学校での「ふてほど」ワードに気をつけよう! 改めて確認したい、教員らしい言葉遣い

連載
マスターヨーダの喫茶室~楽しい教職サポートルーム~

元山形県公立学校教頭

山田隆弘

学校生活において、教員の言葉づかいは非常に大切です。児童が耳にする言葉は、成長の過程で会得する言語感覚に大きな影響を与えるからです。児童のお手本となるような言葉遣いを心がけることはもちろん、学校関係者や同僚、地域の方たちにも、正しい言葉遣いで良い印象を与えたいものですね。そこで今回は、流行語大賞にも選ばれたふてほど」なNGワードを軸に、正しい言葉遣いを考えて行きたいと思います。

【連載】マスターヨーダの喫茶室~楽しい教職サポートルーム~

「ふてほど」が2024年の名言キーワードに!

2024年の新語・流行語大賞で最優秀賞に輝いた「ふてほど」。TVドラマ『不適切にもほどがある!』では、昭和の体育教師が未来にタイムスリップし、差別的な発言やパワハラを繰り返す様子が描かれ、現代社会の問題を浮き彫りにしました。
現代の教育現場では、多様性を尊重し、すべての児童生徒が安心して学べる環境づくりが重要視されています。そこで今回は、「不適切な表現」や「誤用」について、その重要度順にまとめてみました。学校運営のあらゆる場面、授業研究会、保護者との連携時、地域コミュニティのお付き合い時など、様々な場面で適切な言葉を選ぶことが大切です。

NG度別 学校で使わない方がいい表現

レベル5 絶対にやってはいけない不適切なもの

これらの言葉は、問答無用で不適切です。相手との関係に悪影響を与える可能性が高いため、常に特段の注意が必要です。

① 差別や偏見につながる言葉
人種、性別、国籍、障害など、個人を特定して侮辱する言葉は、絶対に使用してはいけません。これらの言葉は、児童生徒の心に深い傷跡を残すことがありますので、たとえ冗談であろうと絶対に使ってはなりません。

② 暴力を連想させる言葉(仕草を含む)
「殴る」「蹴る」など、暴力的な表現は児童の心に不安や恐怖を与える可能性があります。
手を振り上げるなど、暴力を連想させる仕草もNGです。
物理的・精神的のいずれかで、児童が不安を抱いたり傷つく可能性のある言葉は避けるべきです。
「ボコす」「キモい」など、スラングも日々生まれていますので、児童の言葉にも気をつけていきましょう。
また、「問題をやっつける」などといった表現も避けるべきでしょう。話の流れを建設的な方向にもっていきやすくするためです。

③ 個人の努力では変えられないことに対する言葉
容姿や体型、能力または特別に配慮を要する生活様式など、一般とは違う属性を指摘したり、蔑んだりする言葉は、児童の深く心を傷つけてしまいます。直接的な表現でなかろうと、厳に謹んでください。

配慮ある表現をし、より良いコミュニケーションを図っていきたいです。

絶対に使わないほうがよい言葉とその言い換えの具体例については、こちらの記事もご覧ください。
改めて確認しよう! 学校で使わないほうがいい「不適切な言葉」とは

レベル4 「相手に寄り添っていない」という不適切さ

相手を尊重していない、あるいは相手の心情に寄り添っていない言葉です。より正確で洗練された表現に置き換えることで、コミュニケーションの質を高めることができます。

「ご家庭でしっかりと指導してください」➡︎「学校と家庭で連携してサポートしましょう」【保護者連携】

単なる指示から協力を促す表現に変えます。保護者に対して責任を押し付ける印象から、保護者と学校が共に協力し合う姿勢を強調し、より良好な関係を築くためのアプローチとなります。

「これは〇〇先生の指示です」➡︎「これは〇〇先生からのアドバイスです」【学校運営】

命令的な表現は、相手との協力関係を損なう可能性があるため、避けるべきです。

「これはわたしのオリジナルのアイデアです」【校内研究】

謙虚さを欠く表現は、研究が共同の営みであることを忘れがちにさせ、建設的な議論を妨げる可能性があります。チームワークを重視し、他者を認める表現に変更することで、より協調的な研究環境を作ることができます。

