次年度の学校づくりのプランを全教職員でつくる 【木村泰子「校長の責任はたったひとつ」 #16】

連載
負の連鎖を止めるために今、できること 校長の責任はたったひとつ

大阪市立大空小学校初代校長

木村泰子
木村泰子「校長の責任はたったひとつ」 
#12 子どもの事実から「校長観」の転換を

不登校やいじめなどが増え続ける今の学校を、変えることができるのは校長先生です。校長の「たったひとつの責任」とは何かを、大阪市立大空小学校で初代校長を務めた木村泰子先生が問いかけます。第16回は、<次年度の学校づくりのプランを全教職員でつくる>です。

年度の終わりに

残念な子どもの事実を突きつけられ、公教育の危機とまで言われている昨今の学校現場です。

「学校に無理していかなくてもいいよ」と、様々な場で当然のことのようにささやかれ続けていますが、決して時代の流れではありません。どれだけ時代が激変しようと、子どもの本質は変わりません。幼児が中学生になるまでの6年間が小学校での学びです。子どもは誰もが友達と学校で遊びたいし、学校でしかできない学びを体験したいと思っています。

年度のふり返りに入る今、パブリックの学校の最上位の目的「すべての子どもの学習権を保障する学校をつくる」を全教職員で再度合意し、次年度の学校づくりのプランを全教職員でつくりませんか。

校長と教職員は学校づくりのパートナー

教職員が一つになれない。
校長の言うことを聞かない教員が変わってくれない。
新しい教育の方向性を伝えても聞く耳をもたず、従前のやり方で子どもや周りの教職員に圧をかける。
「ヒエラルキー」「前例踏襲」「同調圧力」が職員室に暗黙の空気として充満している。
校長としての自分の力が及ばないから無理だ。

これらはリーダーのみなさんの困り感です。

そもそも教職員が一つになることなど不可能です。校長の言うことを聞かない教員がいるのは当たり前です。長年子どもの前で教員として君臨してきた教員が、今さら自分のやり方を変えることなどできるわけがないでしょう。これらのことは放っておきましょう。校長が困ることでも悩むことでもありません。大きく教育の流れが変わろうとする今は、当然起きることです。

しかし、悪しき従前の学校文化を引きずる職員室の空気を変えるのは校長です。常に、職員室にいて、職員室に帰ってきた教職員と、とにかく笑顔で子どもについての雑談をするのです。そのためには今日、困っている子は誰かを校長が誰よりも知らなければならないでしょう。教職員が校長を学校づくりのパートナーだと感じるかどうかは、校長が困っている子どものことをどれだけ知ろうとしているかにかかっています。少なくとも、このことだけでも日常の行動を変えれば、職員室の空気が大きく変わるでしょう。

全教職員で次年度の学校づくりのプランを

そのうえで、次年度の学校づくりのプランを全教職員でつくるのです。まさに、「文句を意見に変える」チャンスです。

ミッションは「すべての子どもの学習権を保障する学校をつくる」です。

教職員に配る用紙は「問題点」「改善点」を書けるように作成します。ミッションが達成できない自校の問題点をあげ、その問題点について自分の考える改善点を書くのです。問題点だけを書いているものは却下です。誰かを批判したり、地域や保護者や子どものせいにしたりする考えは文句です。すべての教職員が問題点と改善点を自分の言葉で書くのです。もちろん、校長や教頭も同様に問題点と改善点を書きます。

全教職員の問題点と改善点をすべて一覧にして、全教職員で対話します。改善点が書かれていない問題点は誰もが嫌な気分になるだけですが、様々な教職員の書く改善点は、まさに多様な価値観が充満しています。

リーダーが「自校のここは変えたい」と思うこともこの時とばかりに自分の言葉で書くのです。誰が書いたかが問題ではなく、書かれている内容について全教職員で対話することに意義があります。その対話の中から、まずは現状の悪しき当たり前になっているものを捨てることから始めたらいいでしょう。常にぶれてはいけないのは、「すべての子どもの学習権を保障する学校をつくる」ことだけです。

「働き方改革」を言い訳に挙げたりはできないはずです。すべての子どもが学び合っている学校は「働き方改革」ができている学校ですから。

校長の評価は自校の「子どもの事実」です

学校現場にはあらゆる指示や圧に近いものまで降りてきます。しかし、それにふり回されてはいけません。校長の評価は自校の「子どもの事実」となって表れます。困っている子の最後の砦が校長です。ここさえ外さなければ、どんな結果になろうと、校長職は楽しいです。

日本の学校教育の最大の課題は「主体性」「当事者性」の欠如と言われています。

まずは校長から「自分の学校は自分がつくる」行動を示してください。
教職員も「自分の学校は自分がつくる」
保護者も「自分の子どもが学ぶ学校は自分がつくる」
地域住民も「地域の宝が学ぶ地域の学校は自分がつくる」
こんな大人の行動を見ている子どもたちは「自分の学校は自分がつくる」でしょう。

誰一人取り残さない学校づくりを進めるにはスキルを上げたり、難しいことに挑戦したりすることも大切かもしれませんが、もっと誰にでもできる実はたやすいことから始めれば最上位の目的につながる気がしています。

校長先生方、まずは職員室の空気を変えましょう。

まとめ
 職員室の空気を変えるのは校長の仕事。
 次年度の学校づくりのプランを全教職員でつくろう。
 そのときにぶれてはいけないのは「すべての子どもの学習権を保障する学校をつくる」こと。
 校長は「自分の学校は自分がつくる」ことを行動で示そう。


木村泰子先生

木村泰子(きむら・やすこ)
大阪市立大空小学校初代校長。
大阪府生まれ。「すべての子どもの学習権を保障する」学校づくりに情熱を注ぎ、支援を要すると言われる子どもたちも同じ場でともに学び、育ち合う教育を具現化した。45年間の教職生活を経て2015年に退職。現在は全国各地で講演活動を行う。「『みんなの学校』が教えてくれたこと」(小学館)など著書多数。


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