教員が学校のトイレ掃除をすることで学んだ3つの大切なこと

連載
ふるだて先生のつぶやききれなかったこと【月1回不定期更新】

岩手県公立小学校教諭

古舘良純

自らの体験に裏打ちされた教育哲学と再現性の高いスキルをTwitter(@YoshiJunF)で発信し、若手教師を励まし続ける古館良純先生が、Twitterではつぶやききれなかった思いを綴る新連載。

第一回目の今回は、子供たちが使う学校のトイレのお話。きれいとは言い難いその状況を知った古舘先生は、同僚に呼び掛け、トイレ掃除に一緒に取り組むことに。すると、いろいろな気付きがあったというのです。

執筆/岩手県公立小学校教諭・古舘良純

「トイレ掃除」から学んだ3つの大切なこと
イラストAC

『トイレの神様』を歌いながら…

多くの企業で「トイレ掃除」を大切にしているという話を聞きます。NHK『プロフェッショナル仕事の流儀』に出演していたサンリオピューロランド館長(現・ 株式会社サンリオエンターテイメント社長)の小巻亜矢さんも、スタッフ用のトイレをきれいにし、照明を明るくしたり、キャラクターを配置したりしたそうです。そうすることで、従業員の働くモチベーションのアップにつながったのです。

そんな話を耳にする度に、私は、子供用トイレも美しく在りたいものだと考えるようになりました。せめて、汚れていないようにしたいと思っていました。

4月、学級開きや学年の事務仕事が一区切りついた時、子供たちが使うトイレに入ってみました。すると、文章では言い表しにくいくらい汚れていて、正直、進級した子供たちを迎えられるような環境とはとても言えない状態でした。

その瞬間、「掃除しなきゃ…」と思ったにもかかわらず、すぐに踏み出すことができませんでした。まだどこか、誰かに責任を求めていて、自分ごととして考えることができなかったのです。

数日が経ったころ、子供用トイレの前で、タイミングよく同学年のA先生と会いました。私は思わず、「A先生、もしよかったら、トイレ掃除を一緒にしてもらえませんか? 男子トイレは私がやるので、女子トイレをお願いしたいのですが…」と聞いてみました。A先生は、「イイですよ!」と即答。そして、トイレの状況を見てもらい、一緒に笑いました(驚愕しました)。

A先生は、すぐに鏡を拭くためのスプレーを用意したり、新聞紙や雑巾などを持ってきてくれたりしました。そしていざ、「では、やりますか!」と、お互いトイレに向かいました。すると、A先生は、「ト〜イレ〜には〜♫それは〜それはきれいな〜♫」と、『トイレの神様』を歌いながら女子トイレに入って行ったのです。驚きましたが、私も続けて「め〜が〜み〜様が〜いる〜んやで〜♫」と歌いながら男子トイレに入り、掃除を始めました。

初めてトイレの状態を見たときは、トイレ掃除をすることに抵抗を感じました。それほど汚かったからです。でも、子供たちを迎えるためには仕方がない…と思い、同僚に声をかけ、『トイレの神様』を歌う姿を見たら、なんだか私も「楽しい!」と思えるようになっていました。

そして私はトイレ掃除から、3つのことを学び、気付くことができました。

1 子供の生活環境を確認することの大切さ

当たり前かもしれませんが、子供たちの生活環境を一度確認しておくことの重要性を再確認しました。

子供たちが担当する掃除場所を事前に掃除してみたり、子供たちが過ごす特別教室の座席に実際に座ってみたりするということです。できれば、校庭の遊具や、遊ぶ範囲なども知っておきたいと思っています。

子供たちの成長は、環境の良し悪しに影響されます。良くない環境では、心が崩れていきます。

子供たちの、ともすると緩みがちな気持ちを引き締めておくためにも、教室の中だけではなく、様々な場所を子供たち目線で「見直す・知り直す」ことが必要だと思います。

それはきっと、「様々な場面で子供たちを育てる」という視点からも大切なことです。

また、トイレ掃除を事前に行ったことで、ブラシの劣化具合いや、バケツの水の処理の仕方などを具体的に確認することもできました。

2 先生方と共に作業することの大切さ

「トイレ掃除」は、年齢差や経験差、性別を越えた形で、先生方とのより良い関係性をつくるきっかけになったと思います。

まず、掃除の必要性に共感してくれたことを、本当に嬉しく思いました。「子供たちが気持ちよく使えるように」という目的をもって始まった作業に、私も同僚の先生も、楽しい気持ちで取り組むことができました。こうした作業を一緒に行うことで、「協働した事実」が残ります。

以前の私は、効率や生産性を求めるあまり、何に関しても一人だけでやりがちでした。校庭のライン引きや、教材の印刷、壁面掲示や買い出しなど、一手に引き受けていました。

でも、今考えてみると、そうしたワンマン作業は、「薄っぺらい効率」「乾いた生産性」になっていたように思います。仕事に潤いが出ず、達成感や共有できるものが生まれなかったのです。そして何より「笑顔」がありませんでした。

いつからか、職場の先生方に「お願い」することを覚えていきました。無理せず「ヘルプ」が出せるようになっていきました。「ウィズミー」が言えるようになりました。

ただ、複数人で作業することで非効率で非生産的なものになる場合もあるので、バランスも必要だと思います。

3 経験を指導への自信につなげることの大切さ

子供たちに掃除の大切さや掃除のポイントについて伝えるとき、実際にトイレ掃除を行ったという「自身の経験」は、そのままリアルな「指導の言葉」になります。

指導者自身がそれを未経験である場合の指導と、経験したことがある場合の指導とでは、届く言葉の影響力が変わってくるはずです。

子供たち自らの気付きを待ち、「自発的な活動」とすることにも意味があり、その価値は高いと思います。しかし、今回の場合は、私自身が実際にトイレ掃除を行ったことで、子供たちへの指導において「生きた言葉」を示すことの重要性を知るきっかけになったのです。

古舘良純先生
古舘良純先生

古舘良純(ふるだて・よしずみ) ●岩手県久慈市出身、北海道教育大学函館校出身、菊池道場岩手支部代表、バラスーシ研究会所属、共著『授業の腕をあげるちょこっとスキル』(明治図書出版)、平成29年度千葉県教育弘済会教育実践研究論文にて最優秀賞を受賞

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