保護者クレームにグサリ…【令和2年度新任教師のリアル】
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これは、2020年4月に小学校の先生の道を歩き始めた、小学校教諭・優花と美咲(仮名)の対談連載です。 ともに1997年生まれ、学生時代から仲がよい2人が、9月の日々を振り返ります。 夏休み明けに、新型コロナウィルスの感染拡大に気を付けつつ、どのように子供たちと向き合っていったのでしょうか。
●優花(ゆうか)……東京都出身。大学時代は道徳教育の研究に力を注ぐ。某県の教員採用試験に合格し、現在公立小学校3年生の担任。
●美咲(みさき)…… 東京都出身。楽器の演奏、運動や体操が好き。学芸会や運動会など大きな行事の運営を研究。私立小学校2年生の担任。
目次
仕事に追われ、1秒たりとも無駄にできない!
――今年は例年に比べて2週間短縮されましたが、夏休みはいかがでしたか?
優花・「例年」を知らないので、こんなものなのかな……という感じです。公立小学校の子供たちは、まだ遊び足りないようでした。
美咲・私は私立なので約1か月間の夏休みがあり、実家でのんびり過ごしました。コロナ禍が明け、子供たちが通学するようになってから、怒涛(どとう)の毎日。この夏休みに、授業研究や学級運営などの本も読めました。
ところで優花ちゃん、学校が始まってから、どう?
優花・常に追われているかな。朝から授業して、合間にテストの丸つけをして、連絡帳を書いて、戻して、提出物のチェックして……と給食を食べる時間も惜しい。1秒たりとも無駄にできないという感じだね。
美咲・私も。宿題に関係するワークブックなどは、子供たちが学校にいる間に返さなくちゃいけないじゃない。
優花・だから、赤ペンとか、採点スタンプとかを子供たちがいたずらすると、ちょっと腹が立つ! 「この探している時間が惜しいんだよー」って叫びたくなることも(笑)。
美咲・私もそうだよ。いつも追われている。それに、最近は土曜日も授業が多いの。土曜に出勤すると、日曜日があっという間に終わる。プライベートの時間がないと感じることが多いな。
優花・そうだよね。子供たちも土日に家族でゆっくりする時間は必要だと思うし、土曜日が学校だと、親子間の学びの時間が取りにくいよね。
美咲・私自身、自分のことを振り返る時間も必要だし。
優花・それはある。私は今のところ土日休みをもらえているから、週末は自分のために時間を使える。いろいろな問題を抱える子供がいると感じ、チャイルドカウンセラーの勉強を始めたよ。運動会や学芸会などの行事がなくなり、時間がある今のうちに勉強しておこうと思って。
ベテラン先生からのアドバイスがありがたい
美咲・すごい! 私も何か勉強してみようかな。ところで授業についてはどう?
優花・今は9月末に行う、国語の研究授業の指導案作りが大変。指導教員の先生に見てもらって、修正点をいただいて、もう一度見てもらっているところ。やはり、ベテランの先生の着眼点は違う。1学期は夢中で授業をしていたけれど、2学期になってある程度自分のことがわかってきた。私たち先生は、授業を見てもらってナンボだと思うな。だから、他の先生に、授業を見てもらって、感想をいただいたりしている。
美咲・それ、いいアイデアだね。自分のことは、自分ではわからない。
優花・感情を交えず、客観的にピンポイントで指摘してくれる先生が多いから、ありがたいよ。
アドリブがきかないから授業は準備を入念に
美咲・あと、授業における子供の言動は読めないよね。
優花・そうだね。前の授業を振り返り、「今回はこの子に発言をさせたい」と考えていても、だいたい、その通りには行きません!
美咲・わかる~。あとは、板書の工夫も必要だよね。
優花・私、自分の板書の写真を撮って、振り返りノートを作っているよ。
美咲・全教科やっているの?
優花・まさか! 道徳だけだよ。私、大学時代に道徳の研究をしていたから、授業は練った上で臨みたいんだよね。それに、5教科をつい優先してしまい、道徳をないがしろにしていたと思うフシがあって……。
美咲・とにかく振り返りは大切だね。授業って意外なほどアドリブがきかない。準備していないと、発想も知識も出てこない。私たちは経験がないからこそ、事前に練習したり、インプットしておくことがとても大切。
優花・授業のほかにも、いろいろ問題はある。今は子供たちが言うことを聞かなくて困っているよ。
給食中のおしゃべりが止められなくて⋯
美咲・私もだよ~(涙)。特にコロナ対策が大変だよね。みんなマスクつけて頑張っているから、きついことは言いたくないけれど、先生として言わなくてはいけない。
優花・うん、それはある。ウチの学校は人としゃべるときは、マスク着用なんだけれど、給食の時は外すじゃない。食事しながらおしゃべりをしたらダメだと厳命しているんだけれど、子供はどうしても騒いでしまう。
美咲・わかる。ウチの学校も同じだよ。
優花・ある子供が、おしゃべりしている子を家に帰って報告し、心配した親御さんが学校にお叱りの電話をかけてきたの。
美咲・それはキツいね。
優花・これは私ではどうにもならないと思い、副校長先生に指導してもらうようにお願いした。
「平等に扱ってください」にグサリ
美咲・それがいいよ。自信がないときや、手に余るときは、他の先輩方に頼る。私も子供に対してきつい口調で注意してしまい、保護者の方から「子供たちは平等に扱ってください」とお叱りの電話が来た。
優花・うわ……どの子供も等しく大切に思っているつもりなのに、そう言われると落ち込んでしまうな。そういうお叱りの電話は、本当にこたえる。
美咲・でも、電話を受けたときに、たまたま近くにいた先生が、「大丈夫? 先生が『公平』に指導していることを、みんなわかっていますよ」と言葉をかけてくれて、元気が出た。
優花・いい先生に恵まれているね。平等と公平は違うものね。私の同僚の先生方もきっとそう言ってくれると思う。
漢字テストの採点基準はどうしてる?
美咲・ところで、最近、すごく迷っていることがあるんだよね。
優花・何?
美咲・漢字テストの採点基準ってどうしている? 計算問題とちがって、正解・不正解の境界線があいまい。文部科学省の指針では「文字特有の骨組みが読み取れるのであれば、誤りとはしない」とあるけれど、線が離れていたり、極端に線の長短があったり、字そのものが崩れて読めないこともあるじゃない。
優花・あるね。私は「1/3ルール」というのを自分で作って、「とめ・はね・はらい」の1/3ができていれば、〇にしている。微妙な「はね」、微妙な「はらい」などたくさんあるけれど、正しい字を書くことは将来につながるじゃない。
美咲・そうか。私たちは子供たちの将来を考える仕事だった。
優花・そうだよ。来月もまた会おうね!
取材・文/前川亜紀
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