45分間一斉授業でも子どもの集中を切らさないコツとは?

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多賀一郎

三密を回避するということが大前提で再開された学校。対話的な授業、協働的な学習が困難な状況では、一斉授業が中心にならざるをえません。全国の学校で教師指導にあたる多賀一郎先生が、一斉授業に不慣れな若手教師からよく寄せられる質問と、それに対してどう答えているのかについて教えてくれました。

執筆/追手門学院小学校講師・多賀一郎

45分間子どもの集中を切らさない「一斉指導」のヒントのイメージ画像
写真AC

今は一斉授業のスキル向上が必須

これまで、適当な発問をして、子どもたちが止まったら、「隣同士で話してごらん」と言って、子ども同士で話をさせたらなんとなく子どもが答えに近いものを出してきた。そのような授業をしてきた人は、発問で子どもを動かすということができないことに気づくでしょう。

この一年は一斉授業の技術を磨きましょう。

だって、それしかできないのですから。その力は、実は対話的な学習、協働学習にも活かせるものなのです。僕は公立学校での講座や、フェイスブック上で立ち上げた「若手のための小部屋」などで、その主張をしています。

ここでは、一斉授業の基本の一部を、若い先生方からよく寄せられる質問に僕が答えていることをシェアする形で紹介します。

若い先生の悩みは、ちょっとした基本的なことですが、中堅教師も意外とあっさり通り過ぎていることが含まれていると気づくでしょう。

1. 授業はモジュールで考える

Q :45分間、子供たちに授業を聞かせるには、どうすればいのでしょうか

まず、大前提として、45分間、子供たちを惹きつける話術やテクニックには経験が必要です。若い先生には絶対的に経験が足りないので、そこは仕方がない部分でもあります。

ですから、授業のどこかに、子供たちが気分転換できたり「これ、面白いじゃん!」と思ったりできるような時間を意識的に作るようにしましょう。

例えば、「5分」ー「10分」ー「30分」というように、授業をモジュール型にすれば、45分間聞き続けなければならないという苦痛の授業にできなくてすみます。具体的にはこういう感じです。

算数の場合
■算数の計算練習を5分
■文章問題を解いたり、分度器やコンパスの練習時間を10分
■本単元の時間を30分

国語の場合
■ 音読や漢字ネタを5分
■ 絵本読み聞かせ、新出漢字の学習を10分
■ 本時の単元を30分

授業の中には、必ず子供たちが「面白い!」と思うことを入れるのです。モジュールに使えるような教科のネタを、いろいろなネタ本から持ち込んで行えば、誰でもできるはずです。

こちらの記事も併せてお読みください→学校再開の授業アイデア:モジュール授業と聞く指導【新型コロナ対策】

一斉授業では、楽しい授業の工夫が欠かせません。一時間の授業の中で一つでも楽しい活動があれば、子供たちは「楽しい」と感じます。

2. 読み聞かせ向けの本をたくさん知っておく

Q:今年5年生の担任をしています。読み聞かせで楽しく笑えるような絵本があったら教えていただきたいです

いくらでもありますが、こんな本がおすすめです。

■『おしっこぼうや』 ウラジーミル・ラドゥンスキー
ベルギーの伝説をもとにした絵本。戦争におしっこをひっかけた坊やの話。ベルギーでテロが起きたときに、小便小僧が銃に放尿している画像が世界に拡散しましたが、この話がベースになっています。

『はいチーズ』 長谷川義史
よっちゃんがいつも食べてる肉屋のチーズが、夢にまで見た肉屋のチーズが、やっと食べられる。一口かんでみたら…。大爆笑絵本です。

『こぶとりたろう』 たかどのほうこ 作/杉浦範茂 絵
頭を柔らかくしなさいと言われて、本当に軟らかくなって、こぶが四つできてしまったおにいちゃん。妹のちょんこは、山奥へ行って鬼と出会ってこぶをとってもらおうと言い出します。ギャグセンスあふれる作品です。

『3びきのかわいいオオカミ』 ユージーン・トリビザス
「三匹の子豚」のパロディ版で、オオカミの兄弟たちがそれぞれ家をつくったら、そこへ悪いブタがやってきて ありとあらゆる手段で家を壊していきます。

3. 対話で書く力を引き出す

Q:小学2年生の担任です。学習を進めるため、子どもに作文を課しています。家では書けないだろうと事前に書き方の指導や、前段階でメモを作るということを教えました。ところが
・メモを無くしてできない
・定着していないので満足に文章は書けず
・そもそも家庭学習を半数がやってこないため次の課題に支障
などなど…。どうしたらよいでしょうか

学習内容を終えないといけない、じっくり教えたいけど時間がない。そこで課題を出すけれど、子供にしてみたら、やらされ感でいっぱい。個別に指導するにしても、本人は遊びたい、帰りたい!の気持ちが強く、投げやりな文章を書く。
結局、教師が添削し、全部フォローする羽目に…。

