既習をしっかり生かし、多面的に考えていく授業 【全国優秀教師にインタビュー! 中学校編 中1〜中3を見通す! 「高校につながる英・数・国」の授業づくり #24】
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前回は、新潟市の授業マイスターである新潟市立新潟柳都中学校の長部賢教諭(数学)に、授業づくりの考え方やその授業を通してどんな子供を育てたいのか聞いてきました。今回は、そのような授業づくりを象徴する授業として、2学年の実践事例について聞いていくことにします。
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目次
単元「図形の調べ方」の多角形の外角の和についての授業
長部教諭は今回、2学年の単元「図形の調べ方」の7/17時で、多角形の外角の和についての授業を紹介してくれました。
「この授業は、どのような多角形でも外角の和が360°になるということを、平行線の錯角や同位角を使って説明ができることに加え、それを一般化していく過程で、(内角の和の学習のように)n角形のnを使って表していく過程で、最終的にはnが消えて360°になることも説明できることが重要です。
この授業では、先のような学習のポイントから、まず前時に学習した多角形(n角形)の内角の和についてふり返り、180°×(nー2)を確認します。そこから、『では、外角の和はどうなるかな』と投げかけていきます(資料参照)。
【資料】指導案
ここで、最初に六角形と三角形で予想させるわけですが、前時の学習をふり返って、n角形の内角の和は、180°×(nー2)を押さえていますから、『角の数が2倍になるから、外角の和も2倍になる』とシンプルに予想する子供もいれば、『内角が大きくなるので、外角は小さくなるかも』と逆に予想する子供もいて、さらに『(角の数と大小の関係で)ちょうど同じになるかも』と予想する子供もいると考えられます。
そこで、どうすれば『調べられるかな?』と投げかけると、当然、分度器で測ればよいと言うので、実際に測ってみると360°だということが分かります。ここで、既習からの予想や見た目からの予想とのズレが生じるわけで、そこから『では、他の多角形でも外角の和は360°になるのだろうか?』と投げかけると、多数の子供たちが、『四角形や五角形でも360°になりそう』だと言うので、『もしそうだとしたら、今日の課題は何になりそうかな?』と問いかけて、『なぜ、外角の和は360°になるのだろうか』と課題を設定し、まず個人で説明を考えていきました」
ただ、この指導案を作ったときの公開授業では、同じになるのではないかと予想した子供が多かったと話す長部教諭。それについては、授業で提示した六角形と三角形の図が、両方とも正六角形や正三角形に近い形をしていたため、(それぞれの内角の角度を知っていた子供たちにとって)比較的予想しやすかったのではないかという指摘があったと話します。
「式を使って説明したほうがシンプルで分かりやすい」ということがねらい
さて、この授業づくりの特徴について聞いてみると、長部教諭は次のように話してくれました。
「例えば、合同条件を学んで証明に入るのはこの学習の後で、この時点では『証明』について学習していません。しかし、この単元でも、対頂角がなぜ等しくなるかということについて、既習事項を使って式で説明するような証明に近い学習が入ってきています。ですから、ここでも、『360°になることを説明するとはどういうことか』といったことを子供たちとしっかり確認した上で、証明ではありませんが、『式で表したり、図で表したりして論理的に説明する』ことを行うようにしています」
ちなみに、この学習では(前々回紹介した授業と異なり)ワールドカフェ方式が取り入れられていませんが、それは対話が得意な子供たちの実態を見て、必要ないと判断したのだと長部教諭は話します。
さらに、今回紹介した授業づくりのポイントについて、長部教諭は次のように説明してくれました。
「この内容の学習は、教科書では図を使って外角を平行移動して1か所に集め、360°になるというような学習の過程はありません。多角形の外角と内角の和は180°であることを使って、それが五角形であれば、180°×5ー540°=360°になることを確認し、そこからn角形ではどうなるか、一般化して考えていくだけです。
そうではなく、既習をしっかり生かし、図を使って平行移動で外角を1か所に移動して360°であることを考えていったり、事前に6角形でも3角形でも360°になることから子供たちが主体的に一般化して、n角形で考えていくようにしたりして、多面的に考えていく授業にしたかったのです。
![授業の様子](https://kyoiku.sho.jp/wp-content/uploads/2025/02/2a47c61705ddb42769f1e67c12d984b2-1.jpg)
そうやって考えてみると、図を使う方法では多角形の角が増えれば増えるほど、図がごちゃごちゃして分かりづらくなってしまうので、『やっぱり式を使って説明したほうがシンプルで分かりやすいね』ということになっていくことをねらっていました」
前回の話の中でも、子供たちが既習とのズレから課題意識をもち、それを主体的に考えていくこと、そしてそこから対話を通して、さらに修正や改善を図りながら、より多面的・多角的に考えていくことが大事だと話してくれた長部教諭。そんな考え方を象徴している授業の一つがこの授業だということです。
【全国優秀教師にインタビュー! 中学校編 中1〜中3を見通す! 「高校につながる英・数・国」の授業づくり】次回は2月21日公開予定です。
執筆/教育ジャーナリスト・矢ノ浦勝之