長期休み明けに困らない「クラスの荒れ」防止策

特集
学級崩壊・学級の荒れ:立て直しからリアルな緊急避難まで

大阪府公立小学校教諭

岡本美穂

長期の休み明け、落ち着かない子供たちの生活リズムを元に戻すために、学級経営や授業をどのように工夫すればよいのでしょうか。ベテラン教師のアイデアを紹介します。

監修/大阪府公立小学校教諭・岡本美穂

GW明けに困らない「クラスの荒れ」防止策
写真AC

「荒れ」防止策

信頼関係を築き、子供とつながる

荒れを防ぎ、一学期を落ち着いて過ごすためのポイントは、子供と信頼関係を築き、子供たちとつながることです。休み明けはできるだけ子供たちと話をしたり、一緒に遊んだりしながら、少しずつ個々の関係を太くしていきましょう。

特に扱いの難しい子とは積極的に触れ合う機会を増やし、お互いの関係を意識的につくるようにしたいものです。

また一学期の間は、教師自身も子供に判断されていることを忘れてはいけません。「この先生はどんな先生なのか?」「自分たちの話を聞いてくれる人なのか?」「よい先生なのか?」ということを判断しているのです。お互いの信頼関係ができるまでは、一方的な指導や厳しい指導は控えめにしたほうがよいでしょう。

【子供とつながるために効果的なこと】
①一対一で話す機会をつくる。
②最初のうちは、登校時間に教室で待つ(そうすることで話す機会が生まれ、子供たちの様子を見ることができる)。
③ノートのコメントでつながる。

一学期に心がけたい3か条

荒れを防ぐため、心がけたいことの3か条は
1. 分かりやすい授業
2. 子供を理解し、ほめる機会を増やす
3. 子供をやる気にさせる工夫をする

1. 分かりやすい授業

授業に慣れるまでは、各教科で「最初はこれで始めます」と断言しなくても子供たちが見通しをもてるように、授業をルーティーン化・パターン化していく必要性があります。

パターンを覚え、そこから安心して授業に向かえるようにしていきましょう。例えば、

①国語通信を読む
②それについての感想を何人かに当てる
③今日のめあてを確認
④音読
⑤話合い
⑥ふり返り(ノートに書く)

これはあくまでも一例ですが、見通しがもてると子供も安心して授業に臨めるため、無駄に叱ることが減ってきます。自分で考え、自主的に行動させることは大事ですが、わざわざ子供たちが困惑しなくてよいところで困惑させてしまっている場面をたまに見ることがあります。

この時期に叱って改善させようとしても、状況はよくなりません。

1. 分かりやすい授業

2. 子供を理解し、ほめる機会を増やす

子供を理解するポイント①
子供の話に耳を傾ける

中学年では、「頭ごなしに叱ること」は本当にやめなければいけません。教師にゆとりがなく、忙しくバタバタしている時期が危険です。

気になる行動があれば、子供と向き合える落ち着いた場所に行き、じっくりと話を聞くこと。それが子供自身の発散にもつながります。おかしいなと感じたことは冷静に尋ねましょう。教師がよし悪しを決めるよりも、どうしてこの行動をとったのか、子供を理解しようとすることが大切です。

子供を理解するポイント②
教師の価値観で子供を追いつめない

ときに教師の正義感が子供を苦しめてしまうことがあります。教師の価値観のみで判断しないことです。教師に正しいことだけを主張されると、子供は逃げ場がなくなり苦しくなります。

悪いことを正そうと子供を追いつめるのではなく、子供が「変わりたい」と思えるかどうかがとても大切なことなのです。

ほめるポイント①
結果だけでほめない

子供をほめるときには、結果よりもそれまでの努力をほめるようにしましょう。

例えば、「80点だったけど、今までで一番勉強していたね。よくがんばったね」とそれまでの過程をほめるのです。失敗しても、その子供の成長を見ることができたのであれば、嬉しいものです。その教師の「嬉しさ」や「感激」を伝えることがほめるということになるのです。

ほめるポイント②
具体的にタイミングよくほめる

何気なくほめてあげても効果はありません。具体的にほめましょう。

「何日前の君とは、〇〇〇が違う」と具体的な変化をほめるのです。またほめる「タイミング」も工夫しましょう。みんなの前でほめたほうがよい場合と、後でこっそり個人的にほめたほうがよい場合があります。学級通信で伝えるのも一つの方法です。喜びを間接的なメッセージで伝えることもほめることにつながります。

ほめるポイント③
担任以外にほめてもらう

子供は保護者にもほめられたいものです。保護者の方と偶然出会う機会があったら、「○○さん、最近前にも増して、特に算数で手をあげることをがんばっていて、嬉しいです」などと具体的に、子供のよいこと、がんばっていることを伝えるようにしましょう。きっと保護者の方は子供にそのことを伝えてくれるでしょう。

2. 子供を理解し、ほめる機会を増やす

3. 子供をやる気にさせる工夫をする

次のようなことを意識しながら授業を行うとよいでしょう。

●成長を常に見える化できる取り組み
「百ます計算」など、成長が目に見えて分かりやすい取り組みは子供のやる気を引き出します。基礎計算は一学期からどんどんやっていくとよいでしょう。

●ていねいなノート指導
4月から5月は板書をきっちり写すことを目標に、ていねいなノートづくりに励みます。

●手をあげたくなる発問
授業では全員が手をあげられるような発問をできるだけ多く行い、手をあげて発表するのが楽しいと思えるような授業づくりにします。

3. 子供をやる気にさせる工夫をする

荒れてきたときの対応

靴を揃え、机の中を整理整頓

学級の乱れ・トラブルはまず忘れ物の増加に表れます。心が乱れ、そして生活態度が乱れていくのです。乱れ始めてきたと感じたら、何かを揃えてみましょう。

まずは靴箱です。最初に教師が靴を揃えている姿を見せましょう。

次に机の中の整理整頓です。お道具箱を机上に置かせてみてください。忘れ物の多い子供の机の中は、ぐちゃぐちゃになっているはずです。特にプリントがめちゃくちゃに押し詰められていませんか?

