「子どものコロナづかれを解消!」教育カウンセラーが教える家庭でできる心ほぐしゲーム
新型コロナウィルスの感染拡大の影響は、社会全体をゆるがす大きな問題となっていますが、突然年度末を迎えるだけではなく、“緊急事態宣言”も延長され、学校も保護者もどんなにか戸惑っていることでしょう。そろそろ、活動を制限された子どもたちの心のケアが問題となり始めています。カウンセリングやソーシャルスキルを活かした学級づくりに詳しい教育カウンセラーの八巻寛治先生に、心ほぐしゲームの行い方を紹介していただきます。
文/教育カウンセラー・八巻寛治
目次
心のSOSサインに気づく
ゴールデンウィークが明けて学校再開を迎えた地域もあれば、ゴールデンウィーク後も休校措置を取る学校が出るなど、地域による差が出始めました。このような差は、子どもたちにとって見通しの持てない不安を増幅させることに他なりません。
子どもたちの運動不足や学習の遅れの心配もありますが、それ以外に、子どもの心をストレスから守ることや、長時間共に過ごすきょうだいや親子の不和への対応が多く求められます。
不安や悩み、ストレスが大きくなり、辛さが増してくると、子どもたちに様々なサインが表れます。とくに、不安が長期化する時に、心のSOSとして気を付けたいのが、体調、言動、睡眠、食欲の4つだと言われています。
「そういえば最近きょうだい喧嘩が増えた」
「最近小言ばかり言ってしまう」
「反抗的な態度が気になる」
など、<長引く休校措置><コロナ疲れ>から来る家庭内の問題が話題になっています。様々なサインが出てきますので、お子さんをしっかり観察したり、話を聞いてみたりしましょう。心のケアの観察の主なチェック項目は次の通りです。
体調に関すること
元気がない 顔色が悪いイライラしている
体がだるそう 動きが緩慢
疲れている
腹痛や頭痛などを訴える
言動に関すること
何事にもやる気がないしゃべらない 無口になった
何もしようとしない ぼんやりしている。
表情が変わらない 感情面での反応が少ない
独り言をつぶやくことが増えた
睡眠に関すること
布団に入っても、なかなか寝つけない夜遅くまで起きている
朝、起きるのが辛そう なかなか起きることができない
睡眠のリズムが崩れている
寝すぎる
食事に関すること
食欲がない 食べる量が減った食べすぎる
偏食になった
体重の増減が激しい
好みのおやつばかり口にする
上記のようなサインだけが、必ずしも子どもの心のSOSになるとは限りません。子どもの「普段と違う様子」が見られたら、心ほぐしミニゲームを参考に関わってみましょう。
心の不安をとりのぞく「心ほぐしミニゲーム」実践
家族で、ゲーム感覚で楽しみながら取り組める<心ほぐしミニゲーム>を体験してみましょう。学校の活動の中で行ったことのある子どももいると思いますが、家族で行うとなると喜んで取り組んでくれることでしょう。
さらに、休校が解除になった学級でも使えますので、家庭で、教室で、柔軟に取り組んでください。
<リラックス法①> 1分間の呼吸法
【準備物】
秒針の付いた時計等
【行い方(主な流れ)】
<説明>
「気持ちを落ち着けるのに『呼吸法』があり、やってみると気持ちがすっきりするらしいよ。家族みんなでやってみよう。」
「口をすぼめてゆっくり息をはき、同じぐらいの時間でゆっくり息を吸うよ。」
①最初は、10秒間呼吸法を行う
5秒ぐらいで息をはいて、5秒くらいで息を吸います。
②次は目を閉じて10秒間呼吸法を行う
③時間を伸ばして、30秒間呼吸法を試してみる
15秒ぐらいで息をはいて、15秒くらいで息を吸います。
④目を閉じて30秒間呼吸法を試してみる
どんな感じだった?
簡単だった
楽ちんにできた
ぴったり1分間できるとけっこうリラックスするらしいけどやってみる?
時間係やりたい人?
⑤目を閉じて1分間呼吸法
【振り返り】
やってみてどんな感じだった?
