コロナ禍の運動会行う?行わない?アンケートから見えてきた学校のいま
かつてない規模と深刻さで、学校生活に影響を与えている新型コロナウイルス。子供たちが心待ちにする年中行事である運動会は、今年どのようになったのか? みんなの教育技術では、各校の運動会における新型コロナウイルスへの対応に関して、緊急アンケートを実施し、全国64校の先生方から回答をいただきました。その結果から見えてきた、各校の対策と問題点とは・・・?
目次
Q.あなたの勤務する校種を教えてください
本アンケートでは、公立小学校にお勤めの先生が約9割を占めていました。
Q.今年、運動会を行いますか?
運動会の開催については、約7対3で開催するとの結果となりました。しかし、後述の質問から、ほとんどの学校では、運動会の趣旨に近い行事を、工夫をこらして行っているようです。
Q.運動会開催にあたり行った対策は?
運動会を開催した(する)学校に、具体的なコロナ対策を伺いました。保護者からも人気の高い行事だけに、制限しながらも家族の観覧を許可しつつ、種目の削減や時間短縮をして開催した学校が大変多かったようです。
Q.運動会開催にあたり、どんな種目の変更や削減をした?
では、運動会を行った(行う)学校では、どんな種目の変更や削減を行ったのでしょうか? 寄せられた回答を集計すると・・・・。
■団体競技は行わない・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・14
■ダンスや組体操等、表現は行わない・・・・・・・・・・・・・14
■密になる可能性のある種目の削減・・・・・・・・・・・・・・45
■学年ごとに分ける、複数日で行う・・・・・・・・・・・・・・3
密な状況を作りやすい、団体競技や表現を選択的に行わなかった学校も多かったようですが、例えば棒運びなど、数人が密になるような人気競技が多いのも運動会。各校が悩みながら対応を行っていることが伺えます。
(●は自由記述欄より引用)
●密にならないよう団体競技を工夫した。技能走は児童に手袋をさせ、使用用具にはビニールを被せたり、フィールドを使って間隔をとったりして行った。応援合戦は、応援団はフェイスシールドを着用してその他は手拍子、拍手。児童席ではマスクをさせ、手洗いうがいも教師引率のもと競技が終わるたびに行わせた。
●来賓種目削除・幼稚園や未就学児種目の精選 ・入場行進を行わない ・来賓の招待客を制限。
●児童席テントの数を増やし,密を避ける。(近隣の学校より借用)
●運動場での児童の観戦を控え、教室でテレビ観戦。zoomを使って配信する。
また、午前中のみ、午後のみのように、本来は6時間近くかかる運動会の開催時間を大幅に短縮したとの回答が14件ありました。
●運動会を1日で行うのではなく、1週間使う。 例えば1日目は、開会式をビデオ放送で。2日目は、低学年の発表。3日目は中学年の発表。などのように。
●各学年の持ち時間(20分)内で、走・団体競技・表現を取捨選択します。
●毎年土曜開催のところ、平日の授業時間の2時間で行う。
●午前中のみ 低中高の二学年ずつで、保護者は立ち見観覧席を入れ替える形で実施。
など、各学校で試行錯誤している様子が伝わってきました。
Q.運動会を行わない場合、代替の行事をしますか?
運動会を行わなかった学校では、何か代替の行事を行ったのでしょうか?
■全く行わない、現状未定・・・・・・・・・・・・・・・・・5
■保護者観覧のないスポーツ大会・・・・・・・・・・・・・・9
■体育の授業参観を行う・・・・・・・・・・・・・・・・・・4
運動会的なイベントを一切行わなかった学校は少数で、何らかの形でスポーツの行事を行った学校も多かったようです。中にはこんなアイデアも・・・
●「運動会」だと、開式や閉式が必要だが、今回は「体育参観日」と題して行うことで、それらを省くこととした。
また全回答の中で、保護者の観覧を辞退した12校のうち、zoomなどオンライン視聴の対応を行った学校は7校ありました。
コロナの状況下、運動会を行うことにも、行わないことにも、それぞれ一長一短があると考えられます。先生たちは、どんな意見をお持ちなのでしょうか? ここからは、実施した学校、しなかった学校、それぞれの立場でのご意見を紹介します。
Q.コロナ禍で運動会を行うにあたっての問題点とは?
