方法知優先の教科も表形式にすると、観点が見えやすい【次期学習指導要領「改訂への道」#30】

前回は、中央教育審議会の総則・評価特別部会で副主査を務める京都大学の石井英真准教授に、現行学習指導要領の課題と次期学習指導要領の重点化、表形式化の関係などについてお話を伺いました。今回は、その表形式化で数学と国語の2つの表形式が示されている意味や、それを活用することが、現在、学校が抱えている単元・授業づくりの課題を解決することなどについて伺っていきます。
目次
方法知では「知識及び技能」の上に「思考力、判断力、表現力等」が平行にある
教科には内容知優先の教科(算数・数学や理科、社会など)と方法知優先の教科(国語や英語など)がありますが、算数・数学のような内容知優先の教科であれば、「知識及び技能」と「思考力、判断力、表現力等」の対応関係が比較的見えやすいですし、教材研究や授業づくりにおいて、縦のスパイラルな系統性をつかむことが大事です。それを並列に表形式化しています(資料1参照)。
資料1

その学習指導要領を、どのように使いながら思考を誘導するかということですが、内容知優先の教科の場合は、大きな問いや大きな内容(中核的な概念)を扱いながら個別の知識などについてはすべてを扱う必要はなく、必要に応じて選択的に行ってもよいという思考を促すことが重要です。
それに対し、国語や英語のような方法知優先の教科では、「知識・技能」と「思考・判断・表現」とが学習活動においてどう絡み合っていくのかが見えにくかったと言えます。表形式に整理する際、内容知優先の教科と表形式化が異なり、「思考力、判断力、表現力等」と「知識及び技能」が上下平行に示されているのは、土台となる知識及び技能を吸い上げていくというイメージがあるからです(資料2参照)。
資料2

例えば、バスケットボールで例えるなら、完全にドリブルやシュートが非常に上手になってから試合を行うということはないはずです。そこそこできるようになったら試合をしてみるでしょう。試合をすることで「ああ、こんな技能が不足している」と気付けば、それを各自が練習していくわけです。そのような試合に当たる大きな活動がないと、基礎的な知識や技能もなかなか上がっていきません。
ですから、学習指導要領の国語の例でも、「知識及び技能」の上に「思考力、判断力、表現力等」が平行にあるわけで、活用する場面を通して基盤となる知識及び技能(読みの視点や方略)を吸い上げて読みを豊かにしていくイメージで、そのような授業が展開されることが期待されています。
