1コマ40分授業午前5時間制を採用する東京都目黒区 【次期学習指導要領「改訂への道」#19】

今回の学習指導要領改訂の審議では、学校や教育委員会が、地域の子供たちの実態に合わせて教育課程を編成し、教育の質の向上を図るための裁量の拡大についても議論がなされてきています。特に第4回の教育課程企画特別部会では、そのような先行実践事例として、東京都渋谷区、埼玉県久喜市、東京都目黒区、滋賀県愛荘町の実践事例が紹介されました。
いずれもすばらしい取組だと評価をされていましたが、特に目黒区教育委員会が文部科学省の研究指定を受けて行っている、1単位時間=40分授業、午前5時間制は、諮問文にもある「余白」という点も含め、大きなインパクトを与えたのではないでしょうか。そこで、今回からは目黒区における、40分授業午前5時間制の実践研究の具体や、実際の学校現場の様子、さらに成果と今後の取組などについてレポートしていきます。
目次
年間約127コマの「余白」を活用して多様な取組を

古くは、2002年度の中目黒小学校での取組に始まり、2019年度からは文部科学省の研究指定を受け、区内の多数の学校で40分授業を軸にした研究を続けてきた目黒区。2024年度からは、研究指定の延長を申請し、さらに実践校を増やしながら取り組んできています。その概要について、同区教育委員会の佐藤泰之統括指導主事は次のように説明します。
「本区における、1単位時間(以下、1コマ)40分授業午前5時間制というのは、平成14(2002)年度の中目黒小学校から始まりました。この取組は平成30(2018)年度まで継続されていましたが、当時の中目黒小学校での実践は、40/45分=8/9コマの授業時数で計算していました。中目黒小学校が導入した当時は、学力の基礎基本の確実な定着を図ることを目指しており、帯時間で算数の計算力の育成や国語の漢字習得などに取り組んでいました。あるいは、1/9コマ分をまとめて、例えば各教科で発表の時間を多く取るとか、体育ではゲームをより多く行うといったような取組もしており、それはどれも意味のあることだと思っています。
ちなみに、この1コマ40分授業は現行学習指導要領上、どこでも行うことができ、近隣では例えば横浜市内の複数の学校が導入していますが、それは(当時の中目黒小学校同様に)1コマ=8/9時間でカウントするものです。
それに対し、令和元(2019)年度から本区で行ってきている取組は、文部科学省の研究開発指定を受け、40分=1コマで計算をしています。この研究に取り組む区内の小学校は次第に増え(2024年度より研究指定を延長)、本年度は全22校で実施となっています。中学校では、令和6(2024)年度から9校中2校で、今年度からは統合によって7校になったのですが、そのうち4校で45分授業を実施しています。
ちなみに本区での研究開発学校としての取組は、学校教育法施行規則の51条に示されている、「…総授業時数は、別表第一に定める授業時数を標準とする」に関するものです(中学校は73条)。
この研究で、1コマを45分から40分にすることが可能になったのは、授業改善を教員が熱心に取り組んできたことによるものだと考えています。また、GIGAスクール構想実現に向けた学習用情報端末の貸与も大きな理由です。指導内容はそのままで、端末を使って子供たちが主体の学習とすることによって自己調整力を育むなど、よりよい授業にしていけているということが時代に合った形になっているのではないかと思います。
本区では、先にも説明した通り、1コマ=40分で計算をしていますので、小学校第4学年以上でいうと、年間5分×1015コマ=5075分の『余白』の時間が生み出されます。これを1コマ40分で割ると、単純計算で年間約127コマとなり、この時間を活用して各学校が多様な取組をしています(資料1参照)」
【資料1】目黒区の教育課程の特徴(教育課程企画特別部会発表資料より抜粋、以下同)
