修了式の日|クラスに言葉が染み渡る素敵な幕引きを
進級する子どもたちへ向けて、先生が最後にしてあげられることは何か。学級仕舞いのあり方について、 山形県公立小学校校長・佐藤幸司先生が教えてくれました。
執筆/山形県公立小学校校長・佐藤幸司
目次
自分だけの言葉を
どんな洒落た言葉よりも、ほんのささいな一言がずっと心に残ることがあります。それは、どんなお店の料理よりも、幼い頃に母が作ってくれたあの料理が、今も心に残っている景色に似ています。
格言や諺が、これから進むべき道を示唆してくれることもあります。各分野での「成功者」と言われる著名人の言葉に、「なるほど!」と納得させられることもあります。
けれども、それらは、結局は自分ではない誰かの言葉です。自分にとっての座右の銘は、あくまで自分限定商品です。それを横流しで安売りしても、他人の心には響きません。
飾らなくていい
過度な演出もいらない
ありのままに…
そう、Let It Be
自然体が一番いい
教師は、偶然にこの学校に赴任し、縁あってこの学年の担任になりました。子どもたちは、この町で生まれ育ち、この学校に入学しました。数えきれないほどの偶然が重なり、奇跡的な確率で出会った教師と子どもたちが共に過ごしたのが、この教室です。
これまでともに過ごした日々を思い起こしてみましょう。そして、これから未来を歩む子どもたちが成長していく姿を思い浮かべてみましょう。
きっと担任の先生にしか伝えられないメッセージが頭をよぎるはずです。
修了式当日-フィナーレの舞台はすっきりシンプルに
修了式当日の最後の1時間は、学級活動の時間になっているはずです(くれぐれも、最後の1時間までテスト直しや漢字ドリルをやっていた…などという事態は避けてください)。
フィナーレの舞台は、いたってシンプルです。図画や習字、学習のまとめなどの掲示物は、前日までにきれいさっぱり持ち帰らせておきます。個人の作品は個人に返します。
係活動等の掲示物は、欲しい子にプレゼントします。「これをもらっていって、何に使うの?」というような物も中にはあります。でも、そこは活発な3年生。希望者が複数いる場合は、じゃんけんで決めます。
かつては、教室の前面に子どもたち全員の似顔絵や自画像を掲示していたこともありました。そのときは、「3年生のみんなの顔を返します。4年生で、また立派になった顔を見せてください」と言って、絵を返したものです。最近は特別支援の教育上の配慮から、教室前面の壁には、最小限の掲示物しか貼らないようになりました。教室の学習環境も時の流れと共に進化していきます。でも、着席して前方を見ると、みんなの顔(絵)が見える環境も、学級の一体感を育てる上で悪くなかったな…と、懐かしく思います。
最後に残るのは、「学級目標」です。学級目標は、模造紙(山形では『大判用紙』!)に書かれていることでしょう。「これはいらないよね…」と思うところですが、意外とそうでもありません。「記念に欲しい」という子が何人か出てきます。学級目標には、学級の目指すべき姿がそこに描かれています。1年間、自分たちがその姿に向かって歩んできたからこそ、子どもにとっては「記念」なのでしょう。
担任からの締めくくりの言葉
学級通信で伝える
学級通信最終号には、担任のたっぷりの思いを込めます。「さいしゅうごう」と入力したら、ワープロが「再集合」と変換してくれました。「これは、なかなか粋な変換だ」ということで、そのまま「学級通信・再集合」として発行したこともあります。
学級通信は、保護者向けの文章です。でも、けっこう子どもたちも読んでいるものです。私は内容によっては、「帰りの会」で子どもたちに通信を読み聞かせてから配付することも過去にありました。
そこで、最後の学級通信を読み聞かせて、担任からの締めくくり講話にするという方法もあります。余計なコメントは加えずに、書いてある言葉をそのまま読み聞かせます。読み終えたら、最後に「これで〇年〇組は、解散です」と穏やかに(少しの笑顔で)話します。
語りで伝える
講話ですので、教師の語りで伝えるのがスタンダードなやり方です。ただし、6年生の卒業担任ではありません。担任一人がノスタルジックモードでは、浮いてしまいます。相手は、明日からの春休みを楽しみにしている3年生です。
気負い過ぎずに、自然体を心がけましょう。
気を付けたいのは、時間です。1~2分程度で、最長でも3分以内にまとめます。また、教師からの一方的なスピーチにならないように、ところどころに語りかけ(問いや同意を促す言葉)を入れましょう。
4月にみんなに出会ったと思ったら、あっという間に1年間が過ぎましたね。楽しい時間って、あっという間に過ぎるでしょう。だから、〇年〇組は、とっても楽しいクラスだったのだと思います。先生は、たまには怒ったこともあるけど、だいたいはニコニコしていられたかな。それは、みんなのおかげです。◎年生(次学年)では、〇年〇組を超えるくらいの、さらに楽しいクラスをつくってください。
先生のお話は、これでおしまいです。
イラスト/伊神彰宏
『小三教育技術』2018年2/3月号より