導入間近!教員の変形労働時間制は働き方改革となるか!?

2020年12月、北海道と徳島県において、教員の1年単位の変形労働時間制の導入が可能となる条例案が可決されました。2021年春からこの制度の適用が可能となります。可能になったからといって、すぐに実効性をもって適用されるわけではありません。教員に変形労働時間制を採用することが、吉と出るか凶と出るかは、まったくの手探り状態です。先鞭をつけた北海道の状況を取材しました。

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写真AC

北海道は先行して変形労働時間制の導入へ

全国に先駆けて、北海道がいわゆる教員の変形労働時間制を導入することが決まりました。2021年4月1日から施行されます。

変形労働時間制とは、業務の繁忙期には働く時間を延長し、その分閑散期に短縮したり長期休暇などに振り替えたりするなど勤務時間を調整できるものです。教員に変形労働時間制を導入した事情について、北海道教育庁教職員局教職員課の今村隆之働き方改革担当課長、伊藤直人課長補佐、石川源係長にお話をうかがいました。

本制度は教員の働き方改革を進める1つの選択肢

2019年12月、いわゆる「給特法」が改正され、公立学校の教員に1年単位の変形労働時間制を導入することができるようになりました。これは導入を可能にしただけで、実際に導入するか否かは地方自治体に任せられており、都道府県や政令指定都市による条例制定が必要になります。

北海道議会の条例制定に向けての動きは早いものでした。北海道教育委員会が11月、道議会の文教委員会に条例案を提出すると、翌12月、文教委員会はこれを全会一致で可決。同月、北海道議会は条例案を賛成多数で可決しました。迅速な導入について、今村課長はこう話します。

「北海道が最初の条例制定自治体になったのは偶然です。法改正に従い、できるだけ早期に条例を制定できるように取り組んできた結果にすぎません。教員の変形労働時間制は教員の働き方改革を進める上で1つの選択肢を増やすものです。各般の働き方改革の取り組みと本制度の両面から教員の長時間勤務を解消していくことが重要です。教員の変形労働時間制の導入が学校の働き方改革の1つの動機づけになってくれることを期待しています」

 所属職員の在校等時間の客観的記録状況(2020年度、北海道教育庁教職員局教職員課の調査
所属職員の在校等時間の客観的記録状況(2020年度、北海道教育庁教職員局教職員課の調査

迅速と拙速は裏腹の関係にあります。これを拙速と言うのは、制度導入に反対声明を発表した全北海道教職員組合(道教組)と北海道高等学校教職員組合連合会です。道教組の斎藤鉄也書記長は「現場の教員の声をまったく聞いていません。導入性急です。時間外勤務を見かけ上減少させるだけで、長時間過密労働が改善されるわけではありません」と批判します。

道教委によれば、昨年9月、道内の道立学校の校長と市町村教育委員会を対象に意向調査を実施しました。すると、「2021年度から活用を検討したいという回答と、2022年以降、活用を検討したいという道立学校および市町村教育委員会の回答がともに約8割」(伊藤課長補佐)に上りました。これが条例改正を後押ししました。また、「職員向けリーフレットの作成(10月)や管理職員向けの説明動画の配信(11月)」(石川係長)などを通して制度に対する理解の深化に努めたとしています。

目的は教員の休日のまとめ取り

教員の変形労働時間制を導入する最大のポイントは、教員の休日のまとめ取りを推進することにあります。

具体的な活用例としては、4月期に働く時間をふやす代わりに夏季休業期間中の休日を3日間ふやしたり、年末に働く時間をふやす代わりに冬季休業期間中の休日を2日間ふやしたりすることなどを想定しています(下図参照)。

制度活用のイメージ図(北海道教育庁教職員局教職員課作成)
制度活用のイメージ図(北海道教育庁教職員局教職員課作成)

しかし、学校がこの制度を導入するには高いハードルがあります。学校が教員の在校等時間を客観的な方法等で把握していることなど多くの前提条件が整わなければ、そもそも活用できません。しかも、適用される教員の時間外在校等時間が月42時間、年320時間以内という厳しい上限がつきます。

北海道では、「学校における働き方改革 北海道アクション・プラン」という独自の計画に基づいて働き方改革を推進しています。教員の在校等時間を把握する校務支援システム等の普及が進み、2020年10月現在で、教員の在校等時間の客観的な把握は道立学校で100%、札幌市を除く小中学校で約90%となっています。

それでは、北海道の教員の時間外勤務の実態はどうでしょうか。道教委が2019年度に行った「教育職員の時間外勤務等に係る実態調査」によれば、主幹教諭・教諭の時間外勤務時間について1か月で45時間以上の割合は、小学校の場合で56.3%、中学校の場合で73.9%となっており、この制度の活用がなかなか難しい状況にあります。しかし、この制度の活用により、まとまった休暇がとれることになれば、教職の魅力向上にもつながり、ひいては、北海道の教員採用受験倍率の向上に反映することになるかもしれません。

教員の増員、業務の縮小、少人数学級などが実現していない現状では、学校現場でいろいろ知恵を絞るしかありません。国民の自助努力頼みの感染症対策と同様に、教員の自助努力任せの働き方改革といえるからです。

取材・文/高瀬康志

『教育技術 小五小六』 2021年2月号より

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