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「集まる意味のある学校」になっていますか?【赤坂真二「チーム学校」への挑戦 #72】

連載
赤坂真二の「チーム学校」への挑戦 ~学校の組織力と教育力を高めるリーダーシップ~

上越教育大学教職大学院教授

赤坂真二
チーム学校への挑戦

執筆/上越教育大学教職大学院教授・赤坂真二

コロナ禍を経てオンライン学習が普及した今、改めて問われる「学校に集まる意味」。子どもたちが自宅で学習できる環境が整いつつある中、学校という場所に集う価値とは何でしょうか。今回は赤坂真二先生が、多様な他者との出会いや集団での学び、安心感や帰属意識など、学校ならではの教育機能について深く考察します。一方で職場の孤独感が過去最高レベルに達している現代、教職員自身も「集まる意味」を見失いがちです。校長のリーダーシップと職員との価値観共有の重要性とは?

学校に集う意味を問う

「集まる意味のある学校」になっていますか? この問いは、コロナ禍を経てオンライン学習やリモートワークが急速に普及した現代社会において、改めて問われるようになりました。子どもたちが自宅で学習できる環境が整いつつある今、「学校」という場所に集まる意味や価値を、以前にも増して深く考え直す必要が出てきているように思います。その中で、学校のリーダーである校長が「学校に集まって学ぶ意味」をどれほど明確に捉え、そしてそれを職員とどのように共有しているかは、学校全体の教育活動の質や方向性を大きく左右するのではないでしょうか。

集団の教育機能については、個人の欲求を充足させる一方で、抑制するなどの耐性を学ぶ、社会的関係を結びながら協力して集団や社会を発展させる力を育成する、認知能力と情意能力を洗練すること、また、個人の個性の自覚やその伸長に加え短所、欠点の修正などの働きがあることが指摘されてきました(長谷川、2008)*1。個が育つために集団は重要な働きをしていると言えます。こうした視点を踏まえて学校に「集う意味」を考えてみましょう。

学校に集まって学ぶことには、単なる知識の伝達を超えた多様な価値があります。まず第一に、「多様な他者との出会い」が挙げられるでしょう。家庭や個人の学習では得られない、異なる価値観や背景を持つ友人や先生との交流を通して、子どもたちは「自分とは違う考え方」や「他者を尊重する態度」を身につけていきます。これは、将来社会で生きていくための土台となる「社会性」の育成には欠かせません。

また、「集団の中での学び」は、協調性やリーダーシップ、コミュニケーション能力など、知識や技能以外の「非認知能力」を育てる場でもあります。グループワークや発表、部活動などを通して、子どもたちは自分の意見を伝えたり、他者の考えを受け入れたりする経験を重ねていきます。

さらに、「安心感や帰属意識」も学校ならではの大きな価値です。子どもたちは「自分の居場所がある」と感じることで、安心して学びや挑戦に取り組むことができます。失敗しても受け入れてもらえる環境があるからこそ、子どもたちは思い切って新しいことに挑戦できるのです。

学級システムは、「同じ年に同じ地域に住んでいる子どもたちを一か所に集める」という制約が批判されることもありますが、国が求める多様な他者との協働の基盤を学ぶ場として、その制限された環境であるからこそ意味があるのかもしれません。気の合う人とだけ一緒にいたら、適応感は高まりやすいかもしれませんが、折り合いをつける力や社会性などはそれだけ限定されたものになるからです。

 校長の役割と職員との共有

こうした「学校に集まって学ぶ意味」を、校長先生がどれだけ深く理解し、職員と共有できているかは、学校の教育活動に大きく影響することでしょう。校長先生が明確なビジョンを持ち、それを言葉や行動で示すことで、職員一人ひとりが「なぜこの活動をするのか」「どんな力を子どもたちに育てたいのか」といった根本的な問いを持ちながら日々の実践に取り組むことができます。

例えば、朝の職員会議や研修の場で、「学校に集まる意味」について職員同士で意見を交換したり、具体的な事例を共有したりすることはとても有意義だと思われます。ある学校では、定期的に「子どもたちが学校でどんな成長を見せているか」を職員全員で共有する時間を設けています。そうすることで、職員全体の意識が高まり、共通の目標に向かって一体感を持って取り組むことができるのではないでしょうか。

職員が「学校に集まって学ぶ意味」を共有する際には、以下のような視点が考えられます。

1. 教室は、子どもたち一人ひとりの多様性を認め合う場であること

2. 集団の中でしか育たない力(社会性・協調性・リーダーシップなど)があること

3. 安心して挑戦できる「居場所」としての役割があること

4. 知識だけでなく「生きる力」を育むことが学校の使命であること

5. 失敗や葛藤も成長の糧と捉え、支え合う文化が大切であること

コロナ禍や働き方改革によるカリキュラム変更によって教科指導の時数が強調されるカリキュラム設計となった今、学校とは単なる教科などの学力をつけるだけの場所ではなく、子どもの人間形成の場であることの確認をいちいちしなくてならない状況になっているのではないでしょうか。これらの視点を職員全体で共有することで、日々の授業や学校行事、生活指導においても「なぜこの活動が必要なのか」「どうすれば子どもたちの成長につながるのか」を常に考え続けることができるでしょう。

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