トライだ弁当」づくり。

しずか先生(高杉静/たかすぎしずか)
6年1組担任で、学年主任2年目、教職11年目の中堅女性教諭。ベテラン教諭に引けを取らないリーダーシップぶりは、剣道五段の腕前に依るところも。一児の母、子育てと仕事の両立に日々奮戦中。

オニセン(鬼塚学/おにづかまなぶ)
教職生活5年目の6年2組担任。祖父と父が有名校長で母も教師という教育一家出身。イケメンでなおかつ優秀な成績で教育大学を卒業したという、典型的な〝オレ様〞タイプの教師。学級内のトラブルに十分対応できず、再び5年担任を任じられた昨年度、しずか先生率いるチームに育てられ、渡来先生とぶつかりながらも今や切磋琢磨しあう良き仲間に。

神崎先生(神崎のぞみ/かんざきのぞみ)
高学年の音楽・家庭科の専科講師。インクルーシブ教育にも携わる。大学4年生のときに交通事故で片足をなくし、入退院で休学、留年(渡来先生と同じ年齢)。一度諦めかけた教師の夢へと一歩を踏み出し、西華小の常勤講師に就く。大学時代は陸上選手として活躍し、体力には自信あり。

ゆめ先生(葵ゆめ/あおいゆめ)
教職5年目。2年担任。2年後輩のトライ先生を励ましつつも一歩リード。きまじめな性格で、ドライな印象を与えてしまうことも。音楽好きでピアノが得意。

チャラセン(最上英雄/もがみひでお)
新採教員で、2年を担任。教育実習のときに付いたあだ名は「チャラセン」。”チャラい”言葉を使うイマドキな新任教師。クラスでは、ふだんは子どもたちから「ヒーロー」と呼ばれることも。
揺れるオニセン…
「最近忙しそうですね。何かあったんですか?」
1週間後の職員室。思案顔の鬼塚先生に、渡来先生は休憩時に思い切って質問をしました。
「あ、いや。大した事ないんだ。だけどさ…」
無理につくった笑顔で、話を続ける鬼塚先生。
「協力はしたいんだ。チームトイレのこと、教えてくれ」
少し考えた後、静かに頷く渡来先生。そして、チームトイレの活動について説明を始めました。
最初の集まりでは、子どもたちのアンケート結果を踏まえた改善の方向性。次はそれを集約して「明るい」「親しみが持てる」「楽しい」等のコンセプトを決定。さらに各自で具体的なプランを作成する段階に進んでいます。また管理職と施工業者との打ち合わせに、大河内先生と学校用務員の山田さんが加わることになりました。その席上、8月前半のトイレ改修に先立つ1か月前に、学校側が考えている改修内容を明確に示すよう業者に求められました。
「だから7月初めには、低学年の意見を聞く会を開くつもりだ。つまり、トイレのコンペだな」
「さすがイワオジ、面白いぞ。時間は少ないが、自分の案が選ばれるようみんな頑張ろうな!」
檄を飛ばした山田さんの表情も、輝いていた…。そこまで話した時、鬼塚先生が呟きました。
「でも、映像化しなけりゃ、コンペは分かりにくいだろうな。やっぱり、オレのICTスキルが必要だな」
気持ちを察して、ニッコリ笑い頭を下げる渡来先生。嬉しそうに教室に向かう鬼塚先生を見送っていた時、高杉先生に声をかけられました。
「地元に帰ってくるよう望まれてるんだ、…お父さんに。8月の転出試験を受けるべきか、悩んでいるそうだ。…暫くそっとしておいてやろう」・・・ポイント1
驚く渡来先生。教育一家出身で期待の星である鬼塚先生の悩みを知り、言葉を無くしました。
ポイント1【他地域への転出】
他地域への転出は、教育委員会毎に実施の有無や試験や面接等の方法が示されます。経験を積んだ教員の不足を補う目的で実施されますが、受験は現任校の人事に影響を及ぼす可能性があります。そのため管理職とよく相談のうえ、行動するべきでしょう。