6年生社会科:オンライン授業での動画づくりのコツ

特集
備えあれば憂いなし!オンライン授業・ICT活用術
特集
新型コロナ対策:新しい授業と学級づくりの知恵、続々更新中!

オンライン授業の必要性が高まる中、動画配信を他に先駆けて行っているのが横浜市です。今回は6年生社会科の動画を使ったオンライン授業例を紹介。子供たちが前のめりに、学び出したくなる動画を作成するためのポイントもしっかり押さえていきます。

執筆/神奈川県公立小学校教諭・宗像北斗
監修/文部科学省教科調査官・小倉勝登

大昔の人はどんな暮らしをしていたの?

オンライン動画作成にあたって基本事項にしたこと

  1. 1コマ10分程度で作成する。
  2. 児童はノートを持つ前提で行う。
  3. 2人1組で動画に映り、組み立てていく(1人で行う場合は、パワーポイント等を効果的に扱う)。
  4. 子供が思考したりアウトプットしたりできる時間をとる。
  5. 振り返りの視点を明確に伝える。

この5つの基本事項を確認後、○学習指導要領の内容の確認 ○教科書の内容確認を行い、普段45分で行っている授業について、各学習内容をどのように10分で構成するか検討します。

動画作成で大切にしたいポイント

次に、実際に動画作成を行う際に大切にしたい4つのポイントを説明します。

1、知識注入一辺倒の授業を避けるために 
~シンキングタイムでアウトプットを促す~  

どのように工夫をしても一方通行になりやすい動画配信型の授業ですが、子供たちの学習意欲を刺激し、学習に対する楽しさを感じさせられたり、子供たちなりの工夫を生み出せたりできることを大切にしたいです。

そこで、オンライン動画授業においても、教室での授業と変わらずに大切にしたいポイントとして挙げたいのが、子供たちが「積極的に考えること」「 自分の力で学習を進めようとすること」です。そのために、ここでは、

シンキングタイムを設定する

1コマに2~3回、シンキングタイムを設け、動画の途中で先生がフラッシュカードを持ちながら、例えば、「投票に行く人が少なくなるとどんなことが問題になるのでしょう」などと発問し、「ここで一時停止を押して、ノー トに考えをまとめてみましょう」とアウトプットを促す。

発問を十分に吟味してから投げかけます。

2、子供が前のめりになる学習にするために~切実感と臨場感を大切にする~

弥生時代に衣装を着て、オンライン授業をする先生達

 弥生時代の貫頭衣を着て歴史博物館へジャンプ

教室を飛び出して、歴史博物館で竪穴式住居を紹介する先生達

動画による授業において課題となるのは、「問題に対する切実感」がもてなかったり、実際に見たり触れたりすることができないため、「臨場感のある」学習展開にできないことです。ここにも工夫が必要となります。そのために、ここでは、

切実感と臨場感を演出する

  • 知的好奇心をくすぐるクイズから入る。
    例:「 突然ですが皆さん、○○は何でしょう」
  • 子供を引きつける仕掛けをする。
    例:大仏のお面をかぶって登場、貫頭衣に変身
  • 子供の「?」を生み出す流れを大切にするため、意外性のある事実と対峙させる。
  • ストーリー性のある学習展開を大切にする。
  • 教師が実際に現地や博物館を取材した動画やインタビュー動画を流す。

3、「教室での学び」につなぐために~動画だけでは完結しない展開にする~

動画による授業は、その時間だけで「単元で学ぶべき学習内容」が完結するような内容にはなっていません。子供たちの学習意欲を引き出したり、基礎基本の定着を図ったりすることが、休校明けの教室での学びにつながっていってほしいという「接続」の意識をもって制作しているからです。

教室での授業(アナログ)、オンライン授業(リモート)のそれぞれに長所や短所があることを踏まえ、それらを組み合わせることで学習効果の高まりが期待できるといえます。そのために、ここでは、

