言った者勝ちの職場に不満が…【現場教師を悩ますもの】

連載
諸富祥彦の「現場教師を悩ますもの」
特集
職員室の人間関係あるある:リアルな改善策を集めました!

「教師を支える会」代表

諸富祥彦

「教師を支える会」を主宰する“現場教師の作戦参謀”こと諸富祥彦先生による人気連載です。教育現場の実状を説くとともに、現場教師の悩みやつらさを解決するヒントを、実例に即しつつ語っていただきます。

前回に引き続き今回も、実際に当コーナーに寄せられた現役教師の声に諸富先生が回答します。

【今回の悩み】言った者勝ちの雰囲気がツライ

頑張れば頑張るほど、たくさんの仕事を任されてしまいます。仕事を任される先生ばかりが退職したり、他の自治体へ転勤したりしてしまいます。
校務分掌や学年配置など、言った者勝ちで決まるような雰囲気が辛いです。どうしたら、よいでしょうか。
(公立小学校教諭・30代、教職年数:13年)

できる人ほど”頑張っても報われない不条理さ”を感じがち

小学校の先生方によく見られることですが、仕事ができる人ほど、その人に仕事が集中する傾向があります。そういう先生ほど、重要な役割を任され、校長の期待に応えようとして必死に頑張ります。

ところが、任された仕事を頑張っても、それは当然だという態度を校長にとられて報われた感じがしないという不満もあります。また、責任の重い任務ですから、保護者からのクレームもその先生が受けたりすることになります。

その一方で、ご質問にあるように、校務分掌や学年配置などで「注文をつけた者勝ち」の事例が多くあることも確かです。

例えば、「昨年度は高学年の大変な学級を受け持ち、精神的に限界なので、次年度に高学年は持ちたくないです」とか、「昨年度に引き続き、教務主任を受け持つのはつらいです」などと言えば、それを免除される雰囲気があったり、少し楽に思われている学級を任されたりするなどという不条理があることも事実です。

おそらく相談者の先生は責任感が非常にあり、プライドを持って教員生活を送られている方だと思います。自己都合の注文などつけずに頑張っておられる先生にとっては、さぞかし不満がたまることでしょう。

ただ、気をつけていただきたいのは、そういう先生が歯を食いしばって仕事を続けているうちに、いつの間にか負担が重くなって限界に達することがあるということです。その結果、精神的な負担を負ってうつ病になり、休職し退職する方もたくさんおられます。それでは、どうすればよいのでしょうか。

教員生活を続けていく上で身につけるべき新たなスキルとは?

私は、これからの教員は、教員生活を続けていく上で「援助希求」の能力(助けを求める能力)を身につける必要があると考えています。これを専門用語では「ヘルプシーキング」といいます。

質問者の先生は、実際に頑張っておられるから、弱音を吐く教員ばかりをなぜ優遇するのかという不満をお持ちなのかもしれません。しかし、私が見ているかぎりでは、どんな教員でも10年に1度は限界にぶち当たるときがやってくるというのも確かなことなのです。

私は、相談者の先生をねぎらって差し上げたいと思います。心理学の用語では、これを「ストローク」といいます。本当に頑張っている先生だから、このようなご質問をなさったのでしょう。本当はもっと報われていい先生だと思います。

けれども、いつかこの先生自身も限界がやってくるかもしれない。そうなる前に、あらかじめ管理職など周囲の教員に相談されるのがよいと思います。早めに援助希求をすることをお勧めしたいと思います。長い目で見たとき、そうすることが教職を長く続けるためのスキルであることがわかっていただけると思います。


諸富祥彦●もろとみよしひこ 1963年、福岡県生まれ。筑波大学人間学類、同大学院博士課程修了。千葉大学教育学部講師、助教授を経て、現在、明治大学文学部教授。教育学博士。臨床心理士、公認心理師、上級教育カウンセラーなどの資格を持つ。「教師を支える会」代表を務め、長らく教師の悩みを聞いてきた。主な著書に『いい教師の条件』(SB新書)、『教師の悩み』(ワニブックスPLUS新書)、『教師の資質』(朝日新書)、『図とイラストですぐわかる教師が使えるカウンセリングテクニック80』『教師の悩みとメンタルヘルス』教室に正義を!』(いずれも図書文化社)などがある。

諸富先生のワークショップや研修会情報については下記ホームページを参照してください。
https://morotomi.net/

取材・文/高瀬康志

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