忘れ物が多いと、つい「連絡帳をチェックしよう」「厳しく対処しよう」などと考えるかもしれません。私も新任の頃、忘れ物チェック表を作るなどして管理的な試みをしたことがありました。しかしそれは、対処方法であって、解決方法にはなりません。

まずは身の回りの整頓から始めていくことです。すると、生活態度に落ち着きが生まれ、忘れ物も減ってくるはずです。忙しい時期こそ、日常を大切にしましょう。穏やかな日常があるからこそ、安心して毎日を過ごすことができるのです。

バタバタしているなと思ったら、一息入れて教室を見回してみることです。その際先生の机の上も確認してみてください。案外一番ぐちゃぐちゃになっていたりするものです。

何気ない話にもプラスの言葉がけ

普段子供たちは朝登校してから下校するまでに、たくさんの言葉を担任に与えてくれます。しかし、朝の忙しい時間に子供が自分の話をしようとすると、

「忙しいから、ごめん、また後でね」

などと言ってしまうことがありませんか? 実はこうした雑な対応が荒れにつながります。逆にこの対応をていねいにすることで、子供たちとつながることができ、荒れも少しずつ収まります。

例えば何気ない話であっても、必ずプラスの言葉がけをしましょう。

「楽しいね」「嬉しそうだね」「キラッキラだね」「幸せだね」「ありがとうね」…。このような温かい教師からの言葉がけで会話を終えるようにします。すると子供の心はじんわり温かくなります。

子供だからと下に見るのではなく、一人の人間として向かい合うことが大切ではないでしょうか。人の心は言葉でつながっていくものです。

教師主導で漢字と計算をする

クラスが落ち着かないなと感じたら、教師主導で漢字と計算に力を入れるとよいでしょう。チャイムが鳴ったらすぐに、フラッシュカードや新出漢字練習をテンポよくやり始めるのです。特に計算は毎日の積み重ねが成果として表れやすいので、計画を立ててきちんと行いましょう。

私の学年では 算数の授業で冒頭の5分を使い、①百ますかけ算10日間 ②百ますたし算10日間 ③百ますひき算10日間 ④わり算を行うことにしています。単純ですが計算力が付き、そのおかげで自信が付き、自己肯定感につながるというよい循環が生まれます。

チャイム着席できていない子供をだらだらと叱るよりも、先に準備して座っている子供たちが楽しく、賢くなる方法を試してみましょう。

叱られるから時間を守るのではなく、「きっちり時間を守ることが自分のためになる」ことが伝わるのが理想です。

教師主導で漢字と計算をする

人間関係のトラブルとその対応策

この時期の子供たちの特徴

中学年になると、「なんでも自分でできるぞ」という気持ちになり、行動的になってきます。そして、今まで教師にも友達にも柔順だった子が、反発したり、強く自己主張したりすることがあります。

また、「ギャングエイジ」と呼ばれるこの時期は急に仲間を求め、友達付き合いも増え、集団で行動することも多くなり、仲間意識が一段と強まる時期。友達も単に数が増えるだけでなく、異年齢や異性の友達へと広がる重要な節目でもあり、さまざまな集団に属する喜びやルールも身に付けていきます。ただ判断力はまだまだ甘く、暴走しがちなので、手は離しても目は離せない時期です。

起こりやすいトラブルと対応策

自我が強くなり、今までは我慢できていたことも、我慢できなくなり、トラブルが増えてきます。不満が溜まり、我慢の限界を超えると、それまで仲のよかった友達とも距離を置くようになります。

結果、ポツンと取り残されていく子供が出てしまい、その子が仲間外れやいじめのターゲットになってしまうことがあります。

対応策としてはまず、いじめは許さないという態度を教師がとること。そのうえで、不満が溜まっている子供の話もていねいに聞くようにしましょう。どちらかが悪いと決め付けたり、とりあえず謝らせる、といったうわべだけの対応で終わらせたりしないように気を付けましょう。

女子同士のトラブルの場合、子供は「先生はどちらの味方なのか」という見方をしてくるので、まず先生は聞き役に徹することが肝心。

そのうえで、その子供の言葉を同じように繰り返しながら、子供の考え、思いを整理する役目を意識しましょう。

保護者に対しては、「女子のもめごとは大事だ」ということを強く伝えておきましょう。保護者も子供と一緒になって自分も傷つけられていると感じているケースが多いので、保護者の気持ちもフォローしながら、事実関係を客観的に伝えるようにしましょう。

起こりやすいトラブルと対応策

岡本美穂●「学力の基礎をきたえどの子も伸ばす研究会(学力研)」の若きリーダーとして、「キラッキラッな子供たちの姿」を追い求めた学級経営を実践。著書に『子どもの力を引き出す板書・ノート指導の基本とアイデア』、『学び合い、支え合い、高め合い「あいの力」で子どものやる気を引き出す授業術』(ともにナツメ社)などがある。

取材・文/出浦文絵 イラスト/宇和島太郎

『教育技術 小三小四』2020年4/5月号より

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