「作家の時間」2回目のレッスン ~中心人物の悩みや課題と事件をつなげよう~
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連載|ayaya先生のすてきやん通信
書く活動をワークショップ形式で取り組む学習法「作家の時間」。今回は、1回目のレッスンと同じく『スイミー』を題材にした2回目のレッスンです。Instagramでは1万人超えのフォロワーに支持され、多くの女性教師のロールモデルにもなっている樋口綾香先生オススメの実践です!
執筆/大阪府公立小学校教諭・樋口綾香
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■「作家の時間」はじめてみませんか
■「作家の時間」を面白くする二つの工夫
■「作家の時間」はじめてのレッスン
目次
前回のレッスンを振り返る
「作家の時間」、2回目のレッスンです。
1回目のレッスンでスムーズに書き始められた子と、そうでない子がいるはずです。困っている子は、2回目のレッスンに不安を抱いているかもしれません。そのため、すぐにレッスン2の内容に入る前に、前回のレッスンを振り返る時間をとります。
スムーズに書き始められた子の作品を取り上げて、具体的に紹介することで、自分の作品に生かすポイントを自らつかめるようにします。
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教科書作品や幼年童話などを取り上げて説明することもできますが、自分たちと同じ学年の児童が書いた作品を知ることのほうが、親近感が湧き、取り組みやすくなります。また、取り上げられた児童は、さらに書きたい気持ちが強くなります。
このように、新しいレッスンに入るときには、必ず前回のレッスンを振り返り、ときにはこれまでのレッスンの復習をするのがおすすめです。書くための技を復習しながら次に進むと、国語の授業の読解にも、「作家の時間」で学んだ内容を使う子が増えていきます。
レッスン②「中心人物の悩みや課題と事件をつなげよう」
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まず、「事件」という用語について押さえます。
前回お話しした通り、用語を共通理解することで、どの学年、どの授業でも新たな文章に出合ったときに、用語を使って話し合ったり発表したりする子供が育ちます。すると、次の学年になっても学んだことがゼロになってしまうということはありません。子供が用語の定義を理解して、使えるようにしていきましょう。
今回も『スイミー』(レオ=レオニ 作・谷川俊太郎 訳)を例に考えました。
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『スイミー』のお話の事件は? と問うと、子供たちはすぐに答えられます。それほど、『スイミー』の困った出来事は、印象的で心に残っていたのでしょう。
物語の事件は、突然起きることもありますが、その内容と中心人物は深く関わりあっています。『スイミー』で考えてみましょう。
広い海のどこかで幸せに暮らしていた赤い魚たちとスイミーのところへ、突然マグロがやってきて、一匹残らず赤い魚たちが食べられてしまいます。助かったのは、スイミーだけ。
スイミーの視点から物語を語っているため、この事件はとても衝撃的です。しかし、これは、本当に衝撃的なものなのでしょうか。
広い海には多くの生き物がすんでおり、マグロもいれば、サメもいます。スイミーが生きている海は、本当に広い海だったのでしょうか。「広い海のどこか」「幸せに暮らしていた」、そのような何気ない描写があることで、事件が衝撃的なことであると、読者に印象付けられているのです。
物語の事件を考えようとするとき、このような、お話の設定、中心人物の特徴とのつながりが大変重要になります。
『スイミー』のお話は、事件が起きて、中心人物に悩みや課題が生まれますが、『まいごのかぎ』や『モチモチの木』のように、もともと中心人物が悩みや課題を持っていて、事件が起きるというパターンもあります。
子供たちに、このことが伝わるように資料を作成しました。
事件を考えると、おのずとお話の冒頭を書き始められるでしょう。
レッスンが終わった後は、「ひたすら書く時間」になります。
次回は、第3回のレッスンについてお伝えします。
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樋口 綾香
ひぐち・あやか。Instagramでは、ayaya_tとして、♯折り紙で学級づくり、♯構造的板書、♯国語で学級経営などを発信。著書に、『3年目教師 勝負の国語授業づくり』(明治図書)ほか。編著・共著多数。