次年度に向けて3学期にやっておきたいこと|1月【特別支援学級の学級経営】

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兵庫県公立小学校校長

関田聖和

文部科学省からは、すべての新任教員が10年以内に特別支援教育を複数年経験するよう努めるように通知が出されています。特別支援の知識や経験が乏しいまま、手探りで特別支援学級を担任している先生も多いことでしょう。この記事では特別支援学級でよくあるケースを挙げて、その道の専門家がポイント解説します。今回は次年度に向けて3学期にやっておきたいことについてのお話です。

構成・執筆/兵庫県公立小学校校長・公認心理師・特別支援教育士スーパーバイザー 関田聖和

登場人物

皆川先生:自閉情緒クラス担当。教師生活25年のベテラン。特別支援学級主任・特別支援教育コーディネーター

島原先生:知的クラス1担当。教師8年目。特別支援学級担任1年目

根本先生:知的クラス2担当。教師3年目。特別支援学級担任2年目

しゅんたさん:皆川先生担当。独特な自分の世界をもっていて、彼なりのルールがある。他人とは打ち解けるまでにかなり時間がかかる。粘土や工作などは緻密で動物などは本物そっくり、大人顔負けの作品を作りあげる。
長期目標:同じクラスの友だちといっしょに作品作りをすることができる 
短期目標1:大人といっしょに作品作りをすることができる

短期目標2:動物が入る作品づくりでは、同じテーマの友だちの作品と並べて展示することができる
短期目標3:5分間程度、同じクラスの友だちといっしょに作品作りをすることができる

るなさん:島原先生担当。よく動く。出し抜けにしゃべる。思いついたことをすぐに伝えてしまう。言わないでいいことまで言ってしまうことがある。発想が豊か。次から次へと案が浮かぶ。
長期目標:会話のキャッチボールを楽しむことができる 
短期目標1:先生としりとりなどの遊びに取り組むことができる

短期目標2:会話の中で質問されて、はい、いいえの答えを返すことができる
短期目標3:「朝ごはんは何を食べたの?」などの簡単な質問を受け、同じ質問を返すことができる

ゆうかさん:根本先生担当。不注意。衝動性が高い。よく忘れてしまう。様々なことが気になってしまい、失敗することが多い。いろいろなことに気が付いてくれるので、友だちが忘れていたことを思い出してくれるようなことがある。
長期目標:タブレットで記録を取ることができる 
短期目標1:タブレットで必要な事柄を写真に撮ることができる

短期目標2:タブレットで文字を書いたり入力したりすることができる
短期目標3:タブレットで毎日の連絡帳などを写真に撮ったり文字を書いたり入力したりすることができる

1月のとある日の教員室での会話

(島原先生)
るなさんは、冬休みが楽しかったんだろうねえ。おばあちゃんのおうちに行ってきた話ばかりしているよ。

(根本先生)
ゆうかさんは、「楽しかった」「良かった」だけで、新しく取り組んでいるタブレットのアプリに夢中だわ。

(皆川先生)
しゅんたさんは、冬休みに買ってもらったアクセサリーが手放せないようなの。でも冬休みは夏休みより短かったから、起きる時刻、寝る時刻は、おうちの方が調整してくれているので安心だわ。3学期は、あっという間だけれど、いろいろと忙しくなるから、計画的に進めましょうね。

(島原先生)
よろしくお願いします!

(根本先生)
よろしくお願いします!

冬休みは夏休みよりも短い自治体が多いようですが、寒い地域ではそうではないですよね。ここでは、夏休みより短い冬休みという想定で綴ります。

冬休みはクリスマスやお正月、そしてお年玉など、子どもたちにとっても、魅力的なイベントが多い時期です。テレビや動画配信サービスも、「一気見放送」など、ドラマやアニメの番組を連続放映することがあります。また、お年玉を手にして新しいゲームを購入、といったこともあるかもしれませんね。そして遊びに夢中になり過ぎて夜更かしということも想像に難くないです。その結果、生活のリズムを崩してしまい、なかなか通常の生活リズムに戻らず、様々な理由から「学校へ行きたくない」という感情につながることもあります。

【POINT1】生活リズムを整えて、最終学期をスタートさせる

こちらは、9月の記事に記載しているので参考にしてくださいね。

子どもの言動に一喜一憂せずに、今の状態をありのまま受け止め、待つことも大事な指導です。

【POINT2】学年のまとめをする

学年の区切りの意識づけができるように、学年のまとめのようなことに取り組みたいですね。お楽しみ会的な学級イベントでもいいでしょう。または2月や3月の授業参観での開催をめざして、一年間の発表会を計画してもいいかもしれません。チャレンジしていることを続けて、できるようになったことの披露でもいいでしょう。もちろん、今できていることを何日連続でできるかなチャレンジもOKです。

発表会の企画では次のようなものがおすすめです。

・保護者対抗!百人一首大会(この日までに10首、20首程度を家庭で練習)
・今できていること、何日連続でできるかなチャレンジ!(頑張り表やその場で行うこともOK)
・スペシャルランチ会(遠足気分で校庭や公園でランチを楽しむ)
・ミニ運動会(計画は子どもたちで行う。低学年向けの競技や初めての競技も盛り上がります)
・劇発表会(1年間の学びを劇にして発表する)
・得意技発表会(この1年でできるようになったことを披露)
・お別れメッセージカード作り(友だちや先生に感謝のメッセージを書いたカードを作る)

これらのことが、子ども自身の力が伸びたことを意識できるとさらにいいですね。しかし、どうしても熱くなってしまうのは大人側です。過剰演出にならないように、子どもも教師も無理なくできる企画を選びましょう。

【POINT3】次年度の準備をする

3学期を次年度の準備としての0学期と捉えることができます。この1、2、3月は、「一月往ぬる 二月逃げる 三月去る」と言われます。あっという間に過ぎ去っていくのは、まとめと準備を同時並行でしているからかもしれません。特に特別支援学級は、次年度の引継ぎ資料づくりが本格化します。保護者・本人の願いを大切にしながら、次の担任がスムーズに支援ができるようにしたいものです。

引継ぎ資料づくりには以下の事柄が必要になるのではないでしょうか。

・個別の教育支援計画
・個別の指導計画
・今年度取り組んだこと、その状況や結果、次年度へつなぐこと
・特性関連
・興味の変遷
・能力の強い面、弱い面
・好きなこと
・NGなこと

そして引継ぎ資料を綴るうえで大切にしたいことは、

  1. できるだけ簡潔に
  2. できるだけ具体的に
  3. できるだけ事実を(時系列があった方がいいものもあります)

の3つのポイントです。たとえば「やわらかいマスコットが好き」と書かれていても、その先生が感じている「やわらかい」というのは人によって感じ方が違います。「タオル生地、フェルト、リネンはNG」など、具体的に記すことが大切です。わからなければ本人に確認してもいいでしょう。

これ以外にも、個々の状況によって、引き継いでおかないといけないことがあるでしょう。ゆっくりと時間をかけて行うことで、振り返りにもつながります。これは、次年度も引き続き担当することであっても、大切なことになります。今のうちから準備しておきましょう。


いかがでしたか。準備を入念にすることで、次の取組への成功のきっかけになります。ゆとりをもって何事も「専手必笑」(専門的な手立てで必ずみんな笑顔になれる)で取り組みましょう。

イラスト/terumi

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