ページの本文です

4月から11月初旬までの、夏休みを除いて半年間に渡る大単元【「高校につながる英・数・国」の授業づくり #56】

連載
全国優秀教師にインタビュー! 中学校編 中1〜中3を見通す! 「高校につながる英・数・国」の授業づくり
4月から11月初旬までの、夏休みを除いて半年間に渡る大単元【「高校につながる英・数・国」の授業づくり #56】バナー

前回は、元文部科学省視学官の直山木綿子教授(関西外国語大学)が、その単元構成力と授業力を高く評価する、長野県木曽町立日義小中学校・佐藤広基教諭の英語のオリジナル単元の実践事例を紹介しました。実はこの単元は半年を超える大単元の一部なのですが、今回はそのような大単元を構想した意図や佐藤教諭の教育観などについて紹介していきます。

長野県木曽町立日義小中学校
佐藤広基 教諭
長野県木曽町立日義小中学校
佐藤広基 教諭

単元構想の基盤には、総合的な学習の時間にも近い学びのイメージがある

佐藤教諭は、「地域活性化に寄与したい」という子供たちの思いを実現するため、外国人観光客とのコミュニケーションを図りながら効果的な地域の紹介をめざしていくという、夏休みを除いて半年間に渡る大単元を構想し、授業を進めてきました。佐藤教諭はまず、その構想の経緯や意図について次のように説明します(資料)。

資料 大単元計画

資料 大単元計画

「近年の少子化により、日義中学校は来年度には統合されてしまうのですが、『でも日義って魅力的な場所だよね』という思いが子供たちの中にあります。子供たちの日常体験は日義という地域に根差したもので、多様な地域の方にサポートしてもらいながら生活をしてきていますから、そのような思いをもつのは当然のことでしょう。

実際に、子供たちは今回の閉校を受け、例えば文化祭などの行事の機会にも『地域とのつながりをもっと強くもちたい』という思いを表していました。ですから、私も英語の授業でも子供たちのやりたいことにつなげてあげられないかと考え、『地域とつながるにはどうしたらよいか』を考え、『子供たちがいろんな人とつながることは地域活性化につながる』ということから今年度の大単元を構想していったのです。

その中で、子供たちが思う『この地域のよさ』をより多くの人に伝えていこうということで、『では誰に伝えるの?』と考えると、『近年、増加している外国人観光客に』となるわけです。しかし、外国人観光客は、木曽町内の木曽福島駅周辺から奈良井宿の方に日義地域を飛ばして行ってしまう事実があります。そこで、『日義の魅力を伝えて外国人観光客に来てもらえれば、地域が活性化するんじゃないかな?』『では日義に来てもらうにはどうしたらよいかな?』と考えながら、英語を使っていくような大単元を考えていきました」

そのような構想のもと、4月から11月初旬までの、夏休みを除いて半年間に渡る大単元を構想していったと言います。

「最終的に外国人観光客と日義についての話ができたらいいなという思いがあって、大きな単元を構想していったわけですが、当初は会話をするというよりも、地域紹介のためにパンフレットを示しながら説明をしていくスピーチという感じで、大単元のGoalをイメージしていたのです。

しかし、その動機付けをしていくための小単元を進めていくうちに、『こちらから紹介するだけでは相手に興味をもってもらえない』という課題が見えてきました。そこで、相手の外国人観光客はどんな人でどんなことに興味があるのかということを聞き出しながら、その人たちに合わせた情報を提供する方向、よりインタラクティブな対話を通した案内へと大単元のGoalを変えてきたのです」

このような単元構想の基盤には、総合的な学習の時間にも近い学びのイメージがあるように思いますが、それについて佐藤教諭は次のように話します。

「指導にも来てくださっている直山先生が言われる、『リアルなシチュエーション』を生み出すには、子供が抱える思いと目の前の現実とを絡め、そこに教科の内容を入れていくのがよいかなと思いました。それがあれば、子供たちは自ら学び、自ら他者とコミュニケーションを図ることができるからです」

子供たちのコミュニケーションの様子を見とる直山教授。
子供たちのコミュニケーションの様子を見とる直山教授。

子供たちには、主体的に「多様な人とコミュニケーションを図ろう」と思える人になってほしい

この記事をシェアしよう!

フッターです。