5分の削減が余裕をつくる「幸せタイムマネジメント」

特集
新任教師&教職を目指す方へのオススメ記事セレクション
特集
小学校教員の「学校における働き方改革」特集!

先生の幸せ研究所

鳥居紗歩

学校専門コンサルタントとして日々活躍している鳥居紗歩さん。みん教相談室でも悩みを抱える先生方の心に寄り添った回答で定評があります。そもそも学校専門コンサルタントとはどんな職業なのでしょうか。プライベート時間をしっかり確保するタイムマネジメントとは? 定時退勤のためのヒントをご紹介します。

執筆/先生の幸せ研究所・鳥居紗歩

5分の削減が余裕をつくる「幸せタイムマネジメント」

忙しいのが当たり前という思い込みをなくそう!

みなさんこんにちは! 先生の幸せ研究所で学校専門コンサルタントをしている鳥居紗歩と申します。「みん教相談室」では回答者として、悩める先生方の背中をやさしく押せるよう、専門家の立場でアドバイスをしています。

ここで学校専門コンサルタントとして私がお伝えしたいのは、先生方は毎日13時間の勤務時間に加え、休憩もなく、休日に仕事を家でやることが当たり前ではないということです。どれだけ忙しくても、7時間45分の勤務時間で帰れるし、45分間しっかり休憩して、休みだって取れます。

そしてそれは、私のような学校専門コンサルタントの少しの手助けと、先生自身が「先生というのは忙しいのが当たり前だ」という思い込みから解放された時、実現に向かっていきます。

心と頭をやわらかくするタイムマネジメント

疲弊してワークショップにやってくる初任教師

学校専門コンサルタントの主な仕事内容として、自治体向けには働き方改革・業務改善やウェルビーイングのコンサルティング、個人向けには時間の使い方のワークショップを開催、学校及び先生や教育委員会に特化した校内コンサルタント養成講座を企画しています。

先日も、初任者向けのタイムマネジメントのワークショップを開催しました。そこに参加してくれていた初任者の方は、着任してまだ1か月なのに、「毎日退勤が22時過ぎ」「土曜日も出勤している」と、とても疲弊している様子でした。

「なにか参考になることがあるかと思ってすがる思いで参加した」
「働き始めて、このままの仕事の仕方(時間の使い方)ではよくない」
「それでもどこをどう工夫したらよいのかわからない」
「初任だけどわからないことがわからない」
「学級経営について不安が多すぎる」

ワークショップへは、こんな思いを抱えて参加される先生方が数多くいます。

鳥居先生のワークショップの様子。
ワークショップの様子。皆さん熱心に耳を傾けています。

タイムマネジメントワークショップでは、自分の時間の使い方を客観的に見直すのですが、はじめに先生の凝り固まってしまっている固定概念をゆっくり溶かします。この固定概念を「バイアス」というのですが、「こうあるべき」「こうしないといけない」という思考の偏りが、学校のみならず大人社会にはまん延しています。

そこでワークショップでは「今よりも30分早く帰る」をテーマに、後掲の教材なども用いながら、次のようなフローで思考を柔軟にしていきます。

1 日々の業務を洗い出してみる

働き方改革で最も必要なことの一つは、実は立ち止まること。例えて言えば、毎日ずっと漕ぎ進めているオールを持つ手を止めること。しっかりと時間をかけて現状を確認することです。そうして、気付いたら終わっている1日に終止符を打ちます。

とはいえ、いきなり「昨日の1日を書き出してみてください」と言っても、なかなか意識していないと思い出せないものです。さらに、私のワークショップでは1分単位で細かく書き出していくので、その作業は容易ではありません。そこでまずは、グループワークで対話しながら、他者の視点を知りながら気づきを促します。自分の時間の使い方を深く理解し、時間を意識して行動する癖づけから始めていきます。

2 どこを削減していけるか検討する

削減は今すぐに手をつけられる働き方改革の一つ。要するに時間の節約です。「お金を貯めたい」と思ったら、毎日のテイクアウトコーヒーをやめて家から持参したり、コンビニ弁当ではなくお弁当を手作りしたり、安く買える通販サイトでネットショッピングをしたりするなど、心がけますよね。

それと一緒で「時間を貯めたい」と思えばいいだけのことです。時間を貯めるために、まずは浪費をやめましょう。例えば、

  • 必要以上に丸つけをしない
  • 印刷するのをやめてデータで管理する
  • 授業準備はタイマーを使って時間を区切る

など方法は無数にあり、そして一人一人にぴったりな解があるはずです。考えてもアイデアが思い浮かばなければ、それは「先生の固定概念」にとらわれているのかもしれません。