「これやっといて」➡︎「これをお願いできますか?」【学校運営】

命令口調から丁寧な依頼の表現に変えることで、相手の自主性を尊重し、協力的な関係を築くことができます。

「これができないとダメだよ」→ 「この部分について一緒に考えてみましょうか?」【学校運営】

否定的で圧力をかける表現から、協力的で支援な表現に変更することで、相手の自尊心を傷つけずに問題解決を促すことができます。

「君はまだ若いからなあ…」➡︎「君の新しい視点が大切だと思う」【学校運営】

年齢による偏見を含む表現から、相手の強みを認める肯定的な表現に変えることで、若手の意見を尊重し、多様な視点を取り入れる姿勢を示せます。

「きみは何も分かってない」➡︎ 「この点についてもう少し説明してもらえますか?」【学校運営】

相手を否定する表現から、理解を深めるための質問に変えることで、建設的な対話を促し、相手の考えを尊重する姿勢を示せます。

「あなたの意見は間違っています」➡︎「わたしは、~という点から、少し異なる考えを持っています」【校内研究】

相手を直接否定したり、ネガティブな印象を与えたりするため、避けるべきです。

「お子さんは少し問題があります」➡︎「〇〇君/〇〇ちゃんには成長の余地があります」【保護者連携】

児童の可能性に焦点を当てた前向きな表現へ変更すべきです。否定的な表現は、保護者を防衛的にさせる可能性があります。「成長の余地がある」という表現は、児童の発達を支援する協力的な姿勢を示し、保護者との建設的な対話を促します。

「あの人、いつも遅刻するよな」➡︎ 「最近、遅刻が多いようですが、何か困ったことや問題があるのでしょうか?」【学校運営】

批判的な表現から、相手の状況を理解しようとする共感的な表現に変えることで、問題の根本原因を探り、適切なサポートを提供する機会を得ることができます。

「これは常識でしょう」➡︎「一般的には、~と考えられています」【校内研究】

「常識」という言葉は、個人の経験や背景によって解釈が異なる可能性があります。また、相手の知識や理解を軽視しているように受け取られる恐れがあります。代わりに、より客観的で具体的な表現を用いることで、誤解を避け、建設的な議論を促すことができます。

レベル3 「状況に応じて言い換える」べき不適切さ

状況や相手との関係性に合わせて、適切な表現を選ぶことが大切です。

「~させていただく」➡︎「学校として~をします」「(わたしは)~といたします」【保護者連携】

より直接的で明確な表現を用いることで、学校や教師の責任と主体性を示します。「させていただく」は過度に謙譲的な印象を与える可能性があるため、保護者との対等な関係性を築くために、より明確な表現を使用することが効果的です

「~ということになります」➡︎「これらの結果を総合すると、~ということが明らかになります」【校内研究】

この表現は、結論が自然に導き出されたかのような印象を与えますが、実際には論理的な過程や根拠が不明確な場合があります。代わりに、結論に至った過程や根拠を明確に示す表現を用いることで、より説得力のある議論を展開することができます。

「~さんのお子さん」➡︎「〇〇君/〇〇さん(名前)」

児童を個人として尊重し、より直接的で親しみやすい対話を促進します。児童の名前を使用することで、教師が子ども一人一人を個別に認識していることを示し、保護者との信頼関係を強化します。

「がんばってください」➡︎「いっしょにがんばりましょう」【児童・保護者に対して】

教員は相手に努力を促す一方、という距離感を感じさせることがあります。やはり相手に対して常に手助けする姿勢である、という協力のニュアンスを込めると、相手の受け止め方は大きく変わります。

「ご苦労さまです」➡︎「お疲れ様でした」

「ご苦労さま」は上司から部下への言葉として適切ですが、同僚同士では「お疲れ様でした」の方が自然です。このように言葉づかいを工夫することで、相手との関係性をより良好に保つことができます。

「~とか」「~とかいう」➡︎「~など」「~や~が挙げられます」

「~とか」という表現は曖昧さを含んでいます。例を挙げるのなら「~など」「~や~」を使いましょう。

レベル2 「誤用している」という不適切さ

いわゆる「頭痛が痛い」的な、言葉の誤用による不適切な表現です。よく耳にします。

「図書の本」➡︎ 正しくは「図書」または、「図書室の本」

 「図書」は本を指す言葉なので、「本」を付け加える必要はありません。

「過去の歴史」➡︎「歴史」

「歴史」という言葉自体が過去の出来事を指すため、「過去の」という修飾語は不要です。簡潔で正確な表現を用いることで、児童の理解を促進し、より効果的な教科指導を行うことができます。

「後で後悔する」➡︎「後悔する」

この表現は、文法的には正しいものの、「後悔」という言葉自体が「後に悔やむ」という意味を持つため、重複した表現となります。このような言い回しは、特に教育現場においては避けるべきです。

「一番最初」  ➡︎ 「最初に」

「最初」や「最後」といった言葉に「一番」をつける必要はありません。

「必ず確実に」 ➡︎ 「必ず」

どちらも似た意味を持つため、片方を使えば十分です。

「一つの事例」 ➡︎「事例を紹介します」

「事例」は「例」という意味を含むため、「一つの」を付け加える必要はありません。

「注意喚起を呼びかける」➡︎「注意喚起をする」

「注意喚起」は注意を促すという意味を含むため、「呼びかける」は不要です。

「事後の後始末」➡︎「後始末」

「事後処理」または「後始末」のどちらかで十分です。

レベル1 「ここまで気がつけば立派」なレベルの不適切

以下はTPOに応じて使い分けるべきことですが、こうした気配りができるようになると、もう立派な言葉遣い上級者です!

