全国学力・学習状況調査を生かして授業改善!
「学力調査って面倒だなあ」「まだ学級の基盤づくりも不十分なのに……」など、年度はじめの慌ただしさに不安を抱えている先生方に朗報です! 毎年恒例の全国学力・学習状況調査を肯定的に捉え、授業改善に向けた検証改善サイクルの確立をめざしましょう。
執筆/福岡県公立小学校教諭・山崎邦彦
目次
授業改善に向けた年間スケジュール(例)
チェックと分析
1 解答(回答)用紙のチェック
まずは解答用紙をコピーし、無解答が目立つ問題や個人の解答の傾向を把握しましょう。場合によっては、児童質問紙の回答もコピーをしておくと実態把握に役立ちます。
2 調査問題のチェック
チェックといっても問題を確認するだけではありません。先生方も調査問題にチャレンジしましょう。確実に児童理解につながります。また、問題に触れ、出題者の意図や問題の傾向を考え、授業改善に役立てましょう。
3 採点結果の分析
解答例を手がかりに、解答用紙のコピーを採点しましょう。正答の傾向や誤答の種類、個に応じたつまずきを明らかにし、授業改善へつなげます。
児童数にもよりますが、すべての問題を採点するのは非現実的な学校も多いと思います。学校の実情や課題により教科を絞って採点をしたり、問題を抽出して分析することも考えられます。
分析の詳細
1 調査結果の分析
7月には調査結果の速報値、8月末には各校に調査結果が届きます。結果から児童の理解度や正答率、無解答率、誤答の傾向を把握しましょう。
2 誤答の分析
調査結果の解答類型に着目し、児童のつまずきを正確に把握しましょう。問題形式(選択式、短答式、記述式)別の課題も明らかにすると授業改善につながります。
3 無解答率の分析
なぜ記述できていないのか、正答のために必要な力はどのような資質・能力なのか等、授業改善に向けた要因を明らかにします。
ポイント
ポイント1 C(評価)段階の重視
4月の学力調査をC(評価)段階と位置づけ検証改善サイクルを開始します。高学年の学力実態は学校全体の課題です。5か年間の学校教育の結果の一部の表れです。組織的な対応の必要性を確認しましょう。
ポイント2 年間スケジュール
授業改善に向けた年間の計画は年度はじめの職員会議で確実に提案しましょう。校務分掌を確認し、校内研修担当者や学力向上の分掌の先生とも連携を図り、年間を見通した取組を推進しましょう。
ポイント3 役割分担
解答(回答)用紙のコピーや採点を行う会議室の設定、問題用紙、解答例の準備等、担当を決め責任の所在を明らかにしましょう。 さらに、校内研修として採点の時間を確保します。管理職も含めた全教職員での研修の時間として位置づけましょう。
ポイント4 クロス集計
調査問題の正答率と児童質問紙の結果の相関を示し、数値化することも有効です。例えば「自分で計画を立て学習をしている」という質問に「肯定的に回答している児童ほど教科の正答率が高い」など生活と学力の実態を数値化すると説得力が増します。
一方、「自分で計画を立てて学習していない」児童が多い場合は、学級活動「(3)一人一人のキャリア形成と自己実現」を位置づけるなど、効果的な指導を推進しましょう。
ポイント5 授業改善
授業改善の最大の目的は「わかったふりをしている児童」を「主体的・対話的で深く学ぶ児童」に変容させることです。『授業が変われば学級も、学校も変わる』を合言葉に授業改善を進めましょう
検証改善サイクル
検証改善サイクルとは、授業の計画→実施→評価→改善を繰り返し位置づけ、年間を見通した授業改善を進める取組です。今回はC(評価)段階を重視しA(授業改善)へつなぐ取組を紹介します。
各種学力調査の目的は「テストの点数を上げること」ではありません。あくまでも授業改善が目的です。児童の実態に応じた授業改善、教師の課題を明らかにし教育活動の充実を図る取組として、各学校で検証改善サイクルの確立をめざしましょう。
イラスト/種田瑞子
『教育技術 小五小六』2020年4/5月号より