GIGAスクール1人1台端末を活用した「共同編集」による学びづくり【第1回】「共同編集」ってどんなもの?
読者の皆様の自治体にも1人1台端末が整備されているでしょうか。GIGAスクール構想が打ち出され、1人1台端末は令和の学びのスタンダードと言われるほど重要なものです。
それでは、1人1台端末の整備により、校務の改善や児童生徒の協働的な学びがどのように実現するのか、クラウドサービスについて触れながら一緒に考えていきましょう。第1回はクラウド活用の最大のメリットともいえる「ファイルの共同編集」について紹介します。
監修/東北大学大学院情報科学研究科教授・堀田龍也、信州大学学術研究院教育学系助教・佐藤和紀、常葉大学教育学部専任講師・三井一希
堀田龍也(ほりた・たつや)1964年熊本県生まれ。東京都公立小学校教諭を経て、教育工学を専門とする研究者となる。中央教育審議会にて現行学習指導要領の策定に関わり、ICT関連の内容に寄与。「学校におけるICT環境整備のあり方に関する有識者会議」座長を務め、方針をとりまとめた。
佐藤和紀(さとう・かずのり)1980年⻑野県出身。東北大学大学院情報科学研究科修了、博士(情報科学)。東京都公立小学校勤務等を経て2020年より現職。研究分野は教育工学、情報教育、ICT活用授業。文部科学省委員も務める。
三井一希(みつい・かずき)1982年山梨県生まれ。熊本大学大学院教授システム学専攻博士前期課程修了。山梨県公立小学校等の勤務を経て2020年より現職。研究分野は教育工学(特にICT活用授業、授業デザイン)。文部科学省ICT活用教育アドバイザーなど。
執筆/(6名の共同編集により執筆)信州大学大学院教育学研究科1年・手塚和佳奈、信州大学教育学部4年・若月陸央、信州大学教育学部3年・小泉遙香、信州大学教育学部3年・萩原ほのみ、常葉大学教育学部4年・中山毬子、常葉大学教育学部4年・南條優
目次
学校とクラウドサービス
GIGAスクール構想の実現パッケージ(文部科学省 2020)において、学校現場でもクラウドサービスの利用が前提のセキュリティガイドラインが公表されたり、クラウドサービスを第一にして考えていく「クラウド・バイ・デフォルト」の考えが浸透したりしています。
ここで出てきているクラウドサービスとは、ソフトウェア、ファイル、データなどをインターネットなどの通信ネットワークを通じて、利用者がいつでもどこからでも必要なときにアクセスできるサービスの総称です。要するに、学校のパソコンであっても、家のパソコンであっても同じクラウドサービスにデータを入れておけば、いつでも編集・閲覧することが可能であるということです。
GIGAスクール構想により、端末の整備を早い段階で実施した自治体ではこうしたクラウドサービスの機能を利用して、学校の授業で協働的な学びを実現しつつあります。
クラウドサービスを利用したツール
クラウドサービスの利用による最大の利点は、協働で作業ができるようになったということです。
例えば、図工の時間に作品の鑑賞会をする場面で考えてみましょう。端末が入る前は、一人ひとりプリントにコメントを書き、何名かのコメントを発表したり、プリントを交換したりすることが多かったと思います。
それが、クラウドサービスを利用することにより、クラス全員で1つのファイルに同時にコメントをすることができるようになります。教師がコメントを集めてまとめる負担も減り、全員のコメントがすぐに共有されるようになります。
それでは、クラウド上で共同編集を可能にしたツールにはどのようなものがあるでしょうか。例えば、文書作成ツールや表計算ツール,プレゼンテーションツールがあります。
【出典】文部科学省 教育課程部会(第124回)配布資料【資料2-2】GIGA StuDX 推進チームの取組について
https://www.mext.go.jp/content/20210629-mxt_kyoiku01-000016453_2-2.pdf
クラウドサービスを利用する良さ
クラウド上で共同編集する時、何十人もの人が同時に編集できるという良さがあります。
例えば、社会の時間に班でポスターを作る場面で考えてみましょう。端末が入る前は、同時に書き込もうとすると手がぶつかってしまい、班の誰かが書いているのを他の人は見ているだけになってしまっていました。
それが、共同編集を前提としたツールを使えば、いつでも、どこでも、何人でも書き込みながら仕上げることができます。こういった場面に限らず、共同編集を前提としたツールを便利に使える場面は他にも多くあります。ただし、いつでもどこでも編集できるからといって話し合いを行わずに進めるのは大変難しいことです。あらかじめ、役割分担など、共同編集におけるルールを決めて活動に入ると、円滑に進めることができます。
他にも、共同編集を前提としたツールを使えば、リアルタイムで同時に編集できるため、常に思考や過程が可視化・共有されることも良さの一つです。児童生徒が利用する場合では、複数人でリアルタイムに編集できる利点を活かし、学級会や専門委員会の議事録をとるときの活用が便利です。
教師が利用する場合は、朝の打ち合わせから校内研修の内容まで幅広い場面で議事録をとる際に便利になります。先に述べた多くの人数で同時に編集できることと併せて利用すれば一人で議事録を取る必要はなく、役割分担もしておけば一人あたりの負担も軽減されます。クラウドサービスを利用して、今までの活動を便利にする、という考え方がポイントです。〈続く〉
【参考文献】文部科学省(2020)GIGAスクール構想の実現パッケージ
https://www.mext.go.jp/content/20200219-mxt_jogai02-000003278_401.pdf