●密を避けるには限界がある。 練習時間の確保が難しい。
●マスク着用 対応に伴う様々な変更 多方面への説明。
●保護者、ご親族、地域の方々、等々いろいろな方々がお越しになり、運動場及び昼食場所となる体育館が密になり感染拡大のリスクが大きくなる。子供同士が密着、密接にならない種目を考えることには限界がある。
●授業時数確保で練習時間が取れない。三密になりそうな団体競技(騎馬戦や綱引き)ができない。参観者の人数制限が必要、どの競技にマスクの着用が必要か、応援団が大声を出せないのでできないなど。
●子供たち同士でソーシャルディスタンスを守りきれないこと。
●児童同士の接触がいけないので、実施できる種目が限られる。
●地域・保護者が集まることで、感染の可能性が大きくなる。 時期をずらすことで、年度当初に立てた教育課程が崩れる。 児童や教職員に負担が増える。
●密になるかもしれないこと。
●子供の気持ちが無視され開催されない方がかわいそう。
●ただでさえ、コロナ渦で負担や業務が増え大変なのに、新たなやり方での運動会を行うのは大いなる負担。でも開催可否は職員が決められず、校長の独断。 隣の学校は中止なのに本校は開催、など学校間で対応が違う。
●種目を減らし、平日に午前のみで終わる運動会が、今後も定着していけばよい。 保護者からは弁当を作らなくてよいと好評だが、人数を制限するなら平日ではなくて土日に開催してもよいのではないかという意見もあった。
●三密をさける、消毒、マスクによる熱中症予防など、プログラムを考えるのが難しかった。
●練習が削減され,猛暑とあいまって体調不良が多い。練習の習熟がされず、怪我等が心配される。
●外部の人が入ることによる感染リスクの増加。出入りの把握も難しい。雨天時の屋内開催時、密の回避が難しい。道具の消毒の労力が大きく負担。
●高学年が担ってきた役割がなくなり、六年生全員の活躍の場がなくなる。
●我が校では入場の制限はしていないので、万が一、クラスターが発生した場合の対処が問題と思われる。
●密にならないようにすること、練習時間を削減すること、子供たちが頑張れることをすること。
●大規模校は全校児童一斉の開催は難しいのではないか。学年運動会のようにしてもよい。子どもたちは楽しみな行事が削減され、学校生活も制限がかかり、ストレスはたまっている。規模は縮小しても、それぞれ試行錯誤してなんらかの方法は見出だせるのではないか。しかし、開催後感染者が出たら責任の所在は学校にある、というところが踏み切れない理由。
●コロナ渦で行事が中々できない中で、運動会だけでもできて良かったと思う。
●万が一の感染拡大や保護者への説明責任。体育参観日に参加させないという選択をした保護者の子供の取り残されたという思いを与えてしまうこと。
●感染リスクと熱中症リスク。
●①そもそも開催に否定的な教職員と管理職の認識のズレ ②コロナ禍での開催に不安感をもつ児童や保護者へのフォロー ③実際に感染拡大やクラスターがおきた場合の対応。
●半分ずつでも保護者が集まること。
●リレーなど子どもが楽しみにしているものがなくなる中で、誰のために運動会をするのかなと思います。保護者に見せるためなのか、子どもたちが楽しむためなのか、なんともいえません。
●年間行事だから運動会ありきの考えをなくさないといけない。やることが目的になりかねない。何のためにやるのかがはっきりしていないと、やる意味がない。
●クラスターや保護者、高齢者の熱中症、子供たちのマスク着用に伴う熱中症。
●密を避ける(子供も大人も)。
●児童数の多い学校では、観覧者の人数が莫大になり、三密は避けられないこと。
●熱中症対策に気をつける。練習が十分にできない。
●練習で密になることを踏まえれば、中止が妥当と考える。
●保護者の理解。
●感染予防の厳密さ。
