運動会は自己効力感を高めるチャンス!【ぬまっち流】

特集
運動会特集:人気種目や演出アイデア&指導法まとめ

国立大学法人東京学芸大学附属世田谷小学校教諭

沼田晶弘

斬新な授業で、子どものやる気をグングン引き出すカリスマ教師「ぬまっち」こと、沼田晶弘先生が、運動会ですべての子どもが活躍できるテクニックを教えてくれました。

運動会
写真/大庭正美

運動会では、勝利にこだわり
全員に成功体験を与える

「運動会」は、学校行事の中でも最大のイベントであり、スポーツの得意な子どもにとっては、みんなの前で活躍できる楽しいイベントです。

しかし、運動が苦手な子どもにとっては、練習すら辛い、憂鬱なイベントでもあります。一度でもチームの足を引っ張ってしまうような経験をしてしまうと、行事はもちろん、運動そのものが嫌いになってしまいかねません。

だからといって、やる前から「負けても頑張ればよい」と伝えるのは嫌いです。なぜならゴールがあいまいになるからです。

勝ち負けを決めるなら、「勝つ」という明確な目標を立て、そこを目指すほうがよいはずです。ゴールが明確になって初めて「何のために頑張るのか」がはっきりし、そこまでの努力の過程も評価できるのです。

「勝ちたい」という気持ちを
クラス全体で共有する

運動会を練習から本番まで有意義な活動にするためにも、全員が「勝ちたい」という気持ちを持つことが重要です。

そこで、僕はまず練習を始める前に、子どもたちに「運動会で勝ちたいか?」と単刀直入に聞いてみます。「勝ちたい」と子どもたちが答えたら、「勝ちたいということは、勝利を目指すということだよね。みんなで勝利を目指して、勝てたらうれしいよね。でも勝ちがあれば負けもある。チャンスは一回きり。もし負けても、『あっちのチームはずるい。もう一回やらせて』というのはナシ。つまり、当日だけ頑張ってもだめで、勝つための準備が必要なんだ。ちゃんと準備をすれば絶対に勝つ確率が上がるんだ」とじっくり説明をします。

リレーは、足の速さより
テクニックで勝負

クラス全体に「勝ちたい」という意識づけを行ったら、シンプルに「チームで優勝する」というゴールを設定。そのゴールを達成するための作戦を考えます。

例えば、僕の学校では、リレーは全員参加で、クラス対抗で行います。低学年のリレーのルールは、3つの障害物を超えて50メートル先のカラーコーンを回り、次の人にバトンを渡すというもの。

僕は子どもたちのリレーの練習を見て、気が付いたことが3点ありました。

1.途中で転んでしまう子が多い
2.バトンを渡す瞬間に、ゴールしたという安心感から走る速度が落ちてしまう
3.コーンを回るときに、どうしても大回りになってしまう

この3点に対する対応策を考えてみると、一人ひとりがある程度練習によってテクニックを身に付けたら、足の速さに関係なく必ず勝てると確信した僕は、早速チームで勝つための練習を始めました。

リレー
イラスト/明野みる

まず、子どもたちには、「転んだらすぐに立ち上がる。バトンを渡すまでは転んでも絶対に泣かない!」と約束させました。

次に、「バトンを渡すときは、その向こうに突き抜ける気持ちで、最後まで全速力で走り抜け」と伝えました。

さらに、コーンを回るときのコツを教えました。大周りにならないよう、競艇でいう「モンキーターン」のように、旋回半径をできるだけ小さく、速く回れるような体の使い方を覚えさせ、毎日くり返し練習したのです。練習の成果もあり、直線ルートで他チームの子に抜かれても、コーンの周りをターンする瞬間に追い付く、もしくは抜かすことができるようになり、リレー全体としては劇的にタイムを縮めることができました。

適材適所で役割を与え
不得意な子を戦力に変える

低学年の定番競技、「玉入れ」でも、絶対に勝つための戦略を立てました。それは、子どもたちに適材適所で役割を与えること

例えば、どんなに頑張って投げても玉がかごに届かない子には、玉を投げ入れるのではなく、周りに散っている玉を真ん中に戻す役目を与えます。

この作戦により、効率よく玉を投げることができ、見事優勝! 玉入れが苦手だった子も、自分も重要な戦力になり、チームに貢献できることを実感することができました。

玉入れ
イラスト/明野みる

実はこのように、運動が不得意な子ほど期待されるしくみをつくることが運動会において勝利の鍵なのです。そして運動が苦手な子にとって、自分が努力することによってチームが勝利できたという経験は大きな自信となり、苦手を克服しようという動機づけになると期待しています。

なにより、運動会は本番だけでなく、目標に向かって時間をかけて努力した過程を含めて評価し、本当に頑張ることの尊さを感じさせることが大切なのです。努力を積み重ねて「勝利」をつかみ取った体験は、頑張る価値に気づかせ、必ず一人ひとりの自己効力感を高めることにつながると感じています。

取材・文/出浦文絵

沼田晶弘先生
沼田晶弘先生 撮影/下重修

沼田晶弘先生
1975年東京生まれ。国立大学法人東京学芸大学附属世田谷小学校教諭。東京学芸大学教育学部卒業後、アメリカ・インディアナ州立ボールステイト大学大学院にて修士課程を修了。2006年から現職。著書に、『家でできる「自信が持てる子」の育て方』(あさ出版)等がある。

『教育技術 小一小二』2019年5月号より

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