小4算数「簡単な場合についての 割合」指導アイデア
執筆/埼玉県公立小学校教諭・天野翔太
編集委員/文部科学省教科調査官・笠井健一、浦和大学教授・矢部一夫
目次
本時のねらいと評価規準
本時1/1時
わり算の筆算の単元等の終末に位置付く
ねらい
日常の事象における数量の関係に着目し、ある2つの数量の関係と別の2つの数量の関係との比べ方を考察するとともに、差による比較のほかに倍を使っても比較できることを理解する。

評価規準
比べる対象や目的に応じて、差で比べたり倍で比べたりできることが説明できる。(数学的な考え方)
問題

(グループで実際に2種類のゴムを引っ張る活動をさせる。)
どっちのゴムがよく伸びるんだろう。
どちらのゴムがよく伸びると言えるのか、調べてみましょう。
学習のねらい
ゴムの伸びやすさは、どう比べたらよいだろう。
見通し
よく伸びるゴムという日常の事象について子供は、「伸びた後の最大値の長さで比べる」「もとの長さと伸びた長さとの差で比べる」「ゴムが伸びる割合で比べる」という3つの視点で捉えることが予想されます。そこで、はじめはテープ図のみ提示し、それぞれのゴムの長さの差を視覚化します。そのなかで、比べるためには数値が必要であることを子供に自ら見いださせるとともに、直観的に「もとの長さの何倍くらいかな」という見方を引き出せるようにします。また、もとの長さがそれぞれ違うことから、「単純に最大値の長さや差で比較してよいのか」という問いが表出することも期待できます。
自力解決
A つまずいている子
〇ゴムの伸びを最大値で比べる。
・Aは90cm、Bは120cmだからBのほうがよく伸びるゴム。
〇ゴムの伸びを差で比べる。
・Aは90-30=60、Bは120-60=60なのでどちらも同じ。
B 素朴に解いている子
〇もとの長さをA(またはB)に揃えて考える。
・Bを30cmと考えると120÷2=60(cm)で60cmに伸びると言える。だからAのほうがよく伸びるゴムと言える。
C ねらい通り解いている子
〇もとの長さの何倍かで比べる。
・Aは90÷30=3でもとの長さの3倍、Bは120÷60=2でもとの長さの2倍。だから、Aのほうがよく伸びるゴムだと言える。
学び合いのポイント
全体で学び合う場では、まず最大値による比較と差による比較の方法を取り上げます。その後、倍による比較の方法を取り上げ、「どの比べ方がよいのか」という子供の迷いを引き出します。
そこで、改めて、「単純に最大値の長さや差で比較してよいのか」という子供の問いに立ち戻り、「もとの長さを揃えて比べる方法」について考えていきます。その際は、実際に同じ長さに切ったゴムAとゴムBを触らせて、「同じゴムであればゴムの伸びやすさは変わらない」と直観的に捉えているゴムの比例性を明らかにします。
また、長さの違うAのゴムを用意し、「同じゴムなら、もとの長さを変えても何倍に伸びたかは変わらない」ことを確かめ、「もとの長さをいろいろと変えても、変わらないものは何か」という発問により、倍で比べる方法へと移行させていきましょう。
本時の子供のノート例

全体発表とそれぞれの考えの関連付け
もとの長さをいろいろと変えても、変わらないものはなんですか。
もとの長さに比べて何倍になったかです。例えば、Aは30cmが90cmに伸びるということはもとの長さの3倍になっているので、60cmだと180cmになるはずです。
Bを30cmにしても同じだと思います。60cmで120cmに伸びるのだからもとの長さの2倍になっています。もとの長さが30cmだと60cmに伸びると思います。
ゴムAは「伸びた後の長さ÷もとの長さ=3(倍)」、ゴムBは「伸びた後の長さ÷もとの長さ=2(倍)」となります。だから、Aのほうがよく伸びるゴムだと思います。
ゴムのもとの長さを変化させて考えさせることで、もとの長さと伸びた後の長さとの関係を式に表すことができます。このように、倍で比べる方法が適切であることを明らかにすることが大切です。
学習のねらいに正対した学習のまとめ
まとめ
よく伸びるゴムかどうかを比べるには、もとの長さを基にして(1とみて)、伸びた後の長さが何倍にあたるかで比べると、もとの長さが違っても比べることができる。
問題解決の結果や過程をふり返らせるなかで、「倍で比べる方法が適切である場合があること」を確認しましょう。そのために、子供のつぶやきや素朴な問いを吹き出しで書き残したり、割合の考え方を色チョークなどで強調したりした板書の工夫をすることが大切です。
評価問題
アサガオのつるの長さを観察しました。Aさんのつるは、はじめ10cmだったのが今は20cmに伸びました。Bさんのつるは、はじめ5cmだったのが今は15cmに伸びました。どちらのアサガオのほうがよく伸びたと言えますか。
子供に期待する解答の具体例
Aさん:20÷10=2
Bさん:15÷5=3
Aさんのつるはもとの長さの2倍に伸びて、Bさんのつるはもとの長さの3倍に伸びているから、Bさんのほうがよく伸びたと言えます。
感想例
「よく伸びるゴム」は、もとの長さの何倍に伸びるかで比べることができるとわかりました。Aのゴムよりよく伸びるゴムを探してみたいです。
イラスト/小沢ヨマ
『教育技術 小三小四』 2019年9月号より