卒業式＆入学式｜教員のファッションマナーQ&A【フォーマルスペシャリストが答えます】

2025.03.20

教えてくれるのはこの方

フォーマルスペシャリスト　森本圭子さん

（一社）日本フォーマル協会事務局長。大学卒業後、外資系アパレル会社企画部、ファッションビジネス企業広報PRマネージャーを経て2012年一般社団法人日本フォーマル協会に勤務、現在に至る。NHK『あさイチ　いざという時のフォーマルの悩みを解決』、『あさイチ　ツイＱ楽ワザ冠婚葬祭特集』などTV出演。読売新聞社オンライン『披露宴ファッションＱ＆Ａ』、消費科学繊維製品学会誌　巻頭言『フォーマルとは』、暮らしの手帳　グリーンショップ『喪の装い』、家庭画報『招待状が届いたらドレスアップの新流儀』、日経新聞『結婚式　新郎新婦の両親の服装』他メディア取材対応。

式典ファッションマナーあれこれＱ＆Ａ

Q．教員の式典ファッションの正解が知りたい！

■礼服、フォーマル、ブラックスーツ…いろんな呼び方がありますが、何が違うのですか？　学校の式典にふさわしいファッションを知りたいです（40代男性）
■最近礼服でない先生が増えていますが…何がベストか知りたいです（40代女性）
■礼服だけど、喪服とは違うと思ってます。地域によってはそう教わった！と言い張る若手もいて…違うんじゃない？？と思っていますが…どうなんでしょうか？？（30代女性）
■学校によって違いがありすぎるので、教員の服装に一般常識があるのであれば、発信してほしいなと思います（20代女性）

A．相手を敬い、思いやる心の表現として装うのがフォーマルウェアです

呼び方の違いについて

礼服、フォーマルウェアなど呼び方は様々ですが、メーカーやショップによって呼び方が異なるものと考えてよいと思います。礼服＝フォーマルウェアと同じ意味と捉えてください。

ブラックスーツは一般的に男性のスーツで、その名の通りカラーはブラック。インナーのアクセサリーを変化させることで冠婚葬祭のほとんど全てのオケージョン（場面）にも着用でき、年齢にも関わりなく着られることで、汎用性が高く現在、日本では礼服として定着していると言えます。

またフォーマルウェアとはフォーマルな場（冠婚葬祭）において、相手を敬い、思いやる心の表現として着分ける衣装のことです。ちなみに日本フォーマル協会では、正礼装・準礼装・略礼装の３つのドレスコードを設けています。

教員の式典ファッションについて

日本では以前より公立の学校長の先生は卒業式、入学式といった学校行事の式典で、モーニングコートを着用することが多いようです。モーニングコートは昼の正礼装でドレスコードが最も高い服装です。

上着はモーニングコート、中にベストを着用し、スラックスはコールズボンと呼ばれる黒とグレーのストライプ柄のスラックスです。シャツはウイングカラー、レギュラーカラーの２種類、色は必ず白無地。ネクタイは結び下げネクタイかアスコットタイ（アスコットタイはウイングカラーシャツに限ります）を。

学校行事の中で卒業式・入学式は最も大切な節目の式典ですので、ドレスコードの高いディレクターズスーツ、もしくはブラックスーツを着用することがベストだと思います。

ディレクターズスーツはブラックスーツより一段格上の服装で、上着は黒の無地が一般的です。中にベストを着用し、モーニングコートと同じく黒とグレーのストライプ柄のコールズボンを着用します。

ディレクターズスーツの『ディレクター』は英語で管理者、支配人の意味があり、管理者的な位置におられる教員の方への着用がおすすめです。汎用性が高く、招待する側の最適な装いと言われてます。

若い教員の方向けには、ブラックスーツもしくはダークスーツの着用が良いと思います。こちらもベストをコーディネートするとフォーマル度の高い装いになります。

また、女性の校長先生は男性の校長先生のモーニングコートと同様に、昼の正礼装としてアフタヌーンドレスを着用することが最適だと思います。アフタヌーンドレスはもともと宮廷服の『ローブモンタント』が原型で、襟元の詰まった長袖のロングドレスのことです。上着とワンピースでもよいのですが、いずれも同素材のものが正式と言われています。

素材は無地か無地感覚のもので、学校の式典に校長先生が着用することを考えますと上品な色合いがふさわしいと思います。襟元はあまり大きく広いものではなく、袖は長袖～７分丈のものがよいでしょう。

女性の先生方の服装も男性同様に正礼装に準ずる準礼装、タウンフォーマルウェア（他の呼び方もあるかと思いますが）がよいと思います。男性のディレクターズスーツやブラックスーツも、レディースのタウンフォーマルウェアに相当するものです。ジャケットとスカート、またはパンツの組み合わせと考えてください。

また、礼服＝喪服ではありません。喪服は葬式、告別式といった喪の席に着用するもので、インナーを含め全て黒が基本です。学校の式典で着用する礼服は、喪服の黒スーツを着用しても構いませんが、ブラウスやシャツなどのインナーは白、ベージュ、ライトグレー、その他の色と黒でなくても問題ないです。

