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コロナ下でもできる!主体的・対話的で深い算数授業

特集
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現行学習指導要領の全面実施元年にもかかわらず、「3密」を避けるために学習指導においても多くの制約を強いられています。この時期の算数科の授業において、全国のベテランの先生方が、「主体的・対話的で深い学び」の遂行に向けて実践している工夫を詳しく取材します。

コロナ下でもできる!主体的・対話的で深い算数授業
イラストAC

「問い」「問いに対する考え」「数学的な見方・考え方」「算数の言葉」で、対話的な学びが成立

(宮崎県公立小学校教諭・中西 英)

コロナ禍によって対話のあり方に物理的な制約が生じるようになり、対話をどのようにさせるかという方法論に関する議論を見かけます。しかし対話的な学びを考えるためには、その学びが成立するための条件を考えることが必要だと思います。

算数の授業で子供たちが対話をしたくなるには、まず1点目として問いが必要です。「あれ?」「なんで?」「これ、どうなっているの?」という問いが、教室全体で共有されていないと、本質的な対話が発生しません。

2点目は、その問いに対してどう考えているのかという、自分の立場が必要になります。ある問いに対して、「自分はAだと思う」とか「自分はBだと思う」という立場を明確にしておくことが対話をするうえで必要です。

3点目に、算数ということで言えば、「数学的な見方・考え方」が必要になります。例えば図形だったら辺の長さに着目するのか、角の大きさに着目するのかとか、辺ならば平行なのか、平行ではないのかといったことです。加えて、共通するものから一般化を図るといった帰納的な考え方、あるいは演繹的な考え方も必要になるでしょう。

4点目は、算数の言葉です。対話をするうえで、算数の共通言語、例えば図形の辺や角、頂点といった言葉を使って対話をすることが必要になります。

対話的な学びが成立するためには、そのような条件が必要であり、それを整えることこそが必要で、それが揃っていれば、物理的な対話の形は多様に考えられると思います。

1対29の対話、教科書教材との対話、自己内対話もある

具体的に三年生の「三角形」の単元で考えてみましょう。

これは私が以前の研究授業で行った実践ですが、「三角形」の単元の導入で、まずいろいろな形の三角形や二等辺三角形(鈍角も鋭角も多様にある)を交ぜて、バラバラに貼っておきます。その三角形はくじになっていて、裏側には当たりやはずれと書いてあり、それを引くと二等辺三角形にだけ当たりと書いてあるわけです。

それを子供に引かせると、当たりを引く子、はずれを引く子がいますが、その当たりは当たりで並べ、はずれははずれで並べていくと、「どういう三角形が当たりなんだろう?」という問いが教室全体で共有されます。

次に当たりを引きたいと思う子供たちは、当たった三角形、はずれた三角形を見比べながら、「辺が関係しそうだ」と思う子や「角が関係しそうだ」という着目点によって立場が明確になります。

そのときに共通するものから、「当たりは辺と辺の長さが同じものだ」というように、数学的な見方を働かせながら、帰納的に考えていくようになります。おそらくそれによって、当たりを引くために、辺の長さを見ながら選ぶ子が出てくることでしょう。

そして当たりを引いた子が、「角ではなく、この辺とこの辺の長さが等しいから」というように、算数の言葉を使って、自分の考えを説明するようになります。

このような対話の条件が算数の授業には必要だと思います。

子供たちが問いをもてば、自分の立場を決めないといけないし、その立場を基に友達と議論をするなかでは、数学的な見方・考え方を働かせながら、数学の用語を使って対話をしていくことが必要だということです。

ですから、「コロナによって対話が…」というような、対話の方法に目を奪われるのではなく、このような対話の四つの条件を考えてみることが大切だと思います。

その条件を考えてみると、ペアやグループになって口頭で話をしなくても、対話の方法は考えられます。

例えば誰かにどれが当たりかを発言させた後で、「Aさんはこれが当たりだと言っているけど、何に着目したのかな」と投げかけて、友達の思考を想像させることも対話でしょう。

あるいはBさんが、「僕はこれが当たりだと思いました。それは辺に着目して…」と言ったところで発言を止めて、「この続きをBさんはなんて言うと思う?」と続きを説明させるのも対話と言えるでしょう。

そのように、どうしても必要な四つの条件を考えてみると、顔を突き合わせて話していても、実は対話とは呼べないものがあったり、先の例のように直接話し合わなくても、対話として成立しているものがあったりします。

この「三角形」の実践例であれば、30人の子供と私が黒板に貼られた三角形を基に、「当たりだ」とか「はずれだ」と、全体で授業を進めるわけですが、発表する一人の子供とそれを見る座席の29人の子供との間で、十分に対話が成立していると言えると思います。

対話というと、ペアの対話とかグループの対話とイメージされがちですが、先の条件を考えてみれば、1対29の対話もあるし、教科書教材との対話、あるいは自己内の対話も考えられるということです。

その他コロナ禍の中で、直接的な口頭での対話を避けるために、書くという方法に絞り、書いたものを見せ合って考えるようなことにも取り組んでみました。

しかし書くという作業は、少々ハードルが高い子もおり、結果的には書いただけで説明がしにくい子には口頭で補足することも認めて、授業を行ったりしてきたところです。

算数授業の様子
子供たちが問いをもち、自ら活動していったものを深い学びにつなげていく中西教諭。

近接での対話が難しい場合は、ジェスチャーを通した気付きを書かせ、学級全体で深める

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