こんなことは、どこの学校でもよくあるのではないでしょうか。 この時期、どう書く活動を乗り越えたらよいのでしょうか? 本来なら「視写」 → 「作文」と行きたいところですが、余裕がないですね 。

この先生は、一学期中に何とか国語を終わらせようと生活科と合科的に学習内容を考え、

・生活「町探検」&国語「こんなもの見つけたよ」で町の紹介を作文
・生活「ミニトマトの観察」&国語「かんさつ名人になろう」で観察カード

などとして進めているそうなのですが、これに加えて国語は「あったらいいな、こんなもの」など、書く活動がてんこ盛りでパンク寸前とのこと。

「書かせよう」という気持ちが先に立って、子どもが「書きたい」ということがおざなりになってしまうんですよね。ましてや、時間が足りないから、余計に余裕がない。書けるようになるためには、それなりの手だてが必要です。でも、書きたいという意欲を掻き立てる時間も今はないんですよね。

でも、対話しながらできるようなら、お互いに負担は少し軽くできます。二年生ならこんなふうに、呟いたことを書かせていくといいかもしれません。

▼「町探検&こんなもの見つけたよ」の場合

先生:「どんなもの、見つけたかな?」

子供:「でんしんばしら」

先生:「ほう。どんな電信柱だったかな?」

子供:「くろときいろのテープみたいなのが、まいてあったよ。」

先生:「そうかあ。じゃあ、まずは、それを書いてみようか」

子供:「でんしんばしらがありました。そこには、きいろとくろのしましまのテープがまいてありました。」

先生:「いいねえ。それから、見つけたのはなにかな?」

子供:「おはなやさんがあったよ。」

先生:「それじゃあ、それを書いて。」

子供:「おはなやさんがありました。」

先生:「そのおはなやさんには、どんなおはながありましたか?」

子供:「カーネーションがたくさんあった。」

先生:「じゃあ、それも書こうか。」

子供:「おはなやさんには、カーネーションがたくさんありました。」

先生:「それから……」

こんな感じですね。

4. 全体に求めることと個別に考えることを分ける

Q:授業の中で、マスクをしているためか、声の小さい女の子の声がよく聞こえません。僕でも、聞こえない、聞きとりづらいので、子供たちはもっとだと思います。クラス全体には、マスクが声を遮ってしまうから、少し大きな声を出そうということを話しています。声を大きく出す具体的な方法として、少し息を多めに吸ってみる、口を気持ち大きめに開けてみるということをアドバイスしています。今日は授業の始まりに早口言葉を言って、声を出す練習をしてみました。何か他にできることはあるでしょうか…。

マスクは何のためにしているのでしょうか? 飛沫感染を防ぐためですよね。そうすると、大きな声を出すことは、避けなければなりません。

その子のときだけ、マスクを外して話をさせたらいいんじゃないでしょうか? 全員に求めることと、個別に考えることとは別にするのです。

今は、めんどうな時期ですね。

5. 人を惹きつける言葉をためておく

Q:言葉の使い方について、ふだんから心がけることや、お薦めの本はありますか? 言葉を磨くために勉強になる本はありますか?

言葉の使い方の勉強については、新聞の一面のコラムを読みましょう。あの欄は、記者の中でも、かなりベテランで優秀な人にしか書かせないところです。新聞社を代表して書かせるのですから、当然のことですよね。『天声人語』『余録』などがありますが、いろんなジャンルのことについて、金言や詩をまじえながら語っています。

それから、言語感覚を磨くなら、詩集を読むことです。繰り返し読みたい日本の名詩一〇〇とか子どもといっしょに読みたい詩なんかもいいでしょう。ほかにも、これが私の優しさです(谷川俊太郎詩集)』 『萩原朔太郎詩集』『ランボオ詩集』『詩のこころを読む(茨木のり子 )等を読んで、自分の気に入った詩をノートに書写するなどもいいですね。


いかがでしたか?
一斉授業の力は、対話的な学びにシフトする時にも決して無駄にはならないものです。今年度の目標として掲げてみてはいかがでしょうか。

多賀一郎

多賀一郎(たが・いちろう)●追手門学院小学校講師。神戸大学附属住吉小学校を経て私立小学校に40年勤務。「親塾」を各地で開いて保護者の相談に乗ったり、公私立小学校での指導助言や全国でのセミナーを通して教師を育てることにも力を注いでいる。 著書に『学校と一緒に安心して子どもを育てる本』(小学館)『危機に立つSNS時代の教師たち―生き抜くために、知っていなければならないこと』(黎明書房)『全員を聞く子どもにする教室の作り方』(黎明書房)他多数。

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