・すっきりした
・1分間が長いと思った
・体が柔らかくなった
ゲーム的に取り組むことで、構えたり、緊張したりしないで行えます。やっている途中や最後に振り返りをすることで、気持ちや感情を聞き出すことにもなります。振り返りを忘れずに取り入れてください。
<リラックス法②> 体やわらかゲーム(簡易版筋弛緩法)
【準備物】
人数分の椅子
【行い方(主な流れ)】
<説明>
「体を柔らかくして、気持ちもリラックスするゲームをやってみよう。椅子に座ったままできるので楽ちんだよ。」
①肩をおもいきり耳まで上げ、力を入れたまま10秒間止める。
※意識的に緊張感を感じる。
②一気にストンと力を抜く。意識を首や肩に向け、力が抜けて緩む感じをじんわり味わう。
③頭の後ろで手を組み、両肘を前に出す。手の平全体と頭の後ろ側におもいきり力を入れ、背骨にも力を入れる。10秒間そのまま。
④意識的に緊張を感じたら、一気にストンと力を抜く。首・肩・背骨に意識を向け、緩む感じを味わう。
【振り返り】
やってみてどんな感じがした?
・気持ちが良かった
・すっきりした
・体が温かくなった
簡単な体操やストレッチの気持ちで取り組むことで、緊張感を和らげることができます。やっている途中や最後に振り返りをすることで、気持ちや感情を聞き出すことにもなります。忘れずに振り返りを行いましょう。
<リラックス法③>自律訓練ミニゲーム
【準備物】
静かな場所・椅子
【行い方(主な流れ)】
<説明>
「簡単な動きで気持ちがすっきりする運動をしてみよう。」
①自分で気持ちがいいと思うペースで深呼吸をする。
②手を膝の上にのせ、ぼんやりと意識を手の平と足の裏に集中する。
その感触をじんわり感じる。
③「気持ちがとても落ち着くな。両手・両足が重くて温か~い」と4~5回唱える
低学年では、指導者(保護者や教師)がいっしょに唱えるといいでしょう。高学年以上であれば、次の6つのフレーズを使うと、より効果的です。
・手足が重い
・手足が温かい
・心臓が静かに打っている
・楽に呼吸している
・お腹が温かい
・額が心地よく涼しい
④その後、自分の好きな物やこと、場所や色、幸せなシーンなどのイメージを思い浮かべる。
【振り返り】
やってみてどんな感じがした?
・手足が重いと言われたときに、本当に重くなった
・体が少し温かくなった
自律訓練法は、本来はコントロールできない自律神経系を言葉とイメージによって自己コントロール(言語的イメージと受動的集中)し、自律神経系のバランスを回復させるリラクセーション方法です。簡素にすることで、リラックスを目的にして行うことができます。
<ミニトーク>すごろくトーキング
【準備物】
すごろくシート さいころ
【行い方(主な流れ)】
<説明>
「家族みんなですごろくを手作りして、<すごろくトーキング>をしてみよう。マス目の空欄には、好きなお題を書き入れるよ。」
「ルールは2つ! ①答える人が嫌な気持ちになるようなお題は書かない、②パスの権利がある、の2つ。いいかな?」
【お題の例】
「外出自粛が解けたら、最初に行ってみたいところは?」
「〇年生でやってみたい係活動は?」
「どこでもドアがあったらどこに行く?」
お題で質問する内容は、自己開示できるようなもので、会話が弾むものがオススメです。また、「ストレス解消」「イライラしたときにどのようにしたい」など不安や悩みの解消につながるお題を入れるのもよいでしょう。
①すごろくシートを作る。
すごろくのコースは、手書きしたものでOKです。参加者全員でマス目にお題を書き入れます。
②サイコロを振ってマスを進み、とまったマスのお題に回答する。
パスの権利があることを確認します。
③全員がゴールしたら終了(もしくは、決めた時間になったら終了)。
【振り返り】
やってみてどんな感じがしたかな?
・知っていると思っていたけど、分からないことがたくさんあってよかった
・パパのお題が楽しかった
・いろいろ知れてよかった
家族同士であっても言いにくいこともあるので、2つのルールは厳守しましょう。
八巻寛治(やまきかんじ)●元公立小学校教諭。上級教育カウンセラーとして人間関係づくりやコミュニケーション能力の育成,子育ての悩み相談等,ガイダンスカウンセリング等を指導。構成的グループエンカウンター,心ほぐしのミニゲーム等心理的距離の取り方やリレーション(関係性)の創り方を発信している。『心ほぐしの学級ミニゲーム集』(小学館刊)『社会的スキルを育てるミニエクササイズ基礎基本30』(明治図書出版刊)ほか著書多数。
イラスト/設樂みな子・横井智美