小4国語科「十年後のわたしへ」 板書例&全時間の指導アイデア
文部科学省教科調査官の監修のもと、令和6年度からの新教材、小4国語科「十年後のわたしへ」(東京書籍)の板書例、発問例、想定される児童の発言、1人1台端末活用のポイント等を示した全時間の授業実践例を紹介します。

監修/文部科学省教科調査官・大塚健太郎
編集委員/熊本大学大学院教育学研究科准教授・北川雅浩
執筆/熊本県熊本市立黒髪小学校・溝上剛道
目次
1. 単元で身に付けたい資質・能力
この単元では、一年間に書いた文章を読み返し、自分や友達の文章のよいところを確かめながら、書き手としての自分の成長や特徴に気付くことを目指します。その上で、未来の自分に向けて、これからも大切にしていきたい言葉の力、もっと伸ばしていきたい言葉の力を見出せるようにしていきます。
2. 単元の評価規準

3. 言語活動とその特徴
(1)二つの言語活動 ―「文集づくり」と「未来への手紙」―
単元名「十年後のわたしへ」からは、“未来の自分へ手紙を書く活動”に注目しがちですが、教科書構成をよく見ると、
① 一年間に書いた文章を読み直して文集としてまとめる活動
② 十年後の自分に手紙を書く活動
という二つの言語活動が段階的に設定されています。
①の「文集づくり」は、②に向けた単なる下準備ではなく、「文章のよいところを確かめる」という言葉の力を育てる中心的な活動です。
その上で、②の「未来への手紙」は、①で振り返った言葉の力を生かして書く「活用」として位置付けると、単元全体の流れが明確になります。
このように、「文集(振り返り) → 手紙(活用)」という二段構成になっていることが本単元の大きな特徴であり、両者の関係を踏まえて単元を構想することが重要になります。
(2)「文集づくり」で“言葉の力”を見える化する
文集づくりでは、一年間の書く経験の中で身に付いてきた「どんな書き方ができるようになったか」「どんな工夫をして書いてきたか」といった視点を、過去の文章を読み返す中で確かめます。4年生で学んだ言葉の力には、
- 段落どうしのまとまりを考えて書く(わたしのクラスの「生き物図かん」)
- 組み立てを工夫して書く(山場のある物語を書こう)
- 相手や目的を考えて書く(お願いやお礼の手紙を書こう)
- 材料を整理して書く(「和と洋新聞」を作ろう)
- 理由をぎんみして考えを書く(自分なら、どちらを選ぶか)
など、多様な内容があります。これらを視点として、「伝え合うことの例」として示されているように
- よく書けた文章や、書いて楽しかったと思う文章
- 文章を書くときに、気を付けたところやくふうしたところ
- 学習を通して、しっかり書けるようになったと思うところ
などを伝え合い、それらを付箋紙や1人1台端末のコメント機能で残していくことで、「文集づくり」が協働的に既習事項を再認識する活動になります。
(3)未来への手紙に生かす ― “選んで使う” 活用の場として
②の「未来の自分への手紙」に進むときは、文集づくりでの気付きをそのまま写すのではなく、自分が未来に届けたい書き方を“選んで組み立てる”ことを大切にします。
例えば、
・相手や目的を考えて書く(お願いやお礼の手紙を書こう)を生かして
→「未来の自分に伝えたい気持ち」を言葉にする
・理由をぎんみして考えを書く(自分なら、どちらを選ぶか)を生かして
→「なぜその願いを未来の自分に託すのか」を書く
・段落どうしのまとまりを考えて書く(わたしのクラスの「生き物図かん」)を生かして
→内容を整理し、読みやすい構成にする
など、4年生で身に付けた書き方を、手紙という文種に合う形で選択的に取り入れていきます。
逆に言うと、手紙という文種には生かしにくい「言葉の力」もあるということです。ここでのポイントは、「全部使う」ではなく「適切に選んで使う」という点にあります。
目的に応じた“選択的活用”によって、4年生の学習を整理・統合する言語活動として働くようにすることを大切にしたいところです。
4. 指導のアイデア
(1)“タグ付け&シェア”で、言葉の力を協働的に見える化する
文集づくりは、手紙づくりの単なる前段ではなく、4年生の「書くこと」の学びを自覚する中心的な活動です。
ここでは、子供が一年間の文章を読み返し、その中にある書き方の工夫に気付けるような“気付きの場”をつくることが大切になります。
まず、自分と友達の文章の中から数本を選び、次のようなタグ(#)を付けながら読んでいきます。
#段落のまとまり …「ここで話題が 1 回まとまっているのが読みやすいよ」
#組み立ての工夫 …「山場がはっきりしていて、続きが読みたくなる!」
