小4道徳「日本らしさって何だろう」指導アイデア

大学教員

佐藤幸司

執筆・イラスト/佐賀県公立小学校教諭・佐藤幸規
監修/山形県公立小学校校長・佐藤幸司

授業の概要

1枚の絵から「日本らしさ」について考える

本授業は、一枚の絵を使って日本らしさの「よさ」に気付かせていくことをねらいとしたものです。春(4~5月)に授業をすることを想定して、教材を開発しました。

まず、「どこの国か」を考えさせることで、「日本の証拠(日本らしさ)」を見付けさせていきます。次に、見付けた「日本らしさ」のなかで、「春」にかかわるものに焦点化していきます。

自分の経験を想起させたり、友達の経験に数多く触れさせたりすることで、日本らしさの「よさ」を実感できるようにしていきます。

教材イラスト

教材の活用法と授業のポイント

①日本らしさの「よさ」に気付かせる

本授業では、子供たちの経験を出し合わせるだけでなく、授業を通して次の三つの日本らしさの「よさ」に気付かせていきます。

1 季節が分かるもの
2 長い間続いてきたもの
3 よさがあるもの

②春の日本らしさの「歴史」

授業のなかで、「日本らしさ」が長い間続いてきたものであることに気付かせます。「自分たちの人生(10年)」と「日本らしさの歴史」を紙テープで示すことで、子供たちは「日本らしさ」が長く続いてきたものであることを、より実感できると考えます。

「春」の日本らしさの歴史の一例です。

ひな祭り
奈良時代に中国から伝わったものである。日本では、貴族の女の子の遊びとして始まった。

花見
平安時代に貴族の遊びとして始まり、江戸時代になると庶民の行事となった。

入学式
4月の入学式は、明治時代に文部省の省令として定められた。

端午の節句
鎌倉時代から男の子の節句となり、江戸時代に今のような形(かぶとや武者人形を飾る)となった。こいのぼりをあげるようになったのも江戸時代からである。

教材イラスト

教材イラスト
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実際の授業展開

タイトル
「日本らしさ」って何だろう ~1枚の絵から「日本らしさ」について考える~

指導目標
絵のなかにある「日本らしさ」について考えていくことで、日本らしさにはたくさんの「よさ」があることに気付かせる。また、これまでの経験を出し合うことで、その「よさ」を実感させ、日本らしさに対する愛着を高める。

内容項目
C 伝統と文化の尊重、国や郷土を愛する態度

準備するもの
・イラスト(板書用と児童配付用)
・紙テープ(2色)

指導の概略(板書計画例)

板書計画例
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ここがアクティブ!授業展開の補足説明

導入では、子供たちを黒板の前に集めます。そして、「今から絵を見せますよ。この絵はどこの国でしょうね」と言って、板書提示用の絵を少しずつ見せていきます。

「少しずつ見せる」ことがポイントです。これにより、子供たちは集中して教材を見るようになります。 次に、「日本の証拠」を出し合います。「日本にしかないもの」という厳密な見方をするのではなく、子供たちが「日本の証拠になる」と思えばそれでよいのです。

子供たちは、「ひな祭り」などの目立つ行事以外にも、「日本語が使ってある」「着物を着ている」「神社がある」など、小さなところからたくさんの日本らしさを見付けてきます。 授業の後半では、自分の体験を友達に紹介する時間をつくります。ここではすべての子供が自分の思い出を紹介できるように、班で交流させます。

その後、全体でいろいろな種類の「春の日本らしさ」の思い出を紹介させます。子供たちは、自分のことを思い出したり友達の思い出を聞いたりすることで、日本らしさの「よさ」を実感することができると思います。

授業をするうえでの注意点・ポイント解説

①学習を生活につなげる

子供たちはたくさんの「日本らしさ」に囲まれていますが、ふだんはそのことに気付くことなく生活をしています。そこで、この学習を「日本らしさ」に興味をもたせるきっかけとします。例えば、次のような内容に発展させることができるでしょう。

・生活のなかでの「日本らしさ」見付け
・「日本らしさ」にかかわる思い出見付け
・「日本らしさ」の歴史調べ
・家族にとっての「(春の)日本らしさ」の思い出調べ

②帯単元として、季節ごとに考えさせる

「日本らしさ」は、どの季節にもあるものです。そこで、季節ごとに「日本らしさ」について考えさせることもできます。季節ごとに考えさせれば、子供たちは実際に「日本らしさ」を目にしたり体験したりすることができますし、それがさらなる愛着へとつながっていくはずです。

教科調査官からアドバイス

文部科学省初等中等教育局教育課程課教科調査官・浅見哲也

「道徳科は毎時間がメイク・ドラマ」

道徳科の授業は子供とともにつくり上げるもので、子供が主体となる授業をめざすことが大切です。それはもちろん、すべてを子供に任せるのではなく、教師が指導の明確な意図をもって授業に臨むことが大切です。子供の考えを尊重しながら、教師が子供の考えをうまくかかわらせ、ねらいに迫っていくことが望まれます。

しかしそれは、そう簡単にできるものではありません。教師の想定外の考えが子供から出されると、対応しきれなくなることもよくあることです。 こうならないようにするために、ねらいに迫るルートを決めて、ある程度の発問を用意して授業に臨む計画が、学習指導案です。

授業を見させていただくと、時々教師の目線で気になることがあります。せっかく子供が発言しているのに子供の顔に目線が行かずに、手元に置かれている授業のメモばかりに目が行き、自分のレールで授業を進めようとする姿です。おそらく次の発問のことを考えているのかもしれません。そうなると、ねらいに対して深く考えるきっかけを逃してしまうことも少なくありません。

授業が教師の敷いたレールに子供を乗せて進められれば、教師も安心して授業を進められるでしょう。しかし、道徳科の授業の醍醐味は、子供の素直な気持ちや豊かな発想にちょっとしたスリルを感じながら、教師も子供とともに学び、新たな気付きや変容を感じるところにあります。

そんな醍醐味に楽しさを感じられるゆとりをもって、授業に臨んでみませんか。道徳科は毎時間がメイク・ドラマです。

『教育技術 小三小四』2019年5月号より

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