小学生の頃の思い出|長谷川義史さん(絵本作家)インタビュー
雑誌『教育技術 小一小二/小三小四/小五小六』では、月替わりで人気の高い絵本作家に表紙用のイラストの作画をお願いしています。本コーナーでは、その絵本作家さんに、小学生の頃の思い出を綴っていただきます。今回は、2020年3月号のイラストを担当していただい長谷川義史さんです。
目次
なんにも覚えていない卒業式の日のこと、覚えているのは…
なんにも覚えてないなあ…… 卒業式の日のこと。なんで覚えてないんやろ、そうかわかった。好きな女の子がいなかったんや。そうや、だから覚えてないんや。いや、いたいた好きな女の子。それやのに覚えてない卒業式の日のこと。男子はアホやなあ、いや僕がアホなんか。
覚えているのは先生に最後に教室で言われたこと。
「卒業しても、若い間は同窓会なんぞしたらあかん」というひと言。先生がおっしゃるには、これから前を向いて進んでいかなあかんと。そんな大事なときにああ懐かしい、などと後ろを振り返って感慨に浸っている場合ではない。同窓会するときはおじいさんおばあさんになってからやと、そのようなことやった。
僕は子ども心にも、その通りやと思った。
それからはその先生の教えを胸に同窓会とやらには出席せずに今日に至っている。
蘇ったあの日の思い出
ところが一昨年、僕の故郷で絵本の講演会みたいなことをさせていただいた。するとどこから聞きつけてくれたのか、当日その会場に小学校の頃の同級生が8人ほど来てくれ、控え室に顔を出してくれた。
顔を見て名前を思い出し、あの日が蘇った。
卒業式の日のあの日の同級生にまた再会するのもいいもんやなあと思った。そろそろ同窓会にも行こうかなあ。
いやいや、まだまだもうちょっとおじいちゃんになるまで、それはお預けとしよう。
長谷川 義史(はせがわ・よしふみ)
イラストレーター、絵本作家。『ぼくがラーメンたべてるとき』(教育画劇)で小学館児童出版文化賞、日本絵本賞の同時受賞など、絵本の受賞歴多数。近著に『おならまんざい』(小学館)や、このエッセイでも登場した小学校時代の恩師を描いた『おおにしせんせい』(講談社)など。
『教育技術』2020年3月号より