「コロナ下の保護者会」ICTと一工夫で保護者不安を乗り切る

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先生のみならず、保護者もまた大混乱の7か月。不安が募る保護者を落ち着かせるためには、保護者会は今まで以上に、慎重に取り組まなくてはなりません。準備から進行まで、保護者会の具体的なポイントを押さえます。

監修/奈良県公立小学校教諭・小野領一

「二学期の保護者会」押さえのポイント

準備の工夫編

保護者会のお知らせで安全対策について告知する

保護者会のお知らせでは、保護者会の内容に加え、感染予防・安全対策に関する取り組みやお願いについても記述しましょう。

【例】

  • 当日は座席間の距離を取り、窓・扉を開放して3密を避ける。
  • 保護者の参加については、一家族につき一人までとする。
  • 来校時には、マスクの着用をお願いする。
  • 校内での手洗い・手指消毒の徹底。
  • 発熱、倦怠感など風邪の症状がある場合には、参加を控えていただく。
  • 今後の状況により、急遽、保護者会を中止せざるを得ない状況が生じる可能性がある旨を事前に告知する。また中止の場合、ホームページ及び配信メールにて連絡し、後日オンラインで保護者会を実施するなど、その後の対応についてもお知らせする。

事前アンケートを実施し保護者の不安を把握

保護者会のお知らせとともに、保護者が不安に感じていることや、学校や担任への質問事項などを自由記述で答えてもらうアンケートを実施。

その結果を踏まえて、学校側から保護者への説明を組み立てます。

保護者会のお知らせやアンケートなど、学校からの配付物はPDF化し、ホームページに掲載し、オンライン上でも確認できるようにするとよいでしょう。アンケートはGoogle Formで作成し、オンライン上でも答えられるようにするのもおすすめです。

事前アンケートを実施し保護者の不安を把握

保護者会資料はパワポや映像を活用して作成

保護者会資料はパワポや映像を活用して作成

一学期・二学期は、ほとんど教師と保護者との関わりがないという学校も多いでしょう。保護者はさまざまな不安を抱えているはずです。その不安感をいかに取り除けるかを最優先で保護者会の準備をしましょう。

初めて保護者会を行うという学校の場合は、改めて教師の自己紹介を手短に行うとよいでしょう。口頭でもよいのですが、パワーポイントを活用して自己紹介をすると喜ばれます。

子供たちのこれまでの生活の様子については、具体的に伝えるため、写真や映像を用意するとよいでしょう。写真や映像を使用する際には、必ずクラス全員が漏れなく写っていることを確認します。なおノートなどは、感染予防の観点から保護者会では持ち出さないほうがよいでしょう。

学習の遅れについて心配している保護者も多いので、学習をどのように進めているのか、どの程度本来の進度とズレが生じているのか、きちんと説明できるようにしておきます。これも可能であれば、写真や図などを用意し、パワーポイントで伝えるとよいでしょう。

その他、事前のアンケートで寄せられた質問事項や不安に感じていることへの回答も用意しておきましょう。

感染予防を考えた教室環境を工夫する

保護者を安全に迎えるにあたり、次のような準備を行います。

  • ドアノブやスイッチ、ロッカーなどを消毒液を使って消毒をする。
  • 消毒液を使って机を消毒する。
  • 飛沫感染予防のため、保護者用のマスクの予備を用意。
  • 手指消毒用のアルコールを用意。
  • 当日気温が高ければ、エアコンの温度を下げ、エアコンをつけっぱなしにして、窓・扉を開放。気温が低ければ逆にエアコンの温度を上げ、エアコンをつけっぱなしにして窓・扉を開放。
  • 図工の作品や習字の作品は掲示する。子供のノートなどは感染予防のため、保護者会では出さない。
  • 保護者には子供の座席に着席してもらうが、座席間の距離を取り、窓や扉を開放して3密を避ける対策を取る。

机の配置の参考例

机の配置の参考例

厚生労働省が推奨する、学童などの座席配置のイメージを参考に、保護者会の座席配置を検討するとよいでしょう。厚労省は、教室などでは座席を離して交互に座るなど、隣に座る人同士が1m以上離れるよう求めています。

「窓、扉を開けて換気OK!」

当日の工夫編

保護者の不安に寄り添った姿勢や声かけを心がける

保護者会の冒頭ではまず、進級してからここまで、保護者の方にいろいろな協力をしていただいたことに対し、感謝を伝えましょう。さらに残り半年間、子供たちが有意義に過ごせるよう、担任としてできる限りのことをし、コロナ対策にも全力で取り組むと伝えます。

こうした姿勢を保護者に伝えることに対し、賛否両論、さまざまな意見があるでしょう。学校及び教員の業務量が過剰になってしまうことにつながってしまう可能性があるからです。