「~みたいな、~っぽい」➡︎「~に類似する、~の特徴をもちます」【フォーマルな場で】

研究会、保護者会などのフォーマルな場では、砕けた表現は避けましょう。

「~とか、~とかいう」➡︎「~など」「~や~が挙げられます」【フォーマルな場で】

あいまいな表現や、根拠の薄い表現。学術的な厳密性を欠くため、誤解を生む可能性が高く、発表の信頼性を損ないます。

「~でございます」➡︎「~です」【親身な印象を与えたいとき】

過剰にかしこまった言葉遣いでは、相手との間に心理的な障壁が生まれることがあります。保護者と親身になって話したいときなどは、簡素な言葉遣いで距離感を縮めましょう。

「とりあえずやってみます」 ➡︎ 「まずは○○を試してみます」【上司・先輩に対して】
「とりあえず進めておきます」 ➡︎ 「優先順位を確認しながら進めます」【上司・先輩に対して】

「とりあえず」は目的や目標が不明確な印象を与えます。具体的な目標を示す言葉に置き換えるようにしましょう。

言葉の力を活かした教育現場の未来

① 言葉づかいの見直しがもたらす効果

適切な言葉遣いは、児童の学びを促進し、教育環境を改善します。差別的表現や高圧的な言葉を避け、共感的で明確な表現を用いることで、以下の効果が期待できます。

ア 児童の自尊心と学習意欲の向上
イ 教員と児童、保護者間の信頼関係の強化
ウ より活発で建設的な議論の促進
エ 時代に即した言語教育の重要性

教員は常に言葉の変化に敏感である必要があります。AIの発展により言葉の生成が容易になる一方で、人間らしい温かみのある言葉遣いの価値は高まっているのではないでしょうか。

② 今後の課題と展望

今後は以下3点について考えていく必要があります

ア 教員の言語感覚向上のための継続的な研修
イ 多様性を尊重した言語教育の実践
ウ デジタル時代における適切な言葉づかいの指導

言葉は教育の根幹をなすツールです。適切な言葉遣いを通じて、児童生徒の可能性を最大限に引き出し、豊かな学びの環境を創造することが、これからの教育現場に求められています。

社会の変化に伴う言葉の変遷は、急激です。新語・流行語など新しい言葉は、若者を中心に広がりやすいですが、すべての場面で適切な言葉とは限りません。特に、授業や説明の場では、丁寧な言葉遣いを心がけていきたいです。また、SNSでよく使われる略語やスラングは、学校では使用を控える必要があります。特に今後留意したいのは、性別に関わる言葉です。時代とともに、ジェンダーに関する意識は変化しています。男女差別の言葉や、特定の性別を固定観念で捉えるような言葉にはかなり注意が必要です。
学校は、児童が様々な価値観に触れ、成長していく場です。教員は、言葉遣いを意識し、児童の心を育むお手本となりたいです。適切な言葉遣いは、相手へのリスペクトを示し、良好な関係を築くための第一歩です。日頃から言葉遣いを意識し、よりよいコミュニケーションを目指しましょう。

イラスト/坂齊諒一


山田隆弘(ようだたかひろ)
1960年生まれ。姓は、珍しい読み方で「ようだ」と読みます。この呼び名は人名辞典などにもきちんと載っています。名前だけで目立ってしまいます。
公立小学校で37年間教職につき、管理職なども務め退職した後、再任用教職員として、教科指導、教育相談、初任者指導などにあたっています。
現職教員時代は、民間教育サークルでたくさんの人と出会い、様々な分野を学びました。
また、現職研修で大学院で教育経営学を学び、学級経営論や校内研究論などをまとめたり、教育月刊誌などで授業実践を発表したりしてきました。
『楽しく教員を続けていく』ということをライフワークにしています。
ここ数年ボランティアで、教員採用試験や管理職選考試験に挑む人たちを支援しています。興味のあるものが多岐にわたり、様々な資格にも挑戦しているところです。


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