#相手や目的を考えて …「相手に伝えたい気持ちがていねいに書いてあるね」
#理由を書く …「“なぜそう思うか”が書いてあって分かりやすい」
このように、学習してきた書き方そのものをタグ化し、短いコメントとセットにして共有し合うことで、子供同士の自然な「気付き」が“言葉の力”と結びいていきます。
さらに、友達の文章も文集候補として推薦し合う場を設けることで、多様な書き方の価値を協働的に見える化する活動になります。
なお、最終的な成果物については、学級の実態やデジタル・アナログの活用状況等に応じて以下の2パターンから選ぶとよいでしょう。
(ア)学級全体で一つのものを作る「学級文集」形式
全員の作品を綴って、学級全体で同じ文集を作り上げます。デジタル・アナログどちらでも作成可能です。
ただし、アナログ版だと年間全ての文章を綴じるのはページ数が多くなりすぎるため、一人一作品程度ずつのページ構成が現実的かと思います。
(イ)個々で別々のものを作る「マイ文集」形式
こちらのパターンは、デジタル作成を前提としています。例えば、ロイロノートを活用するならば、「提出箱」に各自がおすすめの「#&コメント付き文章」をアップし、そこから各自で文集に入れたいものを「使う」ボタンで選択してカードを繋げば、オリジナル文集が作成できます。
活動のオプションとして、各自が「なぜそれを選んだのか」「なぜその順番にしたのか」という編纂の意図を「編集後記」として書くことで、文集づくりの活動の中に学習の振り返りを組み込むことも可能です。
この記事では、(イ)のマイ文集を作るパターンの単元計画を紹介します。
(2)“選んで使う”書き方のプロセスをモデリングする
①「#」の分類・整理
文集づくりで見つけた気付きを、手紙にそのまま写すのではなく、「どの書き方を未来の自分に届けたいか」を選ぶプロセスが次の学習になります。
そのために、まずはクラス全体で「活用したい#(言葉の力)リスト」をつくります。文集で多く付けられたタグや、子供が「未来の自分に伝えるのに使えそう」と判断したタグを整理し、手紙づくりの“よりどころ”にします。
②「手紙の例」のタグ付け
①で「活用したい#(言葉の力)リスト」を整理できたら、教科書の「手紙の例」を照合しながら「#相手や目的を考えて」「#理由を書く」「#段落のまとまり」などのタグを付けていきます。
この分析は、手紙の“完成形”を見る活動ではなく、「どう書けばよいか」という思考プロセスをみんなでモデル化する場です。必要に応じて、子供とともに新しい手紙例を作ってみるのもよいでしょう。
完成品を示すよりも、書く途中の試行錯誤を共有する方が、手紙づくりの学びに直結します。
(3)「読み返す→気付く→選ぶ→書く」をつなぐ ICT の活用
端末活用は、単なる作業の効率化のためではなく、「読み返す → 気付く → 選ぶ → 書く」という学習プロセスの“橋渡し”として働くように設計します。
● 文集づくりで
・文章の共有とタグ付け(#段落のまとまり、#理由を書く など)
・コメントで気付きをシェア
● 手紙を書くときに
・「活用したい#リスト」の即時共有と更新
・書きながら自分でタグ付けして推敲
● 単元をまとめるときに
・完成した手紙に最終タグを付け、「選んで使った書き方」を可視化
・文集と手紙を同じフォルダに保存し、ポートフォリオ化
※ これらのICT 活用はすべて行う必要はありません。例えば「タグ付け」は、付箋紙などを活用すればアナログでもできます。学級の実態や活用経験に応じて、より学習効果が高まる形で取り入れることが大切です。
5. 単元の展開(7時間扱い)
単元名: 十年後のわたしへ
【主な学習活動】
・第一次(1時、2時、3時)文集づくりで言葉の力を見える化する
① 4年生の書く学習を振り返り、どんな文集・手紙にしたいかを考える。
② 自分と友達の文章を読み返し、タグ・コメントを付ける。〈 端末活用(1)〉
③ 互いの文章を推薦し合い、「#言葉の力」を分類・整理して文集をまとめる。〈 端末活用(2)〉
・第二次(4時、5時、6時)言葉の力を活用し、手紙を書く
④ 自分の手紙で伝えたいことを再考し、活用できそうな「#」を考える。〈 端末活用(3)〉
⑤ 十年後の自分に向けた手紙を書く。〈 端末活用(4)〉
⑥ 十年後の自分に向けた手紙を仕上げる。
・第三次(7時)単元を振り返る
⑦ タイムカプセルを完成させ、これからさらに付けたい言葉の力を考える。
全時間の板書例、発問例、想定される児童の発言例
● 4年生の書く学習を振り返り、どんな文集・手紙にしたいかを考える
イラスト/横井智美
令和6年度からの国語科新教材を使った授業アイデア、続々公開中です!