実際コロナ禍により、教員は普段より日常業務が増えてしまっています。そんな中で前述した発言をすることの危うさも、もちろん理解しています。特に教員はみんな真面目です。「子供のため」と言いながら、自分自身のキャパシティ以上の業務でも、すべてをこなさなくてはならないと考えてしまいがちです。

その結果として今現在、自分の身体や心の調子を崩してしまう教員が後を絶ちません。

しかし、やはり保護者は不安なのです。であるならば、学校、教員がその不安感を少しでも軽くしてあげるべきだと、私は考えています。

保護者が感じる不安をすべて解決する必要はありません。保護者の話を聞いたり、学校での様子を少しでも多く伝えたり、何か困っていることはないか、一言でも学校で声をかけるだけで、保護者は教員が考えている以上にホッとしてくれるでしょう。

ベストではなく、ベターな実践でもよいのです。白か黒かではなく、そのときにできることは何か、自分自身の中での最適解を考えてみてください。同僚や先輩、他校の教員仲間と「どうすればよいのか?」ということについて、話し合うのもよいでしょう。情報交換をする中で、さまざまなことに気が付くかもしれません。

保護者の不安に寄り添った姿勢や声かけを心がける

子供たちの様子は映像などで視覚的&具体的に伝える

一学期の個人面談で保護者が不安に感じていることとして多く上がっていたのが、以下の4点です。

  • 自分の子供がコロナに罹患しないか。
  • 自分の子供が楽しく学校で過ごしているのか。
  • 自分の子供の学習状況はどうなのか。
  • 学校として遅れている学習をどのようにリカバリーするのか。

私は保護者会では、これらの不安に関して、ていねいに保護者に伝えることが大切だと感じています。

準備編でも述べましたが、子供が学校で楽しく過ごしているのか、学習状況はどうなのかといった不安に関しては、写真やiMovieなどで編集をした動画、パワーポイントの資料などでお伝えします。視覚的に見せることで、口頭で伝えるよりもより具体的に伝わるため、保護者も安心し、納得感を得られるでしょう。

ちなみに私は今年度、ほぼ2日に1回学級通信を発行し、子供の様子を保護者に伝えるようにしていました。こうした日々の取り組みも有効です。

また、保護者会の前に事前アンケートでいただいた不安点や質問点にも答えるようにしましょう。

時間的に余裕があれば、文部科学省や各自治体の通達文書の中から重要な箇所をピックアップしてパワーポイントにまとめ、解説するのもよいでしょう。

感染予防対策も踏まえリモートでの開催も検討

感染予防のために、保護者会への参加を控えるという保護者もいるかもしれません。可能であれば来校だけでなく、リモートでの参加も可としておけるとよいですね。各教室にカメラを設置し、Googleの会議システムであるGoogle Meet、もしくはZoomを利用し、参加していただくのもよいでしょう。

その際、チャット機能を用いて質問もしてもらえるようにします。資料は子供を通じて配付し、かつ各学年のGoogle Classroomのストリームに保護者会の内容の概略を掲載するのもよいでしょう。

Google Classroomがない場合は、学校ホームページなどに鍵付きページを作成し、資料をPDF化してあげておくのも手ですね。なおPDF資料の改ざんを防ぐために、PDFにセキュリティを必ずかけることを忘れないでください。多くの学校資料は改ざんが簡単にできる状態にあります。

感染予防対策も踏まえリモートでの開催も検討

新型コロナウイルス対策や保護者の要望に対する留意点

新型コロナウイルスに対する情報は、高頻度で更新されているので、対応策が日々変わらざるを得ません。文科省の通達で机の消毒が不要になったことや、消毒液としての次亜塩素酸水の有効性(一定条件を満たすもの)などもその一例です。

また、自治体ごとに対応の差が大きいこともあり、一律にどうすべきか論じにくいといった問題点もあります。保護者もいろいろな情報を集めている人もいるので、そうした質問や疑問に答えられるようにしておきたいものです。

もしその場で答えられない場合には無理に答えず、「確認し、後日学級通信もしくは学年通信でご連絡します」と伝えましょう。

また、保護者からさまざまな要望があるかもしれません。各学校で自治体や文科省からの通達を基に、学校・学年で随時話し合いを行い、情報を共有し、取り組まなければならない対応策について、優先順位を付ける必要性があります。そうしないと、教師の身体と心を壊してしまうことにもつながりかねません。

保護者の不安を軽くするために、保護者の思いを汲み取ることは大切です。しかし、教師が心身ともに疲れ果ててしまったり、身体を壊してしまったりしていては元も子もありません。だからこそ、優先順位を付けて対応することが大切なのです。

「文科省からの通達ご覧になりましたか?」「学年主任とも相談ですね」

取材・文/出浦文絵 イラスト/宇和島太郎

『教育技術 小三小四』2020年11月号より

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