ぬまっちが学級開きでやっていること|沼田晶弘の「教えて、ぬまっち!」
自主性と集中力を最大限に引き出すユニークな授業が話題のカリスマ教師「ぬまっち」こと、沼田晶弘先生。今回は、先日開催されたオンラインセミナー「新年度を成功させるためのヒント」 にて、参加者から寄せられた質問をピックアップ。ぬまっち流アドバイスをリポートします。
目次
初日に子供の写真を撮っておくと、その後の成長が視覚化しやすい
ボクが必ず新年度の初日にやることが、2つある。
1つは子供の写真を撮ること。
学級開き初日、ややブスっとした顔をして教室に入り、黒板に日付を書いた後、子供たちに一人ずつ黒板の前に立ってもらい、写真を撮るようにしている。
「名前を覚えたいから写真をとるので、順番に並んで」などと言って、一人ずつ写真を撮る。
子供たちは、不安げで、少しおびえたような表情でカメラに収まる。
もちろん、写真を撮った後はちゃんと自己紹介をして楽しく盛り上げ、子供たちに「面白かった。明日も楽しみ!」という満足感や期待感をもたせて帰らせるようにしている。
なぜこんなことをするのかと言えば、子供たちのこんな表情が撮れるのは初日だけだから。
一学期の最後や学年末にも、同じように一人ずつ写真を撮ることにしているんだけど、そのころには子供たちと仲良くなっているから、みんなリラックスしてポーズをとったり、おどけたりして、素敵な笑顔を見せてくれる。このギャップをそれぞれ記録しておくことがポイントなんだ。
例えば、一学期の最後や学年末の保護者会で、両方の写真を見せて比較しながら「この状態からスタートして、いまはこんな表情を見せてくれます」などと説明するととても盛り上がるのでおすすめだ。
「どんなときに先生が叱るのか」を伝えておく
もう1つは、学級のルールを伝えること。
とくに「先生が本気で叱るときはどんなときか」をしっかり伝えるようにしている。
ボクが本気で叱るときは次の2つ。
まずは「子供たちの身の危険を感じるとき」。
「身の危険を感じるような危ないことをしたときには声を荒げて叱るよ」と伝えておく。
2点目は「嘘をついたとき」。
「喧嘩をしてしまったり、してはいけないことをしてしまったりすることもあるだろう。もしやってしまったら、反省することが大事。でも、嘘をつくのは絶対に許しません」としっかり言っておく。そしてもし実際に嘘をついたり、事実と違うことを言って言い訳をしたりしたときには、大げさに叱る。
そうすると、嘘をつくとぬまっちは本当に叱る、ということが子供にも実感として伝わるし、嘘をつかずに正直に話したほうが、トラブルが早く解決するということにも気付くようになる。
「学級開きにやるべきこと」に完璧を求めないほうがいい
実はボクは、「学級開きには、これだけはやっておこう」という類のアドバイスをあまりしたくないタイプ。
なぜなら、よく書籍や雑誌で、「学級開きでやっておくべき7つのこと」とか「新人教師がやっておくべき30のこと」といったフレーズを見かけるけれど、それらをすべて完璧にやろうとするから先生自身が苦しむことになってしまうんじゃないかと感じることがあるから。
もしそれらが学級開きの期間中に全部できなかったら、ポンコツ教師になってしまうの? そうじゃないよね。
新人なのに、やっておくべきことが完璧にできたら、もはや新人じゃないよね? 30のうち10できていたら上等だよ。
目の前の子供たちの状況によって、やるべきことも、伝えるべきことも当然違ってくるだろう。学級経営も、子供たちとの関係も、1年かけてつくり上げていくもの。もっと柔軟に捉えて、学級開きの段階では、まずは子供たちを温かく迎え、一人ひとりを注意深く見守ってあげることに注力していいんじゃないかな。
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沼田晶弘(ぬまたあきひろ)●1975年東京都生まれ。国立大学法人東京学芸大学附属世田谷小学校教諭。東京学芸大学教育学部卒業後、アメリカ・インディアナ州立ボールステイト大学大学院にて修士課程を修了。2006年から現職。著書に『「変」なクラスが世界を変える』(中央公論新社)他。
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取材・構成・文/出浦文絵