低学年の子供が、自分で考え、自分で動くための指導法とは?

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沼田晶弘の「教えて、ぬまっち!」【毎週土曜10時更新】
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国立大学法人東京学芸大学附属世田谷小学校教諭

沼田晶弘

子供の自主性を伸ばす斬新な指導で注目を集める、カリスマ教師の沼田晶弘先生。
「高学年の担任が多かったのですが、今年度初めて一年生の担任になりました。一年生は、何から何まで教師の指示が必要で、今までやってきた子供の主体性を伸ばす指導が通用せず、もどかしい日々……。低学年の子供が自分で考え、動くためには? 」という質問に答えていただきました。

撮影/下重修

慣れない学年を担当した時こそ
ターニングポイントだ

ボクもずっと中学年~高学年の担任が続いていた中、突然一年生の担任になったことがある。だから、戸惑う気持ちはわかるよ。

正直、「ボクには無理だろう…」と思ったからね。

なぜなら、ボクがそれまで得意とする実践は、子供たちに授業をさせたり、プレゼンをしたりといった、子供に自分で考えさせ、あとは自主性に任せて伸ばしていくというものがほとんど。しかし入学したばかりの一年生には、「考える」ということがどこまできるのだろうと想像したとき、「ボクの必殺技の8割がなくなった」と思ったよ。

でもね、「ここは勝負の一年。転機の年になる」と考え、覚悟を決めたんだ。

そして子供たちと過ごしながらいろいろな工夫を重ねていくなかで、これまで使っていた実践が使えなくなる代わりに、それらが思いがけずブラッシュアップされたり、新たに生まれたりした実践もあったんだ。

結果、いまふり返ってもとても充実した一年間だったと思う。

「一年生には自主性を伸ばす指導が通用しない」という先入観を捨てる

まず、「自主性を伸ばす指導が一年生には通用しない」という先入観を捨てることだ。ちょっと厳しいようだけれど、これまでの指導は、本当に子供の主体性を伸ばせていたのか、もう一度ふり返ってみよう

子供の主体性に任せるといいながら、「ここまでは自分たちで考えてできるはずだ」という教師側の理想を押し付けていなかっただろうか。

そして自分があまり手をかけずとも、その理想にある程度近づいたことで、自分は子供の自主性を伸ばせていると感じていた部分はなかっただろうか?

そもそも、5、6年生は学校生活に十分慣れているし、見通しをもって行動ができる。しかも、先生が具体的に指示しなくても、教師が自分たちにどうしてほしいのか、忖度しながら動くことができる。

ところが、一年生は学校生活にも不慣れだし、見通しを持って行動などできない。視野が狭く、教師に忖度もしない。

だから、何もかも教師が指導したり、手をかけてあげる必要があり、自主性を伸ばす指導が通用しないと思ってしまっている、ということも考えられるよね。

子供に「全部自分でやる」と意識付けする

まず、子供たちが自分たちで動くようになるためには、「自分のことは全部自分でやる」という意識づけが大切だ。

いつも服を脱ぎ散らかせしまう子の多くは、教師や保護者が「脱いだ服を片付けなさい」と言いつつ、つい子供の代わりに子供が脱ぎ散らかした服を片付けてしまっている場合が多い。

これでは、子供に対し、「どんなに注意されても、聞こえないふりをすれば、自分がやらなくても誰かが片付けてくれる」という経験をさせてしまっているだけだ。

だから、ボクは「この教室ではなんでも自分でやってもらいます」と伝え、実際に何でも自分でやってもらう。

もちろん大人が手伝ったほうが速い。でも、一つずつ、子供が何をどこまでできるかを確認し、「できることはやらせる」という覚悟が必要なんだ。

子供に自分でできることを考えさせる指導例

給食で牛乳をこぼすと、
「先生牛乳がこぼれました」
と報告する子がいたとき

そんなときボクは「瓶は割れたか? けが人はいないか?」と聞く。

「割れていません」と言ったら、「瓶が割れていたら、危険を伴うからそれを片付けるのは先生の仕事。でも、瓶が割れていないなら、こぼれた牛乳は誰が片付ける? 自分で片付けられる? 片付けられない? 牛乳が手について、手が溶けたりするかな?」と明るく聞いてみる。

すると「自分で片付けられます」と答えるので、「では、やってください」と言う。

「先生、A君が牛乳をこぼしました」と友達の失敗を報告しにくる子もいる。

この場合も、「瓶は割れたか?けが人はいないか?」と聞き、「割れていない」と言われたら「そうか。よかった」とだけ答える。

放っておくと、また別の子がが「先生、A君が牛乳をこぼしました」と言いに来たりする。だから、「知ってる。さっき聞いた」と答える。

そして3人目が「先生、A君の牛乳がこぼれました」と言いに来たら、
「牛乳がこぼれましたって先生に報告しても、こぼれた牛乳はなくならないよ」と言う。

こう伝えると、さすがに低学年でもやるべきことに気が付く子が現れ、誰かがこぼれた牛乳を拭き出す。

かなり回りくどいけれど、こういうことを繰り返すと、子供たちからの報告が「先生、牛乳がこぼれています」から、「牛乳がこぼれたので、拭いておきました」に変わる。

こうやって少しずつ、低学年でも自分でできることは何かを考え、自分で動くようになる。

支度や行動に時間がかかるのは、仕方がないと割り切る

ただし、低学年の子の場合、行動や支度に時間がかかるのは仕方がないと諦めよう。まだ時間の感覚を掴めていないからだ。

「時計の長い針が…」などとかみ砕いて伝えても、そもそも時計すら見ようとしない子も多いよね。

だから、「音楽をかける」というのは、低学年に時間を意識させる有効な方法の一つ。

ボクは、子供たちが体育着に着替える時間は、星野源が歌う、映画「ドラえもん」の主題歌を流し、「この曲が終わるまでに着替えよう」と伝えていた。

音楽なら子供たちも「2回目のサビが流れたらそろそろ曲も終わりだな」などと、感覚的に分かるので、低学年の子供を時間内に行動させるのにはとても有効だったよ。

保護者からも、「朝起きてもなかなか着替えないので、『ドラえもん』の曲をかけたら、猛烈な勢いで着替えるようになり、朝の支度がスムーズになりました」などと、喜んでもらえた。

何事も工夫次第!

不慣れな学年の担任になった時こそ、自分のノウハウやスキルを高めるチャンスだと思って、試行錯誤してみよう!

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沼田晶弘先生
沼田晶弘先生

沼田晶弘(ぬまたあきひろ)●1975年東京都生まれ。国立大学法人東京学芸大学附属世田谷小学校教諭。東京学芸大学教育学部卒業後、アメリカ・インディアナ州立ボールステイト大学大学院にて修士課程を修了。2006年から現職。著書に『「変」なクラスが世界を変える』(中央公論新社)他。

取材・構成・文/出浦文絵

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