GIGAスクール1人1台端末を活用した「共同編集」による学びづくり【第2回】便利な点・注意すべき点とは?

連載
GIGAスクール1人1台端末を活用した「共同編集」による学びづくり

東北大学大学院情報科学研究科教授

堀田龍也
GIGAスクール1人1台端末を活用した「共同編集」による学びづくり

1人1台端末を活用して豊かな学びを生み出す上で、最も重要なキーワードのひとつが「共同編集」です。クラウド環境の強みを活かした共同編集によって、子どもたちの学びはもちろん、教職員研修や会議が驚くほど変わっていきます。新しい学びの可能性を示す全5回の連載、第2回をお届けします。

前回は、クラウドサービスを利用した共同編集機能がどのようなものなのかについてご紹介しました。今回は、共同編集機能を使う際に便利なところと、注意しなければならないところについてご紹介していきます。

監修/東北大学大学院情報科学研究科教授・堀田龍也、 信州大学学術研究院教育学系助教・佐藤和紀、常葉大学教育学部専任講師・三井一希

ほりた・たつや。1964年熊本県生まれ。東京都公立小学校教諭を経て、教育工学を専門とする研究者となる。中央教育審議会にて現行学習指導要領の策定に関わり、ICT関連の内容に寄与。「学校におけるICT環境整備のあり方に関する有識者会議」座長を務め、方針をとりまとめた。

さとう・かずのり。1980年⻑野県出身。東北大学大学院情報科学研究科修了、博士(情報科学)。東京都公立小学校勤務等を経て2020年より現職。研究分野は教育工学、情報教育、ICT活用授業。文部科学省委員も務める。

みつい・かずき。1982年山梨県生まれ。熊本大学大学院教授システム学専攻博士前期課程修了。山梨県公立小学校等の勤務を経て2020年より現職。研究分野は教育工学(特にICT活用授業、授業デザイン)。文部科学省ICT活用教育アドバイザーなど。

執筆(6名の共同編集により執筆)/信州大学大学院教育学研究科1年・手塚和佳奈、信州大学教育学部4年・若月陸央、信州大学教育学部3年・小泉遙香、信州大学教育学部3年・萩原ほのみ、常葉大学教育学部4年・中山毬子、常葉大学教育学部4年・南條優

共同編集機能の便利なところ

ノートパソコンを使って学習に取り組む女児

クラウドサービスを利用した共同編集機能には、これまでよりも協働作業が容易になる、学級の児童全員の思考や過程を常に可視化・共有できるといった便利な点があります。

例えば、班の意見をまとめる際には共同編集機能の便利さが発揮されます。これまでは、班で模造紙等に意見をまとめる活動を行う際に、誰か1人が作業をしていると他の子どもは作業スペースがなくなってしまうので手持ち無沙汰になってしまう状況が生まれていました。これでは、せっかく班で協力して作業する活動にも関わらず、何もできない・思考停止状態の子どもが出てしまいます。

そこで共同編集機能を活用すると、複数の人が同時に同じものを編集できるため、役割分担をして一斉に作業を進めることが可能になります。ほかにも、修学旅行で学んだことのまとめを班で行うときに、共同編集可能なプレゼンテーションツールを活用することで、班の全員が同時にまとめの作成を進めることができます。

これまでは模造紙で作業する場合、誰かが作業していると自分が使いたい色のペンが使えなかったり、手が当たってしまったりして作業しにくくなることがあったかもしれません。しかし、プレゼンテーションツールで共同編集を行えば、場所や道具の制約がなくなるので、どこからでも自分の好きな機能を使って編集ができます。

つまり、「今使いたいものを他の子が使っているから…」「隣の子と手がぶつかってしまうから…」などといって、他の子の作業が終わるのを待つ必要がありません。このように、班員で協力して作業をするときに協働作業がしやすくなることは、共同編集機能を活用する利点の一つです。

また、学級全員の思考や学習の過程を常に可視化・共有できることも共同編集機能の便利さです。

例えば、理科の実験を行う際の実験・観察カードのデジタル化があります。端末が入る以前には、班員の中では実験結果が共有されていても他の班の実験結果は発表するまでわかりませんでした。そのため、自分たちの班の実験結果やまとめ方が間違っていても、子どもたちは全体発表の時まで、間違いに気がつくことができませんでした。

しかし、実験・観察カードを共同編集可能なツールを用いてデジタル化して学級全体で共有しておくことで、他の班の実験結果や結果のまとめ方をいつでも確認することができます。他の班のまとめ方を見ることで、実験結果が違うことに気がついたり、他のまとめ方を真似したりすることができるようになります。

常に共有されている情報を、学級の子どもたちがお互いに参考にし合うことが容易になることも共同編集機能の便利なところです。

共同編集機能で注意しなければならないところ

ICTを活用した授業に取り組み子どもたち

このように、共同編集機能には便利なところがある一方で、注意しなければならないところもあります。

共同編集をしているときには、自分が入力している時に、誤って他の人の入力箇所を編集してしまうことがあるので注意が必要です。

例えば、自分の意見や感想を表計算ツールを使ってそれぞれ自分の割り当てられたスペースに入力する場面を想定します。この時、選択した入力箇所がずれてしまったことに気がつかず、他の子どものスペースに入力してしまったり、他の子どもが入力したものを消してしまったりすることがあります。プレゼンテーションツールを使って共同編集する場面であれば、他の子どもが挿入した画像や文字を誤って消してしまうことが考えられます。

共同編集では、故意ではなくても誤って消してしまったり、他の人の担当箇所を編集してしまったりすることがあるということです。お互いに気をつけ合うことや、もし誤って消してしまっても責めない環境づくりが大切です。

また、クラウドの特性として変更履歴から復元が可能なので、変更履歴を活用していくことも方法の一つです。

共同編集機能には、便利なところも注意しなければならないところもあります。活用する際には、共同編集の仕組みや、便利なところ・注意しなければならないところについて学級全体で共通理解を図るようにすると良いでしょう。

【連載】GIGAスクール1人1台端末を活用した「共同編集」による学びづくり 他の回もチェック ⇒
【第1回】「共同編集」ってどんなもの?

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