ワークショップではバイアスの話も取り入れますので、「これまでの先生像」を忘れて頭をやわらかくして考えていきます。

3 タイムマネジメントにおける「削減」以外にできる方法も考えてみる

「お金を貯める」には節約のほかに収入を増やすという方法が考えられますが、時間には上限があるため、削減以外で時間を貯めるのはとても難しいものです。ですが「削減」の他にできることはあります。それは「協力する」ことです。

学校には最高の協力者である子供たちがいます。例えば、学級通信。先生1人で作ったら1時間かかるとします。では、それを8割ぐらい子供たちに任せて、先生はコメントを追記するだけとしましょう。それだけで時間の削減になります。子供たちに任せることで、自己管理能力や自主性を育むことにも繋がります。

これはあくまでも一例で、現場で実践できる「協力」の事例については、ワークショップ内でも数多く紹介しています。

さらに先生の幸せ研究所で行っている「時間予算ワークショップ」では、それを職員室に置き換えて、教員同士での協力を自然に促すワークショップも行っています。

削減によって1人が生み出す時間はたった5分かもしれませんが、職員室の先生1人1人が5分ずつ生み出したら、それは100分にも250分にも500分にもなり得ます。そんな風に、「協力」には大いなる可能性を秘めています。

4 シンプルに実践あるのみ!

ワークショップの最後には、「じゃあ自分はいつから何をやるんだ!」と行動まで決定します。お手伝いできるのはここまでなので、あとはどうしたいか自分次第です。

いつもアドバイスしているのは、時間が貯まったらどうしたいかをイメージすること。お金を貯めるときも、目標や目的がなく貯めるより、「あの人にプレゼントがしたい」、「自分のためにこれを買いたい」 と 考えることでモチベーションが上がるように 、時間も「貯まったらあれに使いたい!」と自分をワクワクさせるのです。

それが、自分のためかもしれないし、家族のためかもしれないし、学校のためかもしれません。いずれにしろ、働き方改革の目的はただ一つで、よりよい教育活動を目指します。

▼鳥居さんがワークショップで実際に使用している教材の一例

ワークショップで実際に使用している教材の一例
ワークショップで実際に使用している教材の一例

ワーク後は余裕が生まれ自然と笑顔に

手を止め、頭をやわらかくし、頭を使い、最後にはまた手を動かす。

このようにして、ワークショップでは明日から取り入れられるタイムマネジメントの考え方を伝授します。グループワークなども取り入れて、普段同僚には聞きづらい悩みや、忙しい日々で消化しきれていない疑問などを解消することもできます。

「教員歴25年、こんな話を学校でしたことがなかった」「そんなアイデアこれまで思いつかなかった」と、話す受講者の方もいます。

「もう削れるところ(時間)がないと思う」と話していた方も、ワークが終わる頃には「ここか! 見つけられた! 明日から30分余裕が生まれそう!」と笑顔になります。

そんな風に凝り固まった頭をやわらかくしていくのも、コンサルタントの仕事だと思っています。時間や業務に追われ余裕のない先生方に、ぜひ体験してほしいワークです。

ワークショップでは対話をしながら、悩みや疑問を仲間と共有します。
ワークショップでは対話をしながら、悩みや疑問を仲間と共有します。

先生の幸せが子供たちの幸せ

今、先生方に伝えたいのは、まずは先生自身が幸せであること。より楽しく充実している姿を見せることで、子どもたちの未来はきっと明るくなっていくということ。幸せな先生と共に過ごした時間の先に、子どもたちの幸せはあるはずです。

「今、幸せではないのかもしれない…」
「もっと自分らしく先生をしたい!」
「周りの先生方を幸せにしたい!」

今を変えるのは、コンサルタントである私ではなく先生自身です。だからこそ難しく、でもだからこそ簡単です。あなたが変わりさえすればいいのだから。ほんの少し、その手助けができるかもしれません。ご縁があれば、ぜひセミナーやイベントへ参加してみてください。


鳥居紗歩

先生の幸せ研究所鳥居紗歩
「先生の幸せは子どもの幸せに直結する」ことを信じ、実現するため、学校専門コンサルタントとして時間を削減するだけでなく先生たちが幸せになれる働き方改革を実現。他にも「タイムマネジメントワークショップ」や「未来の先生集会」を毎月主催し、若手教師のスキルアップやマインドセットのサポートを積極的に行う。自身の夢は「世界一幸せな職員室の校長先生」になること。
■先生の幸せ研究所公式HP
■フェイスブック

学校の先生に役立つ情報を毎日配信中!

クリックして最新記事をチェック!
特集
新任教師&教職を目指す方へのオススメ記事セレクション
特集
小学校教員の「学校における働き方改革」特集!

教師の働き方の記事一覧

雑誌『教育技術』各誌は刊行終了しました