子供に発想力を身に付けさせるには?|沼田晶弘の「教えて、ぬまっち!」

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沼田晶弘の「教えて、ぬまっち!」
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国立大学法人東京学芸大学附属世田谷小学校教諭

沼田晶弘

子どもに、自分の言葉で意見を述べさせるのは、なかなか難しいものです。「間違ってもよいから、思ったことを言おう!」と声をかけても言葉が出てこず、ようやく絞り出した意見も優等生的で、抽象的なものになりがちではありませんか?

そこで何度も質問して考えさせようとすると、やり取りが増えて時間がとられます。どうすれば子どもに想像力・発想力を身に付けさせられるでしょう? そんな、【のんきなめだかさん】からの質問にぬまっちがアドバイスします!

撮影/下重修

話したい・書きたいと思う状況をつくることが肝心

先生たちは、「好きなことを書こう」「間違ってもいいから思ったことを言おう」と言えば、子供たちが喜んで、自由に、想像力を働かせて、自分なりの意見を書いたり、発言してくれると思っていないだろうか。

そして、大方の場合、そんな期待を見事に裏切られ、子供たちが何も書いてくれなかったり、発言内容がありきたりで、同じようなものだったりするので、落胆する。

それはなぜか。
「子供たちの興味を引き出す」という作業を忘れているからだよ。

子供たちはもし言いたいことがあれば、「好きなことを言っていいよ」と言われる前にしゃべり始めるはず。話さないのは、恐らく、課題や質問そのものに興味をもっていないんだよね。

これは作文を書かせるときにもよくあること。

「好きなことを書いていいよ」と言っても、そもそも作文を書きたくないから、好きなことがあっても書けない。まずは、子供が「書きたい」「話したい」と思う状況をつくるところからプロデュースしていかないとダメなんだ。

子供の発言を価値付けすることが大切

子供でも大人でも、「間違ってもいいから思ったことを書こう」と言われると、「間違うな」と言われているように聞こえることも覚えておこう。

また、子供が「間違っているかもしれないから書かないでおこう」と考えてしまう事実があるなら、子供がちょっとでも何か書いた瞬間に価値付けをしていく必要がある。

ボクは時々、「何も書かなかったら、丸が付かないけれど、何か書いたら丸が付くかもしれないよ」などと伝えたりする。「間違っているかもしれないけど、丸をもらえる可能性があるなら、とりあえず書いておこう」という動機づけをして、何か書いてくれたら、その瞬間を見逃さずほめて価値付けする。それを繰り返す。

さらに、「間違えることも、できないことも悪ではない。それを隠したり、できないから諦めるほうが悪だよ」という話も合わせてするといいだろう。

想像力・発想力を身に付けさせるには、子供たちのつぶやきに耳を傾けてすくい上げてあげることがとても大事なんだ。

子供がポロっと何かをつぶやいた時に、先生が「なになに? どういうこと? おもしろそうじゃん」と食いついてあげる。ちょっとした子供たちの発言にも価値付けしていくと、こんな発想も評価してくれるなら、どんどん言ってみようと思うだろう。

こういうことを繰り返すことで、子供たちは自分の意見を発する力がついてくるし、クラスの中に安心して自分の意見が言える雰囲気もできるだろう。

子供の想像力を鍛えるディスカッションの方法とは

「絞り出した意見は優等生的で、抽象的」なので困っているという点に関しては、「子供の想像力が足りないのではないか」という視点で見るのではなく、「子供の想像力を鍛えるような活動をしよう」と考え方を変えるべきだと思う。

子供は経験として優等生的な回答を期待されていると思っているのかもしれない。

だから、子供たちから自分なりの意見を引き出すためには、もっとフラットに、いろいろな質問をするほうがいい。ただ、フラットな質問をしよう思っても、先生は大抵自分の主観にシフトしてしまいがちだから、先生自身にとってどうでもよいと思っているような話題から入るといいと思う。

ボクは、朝の会などでどうでもよさそうなことや、最近のニュースを題材を取り上げて、子供に「どう思う?」と質問をしてディスカッションする。

例えば、「朝はパン、ごはん、どっちかに決めろと言われたらどうする?」なんてことを取り上げてみる。

「どっちでもいいけれど、どちらか選べと言われたら、どっちにする?」と聞けば、どんな子でも自分の意見を言うようになるよね。

最初はこんな質問で回答も2択でもいい。そして、その回答に対して「どうして?」「もしこういう状況なら?」などと、どんどん質問する。

のんきなめだかさんは、何度も聞き返したりして時間を取られることがストレスに感じているようだけれど、一発で想像力たっぷりの回答がくることを求めすぎじゃないかな。

ボクは、ディスカッションするときには基本的に、「なんで」「どうして?」を繰り返す。とうぜん時間がかかるけれど、「時間が取られる」とは思ってない。子供は自分の奥のほうにある意見をすぐに言えるようになったりはしないので、たくさん質問して、話を徐々に掘り下げてあげるしかないからだ。

さらに、途中で「みんなはどう思う?」といって話題を広げていくといい。一人に対して質問を繰り返すと、責められているように感じてしまう子もいるので、他の子の意見も聞いて考える時間をつくると、その子ももっと自由に自分の考えを膨らませて発言できるようになるだろう。

自由に発言できるクラスづくりから始めよう

そういう意味では、「子供たちが意見を出さない」のは、クラスの雰囲気づくりに問題があるのかもしれないよね。例えばちょっとでも間違えると、みんなに笑われたり、からかわれるのではあれば、発言は少なくなるだろう。

最近ボクのクラスに面白い文化ができた。

とにかく、誰かをみんなでほめちぎる文化(笑)。例えば、誰かが何か発言したら、みんなで大きな拍手を送る。そして、拍手された人は、立ち上がって手を振ったり、女子ならスカートをもって挨拶するんだ。そもそもこれは、日本人はほめられ慣れていないので、ほめられた時のリアクションをトレーニングしようということで始まった活動なんだけど、ほめ合う文化ができたことで、クラスが明るくなったし、互いを認め合う、あたたかい学級づくりにつながったと思う。のんきなめだかさんも、まずは安心して何でも発言できるようなクラスの雰囲気をつくることから始めてはどうだろう?

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沼田晶弘先生
沼田晶弘先生

沼田晶弘(ぬまたあきひろ)●1975年東京都生まれ。国立大学法人東京学芸大学附属世田谷小学校教諭。東京学芸大学教育学部卒業後、アメリカ・インディアナ州立ボールステイト大学大学院にて修士課程を修了。2006年から現職。著書に『「変」なクラスが世界を変える』(中央公論新社)他。
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取材・構成・文/出浦文絵

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