iPad活用で表現力を大幅アップ!〜近畿大学附属小学校・外山宏行先生のICT実践例

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小学校の授業にiPadがどのように導入され、子どもたちの学びにどう活用されているのか。その実践例として、近畿大学附属小学校の取り組みをご紹介します。

iPadを活用したICT授業の実践

2020年に本格始動した、すべての学校で教育ICT活用の環境を整えるGIGAスクール構想。今回の新型コロナ休業への対応で、地域や学校によって、現時点での取り組みにはかなりバラツキがあることもわかりました。

以前から教育ICTの環境を整備し、活用に取り組んできた学校の多くは、スムーズにオンライン授業をスタートさせ、教室で行っていたのと同じ質の高い学びを子どもたちに提供することができています。そのような学校では、どのように教育ICTを導入し、ふだんどのような取り組みを行っているのでしょうか。

今回は、近畿大学附属小学校でiPadがどのように導入され、子どもたちの学びにどう活用されているかについて、同校の外山宏行先生に YouTubeチャンネル 「iTeachersTV」 でのプレゼン動画の内容をふまえつつ紹介いただきます。

iTeachersTVより

※注 iTeachersTVは、教育ICTを通じて新しい学びを提案する“iTeachers”のYouTubeチャンネルです。ICTを活用して授業に取り組む先生たちがその実践を紹介しています。

外山
外山宏行(とやま ひろゆき) 近畿大学附属小学校 ICT教育推進委員。進学塾、専門学校勤務を経て、平成18年から近畿大学附属小学校に勤務。ICT教育推進委員として、高学年の1人1台個人持ちiPad導入に取り組む。2019年、Apple Distinguished Educator に認定。iPadを活用した授業に取り組むとともに、校内外の教員向けにiPadの活用方法やアイデアを提案している。

iPad活用で「問題解決型学習」を進化させる

外山先生:iPad導入
iTeachersTVより

近畿大学附属小学校は、2018年までに共有iPadを120台導入しました。そして、2019年度から、5年生と6年生は1人1台個人所有のiPadを授業で使っています。

ICTは、子どもにどういう力をつけさせ、どう育てるのかという教育目標達成のための手段として活用するもの。この考えのもと、iPadは本校オリジナルの「問題解決型学習」をさらに進化させるために使うという基本方針が決まりました。

問題解決型の学習とは、課題に対して見通しを持ち、それに沿って解決する過程で子どもたちが考えを出し合い、意見を交流することで理解を深める、という学び方です。ICTのCは、子どもたちが意見を交流する場面の “Communication” と、自分の考えや思いを表現するアウトプットとしての “Creation” であり、この2つが近畿大学附属小学校における、iPad活用の目標です。

外山先生:問題解決学習
iTeachersTVより

6年生の算数の授業における“Communication”と“Creation”の実践

私が担当する6年生の算数でも、問題解決型学習を行っています。子どもたちは、iPadを活用して、“Communication”したり、“Creation”したりして、問題解決に取り組みます。

「分数の割り算」について学ぶ授業では、「なぜ分数の割り算は逆数をかけるのか」という問題を提示し、子どもたちに解決方法を考えさせています。今学期は、コロナ休業中のZoomを使った交流型オンライン授業でこの単元に取り組みました。

事前の動画配信で、子どもたちは「分数の割り算は逆数をかける」ことを学び、練習問題も解いています。その上で、「どうして逆数をかけるのか?」について考える課題を出しました。子どもたちは「図を使う」「式を変形させる」「整数で考える」「かけ算に置き換える」など、問題解決への見通しを持ち、それをノートに書いておきます。

児童のノート:1・2

オンライン授業では、Zoomのブレイクアウトルーム機能を使って60人を4人ずつのグループに分けました。子どもたちは自分の問題解決方法を書いたノートを写真に撮って、グループ内で共有し、全員が自分の考えを発表して、意見を交流させました。

最後に、グループ内で話し合った解決方法をまとめて、そのノートを全員で共有しながら、3人ほどが全体交流で発表するということも行いました。

児童のノート:3

教室で行う授業では、教育支援アプリ「ロイロノート」を使って全員のノートをスクリーンに表示することができます。そこで、同じような考え方や違う考え方を選んで比較したりしながら、全員でディスカッションしています。

オンラインでも教室でも、iPadを使うのと使わないのでは、子どもたちの授業への関わり方が違います。教室でお客さんのように授業を聞いているだけでなく、一人ひとりが自分の意見を発信するために、授業に積極的に参加する必要性が出てくるのです。

高学年では、表現の幅を広げ、自分の考えを動画やiPadアプリのKeynoteなどを使ったプレゼンテーションの形にまとめて、交流することも行います。単元によって、グループディスカッションしたり、プレゼンテーションしたり、レポートを作成したりするなど、iPadの機能を活用して、さまざまな形で表現し、交流しています。

手書きとICTの融合 “Hi” brid Noteで学習ポートフォリオを作る

本校では、「書いて学ぶ」ことをずっと重視してきました。特に低学年では、子どもたちの個性が表れる手書きのノートでの学習をしっかり取り入れています。iPadを導入する際に「字を書く」ことの指導やノート指導の良さが失われるのではないかと危惧した保護者や教員もいました。しかし、もちろんICTの導入で近大附属小の「書いて学ぶ」伝統がなくなることはありませんでした。

書いて学ぶ
iTeachersTVより

そんな中で生まれたのが、“Hi” brid Note(ハイブリッドノート)です。これは、手書きのノートと、iPadで撮ったり作ったりした画像や動画、プレゼンテーションのムービーなどを組み合わせて作る、自分だけのオリジナルのノートです。低学年から行っている「書いて学ぶ授業」と、iPadを活用したアクティブな学びをつなぎ合わせることができます。

“Hi” brid Note:1
iTeachersTVより

私の授業では、“Hi” brid Noteは、iPadに入っているワープロアプリPagesを使って、単元ごとに作成します。子どもたちは、まず、自分の手書きのノートを写真に撮ってPagesに取り込みます。そのページに、配付されたり、自分たちが作ったりした説明画像や動画を挿入、またインターネットで調べた情報を追加するなどして、子どもたちは個性豊かなノートを作っていきます。

“Hi” brid Note:2

作成したノートは、自分のiPadのブックに保存します。この方法なら、学んだことが、手書きノートやiPadのどこかにバラバラに記録されたまま、ということにならず、一つにまとまります。子どもたち一人ひとりが、大切な学習ポートフォリオを持つことができるというわけです。

休校期間中も、近畿大学附属小学校では、問題解決型学習、“Hi” brid Noteの作成を含めて、学校の教室で行うのと同じように授業を進めることができました。

昨年度末からは動画で授業を配信し、ロイロノートを使って課題を提出する非同期型の双方向授業、そして、5月からはZoomを使った同期型双方向授業を実施しました。1人1台だからこそできた授業で、保護者からも好評でした。教員全員がiPadを使って授業の動画配信をするなど、教員研修を続けてきた結果が十分に生かされたと思っています。

*  *  *

以上、近畿大学附属小学校でのiPadを使った教育ICT実践例をご紹介しました。同校でのiPad導入・活用事例、およびICTに対する意識やリテラシーが異なるさまざまな先生たちがどんな研修に取り組んでいるかについては、iTeachersTVの下記動画をチェックしてみてください。

iTeachersTVより

取材・文/石田早苗

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