子供の日記から、いじめが疑われるときの対処法は?

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沼田晶弘の「教えて、ぬまっち!」【毎週土曜10時更新】
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国立大学法人東京学芸大学附属世田谷小学校教諭

沼田晶弘

多忙な日々の中、工夫を凝らし、子供たちと日記のやり取りを毎日続けている「ぬまっち」こと、沼田晶弘先生。
日記は、全員の子供と毎日つながることができる貴重なツールになっていると言いますが、時には友達への不満や、いじめにつながりそうな出来事なども書かれていることがあるそうです。日記に気になるメッセージが書いている場合の対応について伺いました。

沼田晶弘先生
撮影/下重修

友達に対する困りごとが
日記に書かれている場合

ボクが子供たちに日記を書かせているメリットや、日記を毎日継続するための工夫については、前回までに話した通り。子供の本音を聞いたり、信頼関係を築くツールとして、毎日日記を書かせているわけだけど、

実際に
「お父さんに叱られたからイライラ中」
「Aちゃんがいじめられているみたいだから、ぬまっち、なんとかして」
「Bさんは最近ひどいと思う。文句を言いたけれど、言い出しにくい」

など、いろいろなことを日記に書いてくれる。

「そうか。そういう時もあるよ」ってコメントするだけのときもあるけれど、内容によっては、早急に対応することも必要だ。そうでなければせっかく重要な情報を書いてくれたのに、信頼を失うことにもなってしまうからね。

友達に対する困りごとが書かれていたときなどは、誰が書いたということは伏せながら、直接本人と話をすることもある。

例えば
「日記を読んでいたら、君のバスの中での態度が悪いって書いてあったけど、どういうこと?」とストレートに聞いてみる。すると、意外に
「ああ、あれですね」
と認めたりするんだよね。

「『ああ、あれですね』ってすぐ気づいたってことは、自分でも悪いと思ってるんだよね」
「はい……」
「自分でも悪いって分かっているなら、直すのは簡単だよね?」
などといって、指導することもあるよ。

日記に書かれたことを、
クラス全体で話し合うこともある

例えば、クラスの中に、みんなの気持ちを盛り下げるようなことを言う子がいるとき。もしくは発言力の強い子が、常に自分の意見を押し通し、自分の思い通りに事を進めようとするがとき。

「あれはさすがにひどいと思う」「あの子の態度は嫌だけど、それを本人に言えない私もいる」などと、不満がクラスに広がりそうになっている、もしくは友達の言動に対し、どうしたらよいか困っている様子が日記から伝わって来たら、朝の会でさりげなくみんなに話をしたりする。

「最近、クラスみんなで何かを頑張ろうってしているときに、自分が上手くできないと、大騒ぎするなんてことを見かけるけれど、周りのみんなはいい気持ちじゃないかもしれないよね?」などと、問題提起することもある。

ポイントは、できるだけ早めに「日記を読んで気になったから、みんなに言っておくね」と、「みんな」に対して「軽く」伝えること。

それだけでも、該当する子供の自覚を促すことはできる。

もちろん、誰が書いたのかなど、出どころが分かるような発言は絶対にしないことは言うまでもないよね。

いじめにつながりそうな
トラブルが書かれている時

ある日、日記に「Aちゃんがいじめられているみたい」というコメントが書かれていたことがある。ボクは、「わかった。アンテナMAXにします。ありがとう」とコメントを返し、しばらくよく観察をすることにした

なぜなら、いきなりみんなの前で、「日記でAちゃんがいじめられているという報告がありました。いじめはいけません」などと言ってしまったら、その瞬間からAちゃんは「いじめられっ子」のレッテルが貼られてしまうだろう。それはきっとAちゃんにとっても、コメントを書いてくれた子にとても辛いはずだ。

一日よく観察してみると、やはりAちゃんに対してきつい態度で接している子供
がいることがわかった。

そこで、Aちゃんが一人になったときに、そっと
「最近どう? Bが最近君にきつくない?」
と声をかけた。Aちゃんは「うん」と答えてくれたので、
「わかったよ。ありがとう。先生が対応するから」
と伝えた。

その後、Aちゃんにちょっかいを出している子が一人になるタイミングを探って
「最近さ、Aちゃんに対してキツく当たってない? あれさ、やっぱりよくないよ」とストレートに話してみた。

その子は最初は「え? なんのこと?」ととぼけていたけれど、ボクは現場を押さえているから、毅然とした態度で自分が見たことを伝え、ダメなことはダメだと指導する。

「休み時間、見てたよ。他の子も君がしていることを知っているよ。自分が同じことされたら、どう思う? わかるよな?」
「……うん、わかった」

ピンポイントで早急に対応することで、大げさに事を荒立てることなく、その後トラブルは落ち着いた。

日記のおかげで早期発見・早期対応ができた一例だけれど、本音が書けない日記なら、こうはいかなと思う。

本音を書いてほしいと思ったら、子供たちの気持ちを受け止め、君たちの信頼は決して裏切らないという姿勢を見せることが大事だと思っている

日記は気持ちを吐き出すツール
コメントで諭すことはしない

もちろん、コメントを書いて返して見守るだけの時も多い。

お母さんとのケンカの話をひたすらノートに書き殴り、最後に「はー。すっきりした」なんて書いている子には、「おつかれ」と書いて終わりのときもある。

「お母さんの気持ちを考えてあげたほうがいい」とか、「もっと他のことを考えなさい」などとたしなめることはしない。日記は子供たちの中に溜まった不満を吐き出す手段としての効力もあるからね。

子供たちは信頼できる人に気持ちを吐き出し切ったら、大抵は次のステップを考えようとする。だから、まずは全部吐き出したほうがいい。

ネガティブな気持ちをとりあえず全部書き出した後、少し時間が経ってから読み返してみると、もう少し冷静に考えられることもある。何をそんなに怒ってたんだろう? と自分を客観視できることもあるだろう。
そういう意味でもあのノートは役に立っているのかな。

ある程度、子供と信頼関係ができた段階ならば、
「大人として先生は、お母さんの気持ちを分からないでもないな」
とか、
「君の気持ちも、お母さんの気持ちも分からないでもないけど、お母さんは自分の気持ちを君に伝えきれてないんだね」
などと書くときもあるよ。

その一言で何か気付いてくれればいいし、ピンとこなくてイライラしたら、また日記に気持ちをぶつければいい。

気を付けているのは、コメントは長く書かないこと

長いコメントはリスクも高い。

教師はつい教えよう、伝えようとしてしまいがちだから、つい自分の考えを押し付けてしまったりするからね。日記はあくまで自分の気持ちを吐き出すツールだということを忘れてはいけない。

子供の本音を引き出す
4つのポイント

子供の本音を引き出すポイントは4つ。

  • 秘密は守る
  • 子供の言葉に対して真摯に耳を傾ける
  • トラブルは絶対に解決するという姿勢を見せる
  • 事を荒立てない

日記である必要はないかもしれないけれど、このポイントを押さえつつ、日頃から担任が子供たちとつながるためのいろいろなツールを持っていると、いざというときに役立つと思うよ。

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沼田晶弘先生
沼田晶弘先生

沼田晶弘(ぬまたあきひろ)●1975年東京都生まれ。国立大学法人東京学芸大学附属世田谷小学校教諭。東京学芸大学教育学部卒業後、アメリカ・インディアナ州立ボールステイト大学大学院にて修士課程を修了。2006年から現職。著書に『「変」なクラスが世界を変える』(中央公論新社)他。

取材・構成・文/出浦文絵

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