Q．年代別におすすめの式典ファッションが知りたい！

■管理職の服装が意外と迷います（50代女性）
■年齢に合わせて、ふさわしい色や生地の質感に迷う（30代女性）
■管理職女性はどんなファッションで参列するのか知りたいです。また、管理職女性の式典ファッションの色ルールもあれば知りたいです（50代女性）
■年齢別にふさわしい式典ファッション。20代～50代くらいまで、年代別で見本例があると、とても参考になる（30代男性）
■市内は全ての学校が制服なので、担任の服がよく目立ってしまいます。保護者受けのよい服を教えてほしいです（40代女性）
■卒業式は黒、紺が主流ですが、グレーの場合のフォーマル感の出し方を知りたい（50代女性）

A．年齢に応じたフォーマルスタイルを堂々と着こなしてください

年代別には、①20代～30代の若手の先生方、②40代～50代のベテランの先生方、③50代～の校長先生、教頭先生といった管理職の先生方になるかと思います。

①20代～30代の若手の先生方

若い世代の先生方はそれぞれの個性によると思いますが、フレッシュでエネルギーにあふれた教育への期待を込めて、男性の先生にはブラックスーツやダークスーツでスマートに決めてほしいです。シャツは白が基本です。式典の特別感を表すために明るい色のネクタイを着用し、できたらポケットチーフを挿してください。フォーマル度が増しドレスアップした印象です。

女性の先生方も若い先生はネイビーやグレーのスーツがお薦めです。膝丈のスカートやパンツのスーツスタイルでもよいと思います。インナーのブラウスやカットソーでたくさんの演出が可能です。コサージュを使って華やかに装ってください。

②40代～50代のベテランの先生方

ベテランの先生方はこれまでの教師歴に自信をもって式典に出席していただきたいです。先生方への信頼感、責任感、そして知性と品格を表す服装での装いがおすすめです。男性の先生はダークスーツでよいですが、管理職の方もいらっしゃると思いますので、ディレクターズスーツ着用もおすすめしたいです。ディレクターズスーツはこの年代になってこそお似合いになるスーツです。ネクタイはグレー系の縞柄、または無地。チーフは本麻かシルクが基本で、色は白かシルバーグレーを。

女性の先生方にはフォーマルなスーツがおすすめです。膝の隠れる丈のスカートやパンツも可。タウンフォーマルスーツは上下の素材や色は同じでなくてもよいので、先生の個性に合わせてコーディネートを楽しんでいただきたいです。ブローチやコサージュ、パールのネックレスで卒業式・入学式といった式典こそのフォーマルファッションを演出してください。色はネイビー、グレー、ベージュなど自分らしさを表現できる服装で楽しく装っていただきたいです。

③50代～の校長先生、管理職の先生方

男性はモーニングコート着用またはディレクターズスーツ。靴はカーフのレースアップ（ひも結び）、ストレートチップで、色は黒がふさわしいです。

女性はアフタヌーンドレス。ロング丈はフォーマル度が高いものですが、膝丈のノーマル丈から靴先がのぞくヒール丈の長さでもよいです。色味はグレー、ベージュなどの品格のある落ち着いたカラーで、クレープやジャカードのソフト素材、タフタやマトラッセなどのハード素材がおすすめです。靴はプレーンなパンプスやローヒールで、色は服装に合わせるか黒がよいでしょう。

Q．式典ファッションでNGなカラーが知りたい！

■失礼にあたる、印象の悪い色などはあるのか保護者の声を聞いてみたいです（30代男性）
■男でもパステル調の色のスーツはOKなのか？（60代男性）

A．原色や蛍光色、派手なプリント柄など悪目立ちする色は避けましょう

式典の場において悪目立ちする色はふさわしくないと思います。ではどんな色がNGかというと、服だけが目立ってしまうような、赤、黄、青、緑といった原色などの個性的な色が挙げられます。また、式典で着用する先生はいないと思いますが、蛍光色の服装なども。式服（フォーマル）には合わない派手なプリント柄も避けてください。保護者の方々からの印象もよくないと思います。

パステルカラーとは淡い中間色。それぞれの色に白色を混ぜたソフトな印象の色味だと思います。優しく穏やかなイメージですが、ダークな色合いの服装の方々の中では少し浮いた感じに見えるかもしれません。先生の信頼感、責任感、清潔感を損なわないように知性と品格ある服装で臨んでいただきたいと思います。

男性の先生でしたらベージュ、ライトグレー、その他のパステルカラーなどでしょうか。たとえ個性的に映ったとしても普段の先生らしさを大切にしていただければ、淡い色味のカラーがNGとは言えないと思います。女性の先生のパステル調の服装も、同じようにとらえてください。先生としての品位を大切にして、好感度の高い服装で臨んでいただきたいと思います。服の色だけでなく、トータルコーディネートも大切です。姿勢を正して素敵な先生を演出してください。