オンライン授業と教室での授業を「接続」させる意識をもつ

  • オンラインや子供自身の追究で取り組めること、教室で取り組めることを明確にしておく。
  • 子供たちの追究を支えるために、学び方や学習サンプルを紹介する。
  • 子供たちの追究を支えるために、学習で活用できる資料を紹介する。
  • 動画の最後に、次の活動へと促す課題の提示などを大切にする。

4、正しさ、見やすさ、伝わりやすさのために~ 子供の目線を大切にする~

最後に、大切なことは、動画自体が見やすく伝わりやすいものであることです。そのためにいくつか工夫したことをまとめて紹介します。

目線、文言、資料提示、板書を工夫する

目線: 少しでも視点がずれると目立つため、レンズをしっかり見て話すようにします。台本や紙を見て話すと視点がずれるので、読み練習は必須になります。
文言: 人権的な視点からもしっかりチェックしておく必要があります。また、初めて出てくる言葉への注釈も必要です。
資料提示: 細かい資料を提示する際には、画面を切り替え、全面を使って提示するようにします。
板書: ホワイトボードに貼る予定の資料の位置を事前に目張りしておくと、見やすい黒板になります。

実際の動画授業展開例

※展開がわかるように台本を加工したものです。

第6学年「わたしたちの暮らしを支える政治2」

1、あいさつと問いの確認

T2:皆さん、こんにちは。これから6年生の「わたしたちの暮らしを支える政治2」の学習を始めます。ノートに日付とタイトルを書いておきましょう。

~中略~

人々の願いをかなえ、社会の課題を解決するために、政治はどのようなはたらきをしているのだろう。

2、導入の問いかけ

T1:さて、早速ですが、クエスチョン! これはいったい何の数字でしょう?「2828億円」

T2:う~ん、○○ですか?

ぜんぜん違いますよ。横浜市が平成30年度に「介護(生活の世話)が必要なお年寄りのために使ったお金」なのです。~中略~

では、皆さんもここで少し、予想をしてみましょう。2828億円というお金がどのようなことに使われていると予想しますか? 少し考えてみましょう。

こんなにたくさんのお金 ……。ほとんどがお年寄りの生活する場所をつくることに使われてるんじゃないかなぁ。

クイズで導入を図る。子供たちを引きつけるために2人組の掛け合いも大切になる。

3、人の登場

それでは、どのようなことに使われているのか、詳しく調べていきましょう。ここに区役所の高齢者福祉を担当されているGさんという方がいらっしゃいます。Gさんはこんなことをおっしゃっています。

<Gさんの写真を提示>

Gさん:「今後、横浜市でも高齢者の割合は増えていくことが予想されています。高齢者の方々が、安心して、その人らしく毎日を過ごせるよう取組や対策を考えています」 (動画)

教科書にはない事例を取り上げることで、思考力の高まりも期待。

4、中心になる発問

~中略~
そのような中、区役所の高齢者福祉に関わるGさんたちは、具体的にはどのような取組を進めているのでしょうか。先生はどんなことだと思いますか?
(T2にふる)

はい。お年寄りの生活をサポートする施設や老人ホームの運営などが中心だと思います。

もちろん、そのようなこともあります。しかし、今、Gさんたちが力を入れている取組は他にもあるそうですよ。

えっ、施設をつくることと同じくらい大切にしていることがあるのですか⁉  

はい。それはどのようなことなのでしょう。ヒントを出しますね。横浜市ではこのようなことがお年寄りのために行われています。

ア.元気作りステーション(趣味を広げるサークル)

イ.シニアボランティア

ウ.ハマトレ(お年寄り向けの体操)

これらに共通することはどのようなことでしょう。一時停止を押して、皆さんも考えてみましょう。

えっ、施設をつくることと同じくらい大切にしていることがあるの? 何だろう? この3つに共通することは ……。

わかった! Gさんの言葉にも「高齢者の方々が、安心して、その人らしく、毎日を過ごせる取組を」と書いてあったものね。お年寄りの方々が生き生きするための取組を考えているんだね。

