一学期の通知表所見欄の書き方のポイント【小一小二】
長引くコロナ禍の状況を踏まえながら、低学年の子供と保護者に安心感を与え、来学期への希望と意欲をもたせる通知表の書き方のポイントを紹介します。
執筆/熊本県公立小学校校長・松永裕子
目次
担任から贈るメッセージ
通知表は、一人ひとりの子供の学習の評価や生活の様子など、しっかり見とり伝えるものです。子供も保護者も、所見欄への関心は高く、どんなことが書いてあるのだろう……と期待をもって読むものです。一年生であれば、初めてもらう通知表ですからなおさらです。
ただ、所見を書くスペースは限られていますので、その中に、どう伝えたいことを整理し、ポイントを絞って書くかが大事になってきます。伸びたところやよかったところはしっかりほめてよいでしょう。
逆に、ここをひとがんばりしてほしいという点については、改善点が明確になったり、次につながるような文章にしたりすることが求められます。
学期の終わりに、担任から贈るメッセージです。子供のやる気につながるような通知表にしたいものです。
一人ひとりの記録を基に
さあ書こう! と思っても、なかなか取りかかれないものです。書くための材料をいかに集めておくかが大切です。
記録を残して
一人1枚、記録できるようなシートを準備します。伸びや変容が見られたときや目立った言動があったときなど、すぐにメモします。授業中であれば、付箋にメモし、後でそれを貼るようにしてもよいでしょう。
ときどき、そのシートを見ると、メモが少ない子供がいるかもしれません。意図してその子を見とるようにすれば、所見を書くときに材料に困らないというわけです。
今は、タブレットなどを活用する先生も多いかと思います。やり方などを工夫しながら、情報収集に努めましょう。
子供のメモを参考に
二年生に進級すれば、書く作業もスムーズになりますし、自分自身のことにも目を向けることができるようになります。
学期の終わりに、学習や生活、係や当番などの項目で、自己評価するカードなどを利用して、子供自身のふり返りを利用することも有効です。担任では気付かなかった取り組みや思いなどを知ることにもなります。そういった点から伸びや変容を書くようにすると、その子供に寄り添った文章が書きやすくなります。
キャリア・パスポートの記録なども、参考にするのもよいでしょう。
書くときのポイント
書く内容を整理して
文章の書きぶりには、それぞれ差があります。第一に考えたいのは、書く側の担任の思いが読む側の子供や保護者に伝わる文章になるようにすることです。書きたいことをただ並べても、伝わらないものです。
また、年間に3回、通知表を書くわけですから、同じような内容にならないように気を付けなくてはいけません。
そこで、「学期の全般的な伸びや変容、気付き」→「生活面・学習面」→「次の学期への励まし」といったパターンで書くようにするとよいでしょう。
また、運動会などの学校行事や校外学習など、一学期にしかない教育活動については、記述するようにするとよいと思います。
特に、一年生の一学期は、入学してからの様子が気になるところです。伸びた点などを記すと、保護者も安心されますね。
事実のみの表記にならないように
「〇〇ができました」「〇〇をがんばりました」「〇〇していました」といった事実のみを並べるのではなく、そのことからどんな力が付いたのか、どう変わったのか、総括した文章でまとめるようにしましょう。例えば、
「漢字の練習にこつこつと取り組みました」
「毎日の家庭学習に忘れず取り組みました」
「漢字の学習や毎日の家庭学習にも地道に取り組んできたことで、習ったことをよく理解し、文章中に漢字を使おうと応用できる力も高まっています」
具体的な記述を
子供が実際どんな生活や活動をしているのかを伝えるためには、具体例を示すことが一番です。例えば、
「〇〇係の仕事をがんばっていました」
「整理係として、落とし物コーナーを作ったり、棚のきれいな入れ方をポスターにしたりしたことで教室がすっきりとなり、気持ちよく生活することができました」
運動会のことを記述するならば、「かけっこをがんばりました」と結果だけではなく、休み時間を使って練習したとか、日記に「最後まで力を抜かずに走りたい」と意気込みを書いていたとか、取り組む姿勢やそのなかで見えてきた成長などについて書くと、よりがんばった様子が伝わります。
一文が長くなりすぎないように
言いたいことが多くなると、「〜たり、〜たり」といった形の文章になることがあります。また、たとえをいくつも並べることもあります。読み手にすんなり理解してもらえるように、一文があまり長くならないように気を付けましょう。
また、「取り組んでいました」「〜した姿が見られました」といった語尾が多くなりがちです。重複して使わないようにしましょう。
否定的な文章は避けて!
「忘れ物が多くて困ります」「友達とのトラブルが多いです」と言いたいところですが、ストレートにぶつけてしまう書きぶりは、避けたほうがよいでしょう。こういった点で支障が出ている、そのマイナス面をどうすればよいのか、といった点まで記すようにしたほうがよいと思います。例えば、
「学習に必要なものの準備が十分でないと、スムーズに作業に取りかかれなかったり、学習の能率が上がらなかったりします。メモをとるように声かけしていますので、ご家庭でも一緒に確認していただけると助かります」
なるべく肯定的な文章表現で、担任が認め励ましている気持ちが伝わるようにしましょう。
次のやる気につながるように
担任からの一言で、子供のやる気は大きく変わります。一学期の通知表を手にした後には、夏休みが待っています。その期間の取り組みは、二学期にもつながります。
特に、長期の休みだからできること、例えば、「じっくり読書をする」「苦手な計算の練習をする」「体を動かす」といった点などです。今のうちにやっておくと、自分の力になるからがんばってほしい……そんな励ましがあると、子供たちもやる気になるでしょう。
また、保護者も「子供のことをよく見てもらっている」「しっかり指導してもらっている」と感じてもらえることが、担任への信頼を高めることにもなります。
イラスト/terumi
『教育技術 小一小二』2021年6/7月号より