Q．礼服以外に着てもOKな服装を知りたい！

■卒業式は担任でなくても礼服を着るべきなのか？（60代男性）
■卒業式に礼服以外だとどのような服装がいいか（30代女性）

A．厳粛な式典に参列するので、礼服で臨むのがよいでしょう

担任の先生は保護者の方々から注目される立場ですが、その他の先生も式典に出席されるときは同様に式典にふさわしい服装で参加していただきたいと思います。

フォーマル、礼服を着用することを堅苦しいとか面倒と思わずに、式典に臨む厳粛なそして晴れやかな高揚感を楽しんでいただきたいです。先生方の姿を見て学校全体のイメージも上がり、式に参列する保護者からもきっと称賛、期待されることと思います。

Q．ユニセックスなフォーマルファッションを知りたい！

■私自身、身体の性は女性ですが、女性らしく華やかな……というフォーマルスタイルは抵抗があり、毎年の式典行事が憂鬱でなりません。ユニセックスなフォーマルファッションについて教えてほしいです（年齢無回答女性）

A．パンツとのセットアップがおすすめです。女性らしさではなく自分らしさを

世の中、時代は変化しています。“女性は女性らしく、男性は男性らしく“と断定するのは間違いだと思います。女性らしく装うのが好きな方もいれば、ユニセックスのファッションが心地よいという方がいてもいいのだと思います。

式典のフォーマルファッションで言えば、男性のブラックスーツは女性でも着用可能です。女性のタウンフォーマルウェアとして紹介したジャケットとパンツのセットアップは、スタイリッシュな装いになるのでおすすめです。自分らしいファッションで式典に参加してください。

先日、メンズアパレルショップの店長からこんな話を聞きました。女性の校長先生の問い合わせで、モーニングコートで式典に出たいとの連絡があり、実際にセミオーダーでモーニングコートを作られたということです。

モーニングコートは男性が着用することを想定して作られているとは思いますが、女性が着てはいけないというルールはありません。きっとその校長先生もモーニングコートを着用して、堂々と式典に臨まれていることと思います。

Q．式典にふさわしいファッションアイテムを知りたい！

■腕時計は、そもそも式典のときには付けていない方が良いものなのでしょうか？それともフォーマルなデザインのものであれば、付けていてもマナー違反ではないのでしょうか？（40代女性）
■ポケットチーフのマナーが知りたい（30代男性）
■コサージュの選び方。コサージュの向き。小物の使い方が知りたい（50代女性）
■式典のネクタイの正解が分からない。（40代男性）
■靴にもフォーマル、準フォーマルといろいろありますが、どの程度が許容範囲なのか…（60代男性）
■アクセサリーをどんなものをどこまでつけるか。少なくても寂しいし、多すぎると浮く（50代女性）

A．小物の正しい選び方で装いをさらに格上げさせます

腕時計について

式典のときに腕時計をつけてはいけないというルールはありません。フォーマルなデザインの腕時計はもちろんベストです。あまりにカジュアルで大きな腕時計は全体のコーディネートバランスとしてフォーマルウェアとは合わないこともあります。学校行事には時間制限もあり、時計が必要な場面も多くあるでしょう。そこは個人の判断にお任せしたいと思います。

男性教諭の小物選びについて

ポケットチーフには様々な挿し方があります。スリーピーク、TVホールド、クラッシュド、パッフド……他にもいろいろあり、コーディネートに合わせて楽しめるものです。式典でのモーニングコートには白。ディレクターズスーツ、ブラックスーツ、ダークスーツには白またはシルバーグレーのチーフがよいでしょう。スリーピークスは正礼装にも最適で、TVホールドは気構えず挿せて、パッフドやクラッシュドはラフに挿せます。

ネクタイの（付け下げタイ）結び方もプレーンノット、ウィンザーノットなど様々です。プレーンノットの結び方は最も一般的で簡単に結べるネクタイの結び方で、式典にふさわしいと思います。モーニングコートやディレクターズスーツでのアスコットタイをつけるときのシャツは、ウイングカラーに限ると覚えておいてください。

女性教諭の小物選びについて

コサージュは服とのバランスを重視してください。華やかさの演出として効果がありますが、色は服に合わせましょう。学校行事ではあまり大きめなものより控えめのコサージュの方が上品です。コサージュの位置は高めにつけたほうがより華やかで、左胸につけることが多いですが、右胸につけても問題ないです（右利きの方が多いのでつけやすく外しやすいからと言われています）。

またブローチもスマートで美しいと思います。ブローチもコサージュ同様に胸の高いバランスの良い位置でつけるのがよいでしょう。朝～昼の式典なので、パールのネックレスは上品でドレスアップする最適なアクセサリーです。

靴選びについて

男性の場合、色は黒でカーフのレースアップ（ひも結び）ストレートチップが最適。内ばね式がドレッシーですが履きやすいものでよいと思います。女性は服装に合わせた色または黒で、プレーンなパンプスが最適。ローヒールも可です。控えめな飾りやトリミングのついた靴でも問題はありませんが、サンダルは不可なのでご注意を。