●例年と違う動きになるので、教職員も児童も戸惑いがある。また、児童の中には、いろんな行事が削減され、「俺らの年はコロナで…」という、シラケムードが漂っている。例年に比べて、盛り上がっていかない。
●保護者数は制限されても、やはり密になると思う。種目数が少なくなることでの子供たちのやる気の低下も考えられる。
●熱中症&コロナ対策。
●1年生、1年生の保護者にとって、一生に1度の運動会である。その中で、親子競技ができないこと。お弁当が食べられないこと。祖父母を招待できないこと。
●勤務する学校では、例年9月実施でしたが、コロナの影響で11月実施になりました。しかし、11月の段階でも状況が落ち着くかどうか分かりませんし、保護者の観覧人数の限定はどこまできちんと守っていただけるのか心配なところはあります。
●子ども達のモチベーション。 見学席での密の回避。大きな声での応援ができない。
●保護者の感染対策。
●市内の一部校長のやりたいという意見だけで行われる運動会。コロナ感染のことなど頭にない。巻き込まれる子どもと私たち。日本の教育は、腐敗しています。
●開催に関する予防等の物理的な配慮、参加する児童・観覧する保護者への心理的な配慮の両方をしなければならない(納得できるように)。
Q.コロナ禍で運動会を行わないことの問題点とは?
●整列や玉入れ、応援合戦など、日本文化を感じられる運動会が行われないことで、学問以外の学校の魅力が落ちると考えます。
●児童には寂しさ無念さが募るかもしれませんが、新型コロナ感染症の威力というものを学んでもらい、仕方のないことだと納得させているので、特に問題があるとは思いません。
●体育が得意な児童の活躍の場がなくなる。それぞれの学年の表現の発表の場がなくなる。最終学年の6年生が活躍する大事な行事を奪う。
●特別活動によって、子供たちに付けることのできる関わり合う力やその経験を、させることができない。特に異年齢の集団で培うことのできる力が、ほぼ付かないことになってしまう。
●保護者が子どもたちの頑張りを見る機会が減る。何かに向かって努力する機会が減る。クラス作り、学年作りのきっかけがなくなる。
●毎日、教室での学習に励んでいますが、勉強がしんどい子どもほど、不登校や遅刻が増えてきているように感じています。外で遊べないことへのストレスや暑さ疲れ、エアコンは付けていますが教室内は換気などのために暑い、など子どもたちも疲れてきています。
●6年生は、最後の運動会。自分たちが中心となって活躍していく場がなくなる。
●クラスの団結力を高める機会を失うこと、子供の頑張りの成果を保護者に見てもらう機会が減り、同時に学校への理解を深めてもらう機会が失われること。
●子供たちの生活にメリハリがないこと。気分転換も気持ちの開放もなく延々と授業。みんな疲弊している。
●思い出がない、高学年の頑張りどころがない。
●行事的活動が減ることで、学級経営のなかで新たなポイントが必要。異学年の交流の機会が減ることとなり、全校的にマネジメントの検討が必要。
●児童の学習意欲の低下。
●学校行事を通しての子どもたちの関わりの減少、委員会活動の主な仕事の減少、保護者が子供の成長を見ることができない
●子供のモチベーションや学級づくりの部分かと思います。学校行事を軸に子供や集団を育ててきたんだな、としみじみ感じています。
●保護者や子供たちの楽しみが減ること。しかし、新型コロナウイルス感染症を予防するためには、やむを得ません。
●行事に向かって努力すること 保護者にそれを見てもらうこと。
●問題はない。
コロナ禍での運動会は、学校行事が「何のために」「誰のために」あるのかを改めて問うきっかけになったかもしれません。
みんなの教育技術では、引き続き皆様のお役に立てる企画を提供できるよう、つとめたいと思います。
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構成・文/みんなの教育技術編集部