ストーリー性のある展開に。

5、問題解決

~中略~  そうか! このようなことを続けていくことで、誰かの手を借りないといけないような「介護」が必要になるまでの時間を延ばすことができますね。

はい。それを難しい言葉で「介護予防」のための取組と言います。これは、介護保険法という国の法律をもとに行われていることでもありますよ。

事例と法律との関連にも触れる。

~中略~ 
このような取組はどのように決められていくのですか。

6、「 人々の願いが実現するまでの流れ」の図

これは「人々の願いが実現するまでの流れ」の図です。
穴がいくつか空いているので、一時停止を押して考えてみましょう。教科書を活用しながら問題を解いてOKです。

関係図提示、教科書の活用も促す。

人々の願いが実剣するまでの流れを表した図
クリックすると別ウィンドウで開きます

7、政治の学習の学び方ポイント確認

今日は福祉に関わる政治の例を簡単に挙げてみました。皆さんも学校が始まったら、 ぜひ身近な地域で行われている政治について調べてみるとよいですね。

ここで、政治の学習を進めていく中でポイントとなることを紹介しておきます。

パワーポイントを使って、「政治の学習を進めていく上でのポイント」を紹介

政治の学習を行うに当たっては、このようなDVDや広報資料(「ハマの台所事情」 や「わたしたちの横浜」など)を上手に活用していけるようにしましょう。

8、振り返りとあいさつ

実際の動画授業例(実際の画面例)

オンライン授業をする時に準備しておく板書のイラスト
クリックすると別ウィンドウで開きます

【授業の流れ】

上の板書①~⑤を授業展開に合わせて、順番に提示していく

①学習問題を提示する   

学習の導入を行い、まずは、これから単元を通して追究していく学習問題を提示します。

②数字を提示して、政治の学習への興味を引きつける   

2828億円を提示して、この数字が何を表しているのか問いかけます。

少し時間をとる

その後、横浜市が平成30年度に「介護(生活の世話)が必要なお年寄りのために使ったお金」であることを伝え、説明をします。   

そして、2828億円が、どのように使われているのか予想するように問いかけます。

一時停止し、予想を書いて、 また再生するように促す 。

 ③Gさんの写真を提示する   

区役所高齢者福祉担当のGさんを紹介し、取材した動画を流す。

 ④本時の中心となる発問をする
 (本時の中心となる問い)  

「区役所の高齢者福祉に関わるGさんたちは、具体的にはどのような取組を進めているのでしょうか」と問い、実際の活動アイウを紹介する。その後、動画を流す。(可能な取組のみ)   

その後、「 これらに共通することは何でしょう」と問う。  

一時停止し、考えを書いて、また再生するように促す。

○解決を図る    

解説する。

⑤「人々の願いが実現するまでの流れ」を提示する   

空欄【A】【B】【C】については図を提示して、教科書を活用して解決するように促す。

一時停止し、書いてまた再生するように促す 。

 ○政治の学習の学び方を紹介する    

画面を切り替えて、これからの政治の学習の進め方を紹介する。

⑴ 人々の願いや社会の課題をとらえる。
⑵ それをかなえたり解決したりする政治の取組はどのようなものがあるのか調べる。
⑶「関連する法律」や「予算の使われ方」にも注目しながら考えを深めていく。
⑷ それらはどのように実現されているのか調べる。

○本時の振り返りを行う

イラスト/高橋正輝、横井智美

『教育技術 小五小六』2020年7/8月号より

学校の先生に役立つ情報を毎日配信中!

クリックして最新記事をチェック!
特集
備えあれば憂いなし!オンライン授業・ICT活用術
特集
新型コロナ対策:新しい授業と学級づくりの知恵、続々更新中!

授業改善の記事一覧

雑誌『教育技術』各誌は刊行終了しました