思い出総選挙、紙飛行機大会…コロナ下でも6年生の日常に充足感を

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愛知県公立小学校教諭

佐橋慶彦

コロナ禍と共に小学校最後の1年を過ごすことになった2020年度の6年生。運動会に修学旅行⋯たくさんの思い出の場面が制限されてしまいました。それでも学級活動/学級レクや、何気ない日常の中で充実感を味わってほしいと、今年6年生を持つ佐橋慶彦先生(@sassy384)が担任教師としてできることを考え、アイデアを紹介してくれました。

執筆・イラスト/愛知県公立小学校教諭・佐橋慶彦

6年生に充実した一年を(トップ画像)
写真AC

小学校最後の6年生の担任として

運動会や学芸会、遠足に修学旅行。学校生活を彩る様々な行事が、新型コロナの影響を受けて、中止になったり、縮小されたりしています。このような状況下では、学校行事が削減されていくことも仕方のないことなのかもしれません。

しかし6年生にとっては、今年が小学校生活最後の一年になります。最後の思い出が「コロナで何もできなかったこと」になってしまってはあまりにもかわいそうです。この大切な一年を、残念な一年で終わらせないために、6年生の担任としてできることはないか考えてみました。

子供たちは「特別感」を求めている

学校行事を楽しみにしている子供たちは私の学級にもたくさんいます。学校行事のどんなところが好きなのかを聞いてみると、次のような答えが返ってきました。

学校行事が好きな理由

  • 特別な感じがあるから。
  • 普段とは違う体験ができるから。
  • 終わった後に、達成感がある。
  • みんなと協力できるから、絆が深まる。

子供たちは普段とは違う、特別感を楽しみにしているようです。また高学年にもなると、達成感や仲間との協力、関係の深まりなど、学校行事に意義を感じている子も多いようでした。

学校行事が削減されたとしても、これらの良さを経験できる場を他に作ることは可能です。そうすれば、このような状況下でも、充実した最後の年にすることができるのではないかと考えました。

1. 特別感あふれる紙飛行機大会

今年度担任している学級では先日、班対抗の「紙飛行機大会」を開催しました。雑紙を使って紙飛行機を制作し、一人ひとり順番に飛ばすという、至ってシンプルなものですが、「学校で紙飛行機」というだけでもちょっとした非日常感を味わうことができます。上位10名にポイントを加算していき、一番得点の多い班を優勝としました。

紙飛行機大会

このように、上位を決めたり、点数を付けたりして「競争」にすることで、イベントは一見盛り上がりを見せます。しかし、得点や勝敗に固執してしまう子が出てきたり、うまくいかず落ち込んでしまう子がいたりと「競争」によって雰囲気が崩れ、イベントが上手くいかない危険性があります。

そこで、こうしたイベントを開く前には、どうすれば全員が楽しく終われるのか、ということを子供たちに投げ掛け、考えさせるようにしています。一人ひとりの参加の仕方によってイベントの楽しさや満足感が変わることに気付いてもらうためです。

当日、子供たちは遠くに飛んだ飛行機に全員で「お~っ」と歓声を上げたり、失敗を仲間と一緒に笑い飛ばしたりしながら、特別な時間を楽しく過ごしていました。

2. 子供たちで計画・運営するイベント

自分たちで温かな雰囲気を作れるようになってきたら、今度は計画や運営から子供たちに任せていきます。みんなで決めたことを、それぞれが役割を果たしながら実現させていくことで、仲間と協力したり、達成感を得たりすることが期待できます。また、実現に向かう過程も、大きな思い出になるのではないでしょうか。

①計画

本学級でも「最後の一年の思い出になるような計画をみんなで立てよう」というテーマで話し合いを行いました。

話し合いの板書
クリックすると別ウィンドウで開きます

リレー動画や、モザイクアート作成など子供たちならではの柔軟なアイデアがたくさん出てきました。そこからさらに、意見を付け加えたり、課題を確認したりしながら、みんなで取り組むものを決定しました。

②役割分担

この後は、実現に向けて何をしなければいけないか、どんな仕事があるかを出し合い、役割を決めていきます。なんらかの形で一人ひとりが役割をもてるようにすると、クラスのみんなで作り上げたということがより強く実感できるでしょう。

③実行

そして、いよいよ計画を実行していきます。この実行に移す段階が難関で、一部の子しか取り組まなかったり、熱が冷めてしまったりして、計画倒れに終わってしまうことがあります。

そこで、予定や進捗状況をいつでも確認できるようにしておくとよいでしょう。背面黒板などに表を作り、

1. どんなことをしなくてはいけないか
2. そのうちどこまで進んでいるか
3. 次の作業(話し合い)はいつ行うか

を役割ごとに書きこむようにします。そうすると互いの進み具合が分かり、遅れているところをみんなで手伝ったり、声を掛けたりすることができるようになります。

学級のみんなと考えを出し合い、試行錯誤しながら、計画を実現させることができれば、子供たちは大きな達成感を得ることでしょう。また、その喜びを分かち合うことで仲間との関係性もより深いものになるはずです。

3. 何気ない日常を綴る「思い出総選挙」

特別なイベントはもちろん、何気ない一日の中にも様々なドラマがあります。学級の雰囲気の変化や、一人ひとりの活躍。そのような学級で起きる出来事をみんなで大切にしていくために、月に一度「思い出総選挙」を行っています。

「思い出総選挙」

  • 月の終わりに、学級の思い出になりそうな出来事を募集する。
    ※日記などに取り組んでいる学級では、それを振り返りながら書くとたくさんのアイデアが出ます。
  • その中からいくつかを教師が選定し、子供たちに紹介。
  • 多数決で学級の思い出を決定する。用紙に書き写し、掲示する。

学年末には、一年の思い出がずらりと並びます。「はじめは数枚だったのに」とみんなでいろんな出来事を積み重ねてきたことを実感することができます。

思い出総選挙

障壁を乗り越えることで味わえる「大きな喜び」も

コロナ禍の中で迎える最後の一年。充実した一年にするためにはたくさんの障壁があります。しかし、みんなで知恵を出し合いながらそれらを乗り越えることができたら…。この状況下でしか味わえない大きな喜びが得られるのではないでしょうか。

どんな状況であっても子供たちにとっては最後の一年です。最後まで、出来ることを考え続けていきたいと思います。


佐橋慶彦先生
佐橋慶彦先生

佐橋慶彦(さはしよしひこ)●1989年、愛知県生まれ。教職9年目。教育実践研究サークル「群青」主宰。日本学級経営学会所属。子どもがつながる学級を目指して日々実践に取り組んでいる。

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