卒業する児童に、担任から心を込めたサプライズプレゼントを贈ろう

連載
マスターヨーダの喫茶室~楽しい教職サポートルーム~

元山形県公立学校教頭

山田隆弘

卒業の日。かけがえのない子供時代を過ごした小学校から巣立ち、たくさんの思い出を胸に、児童は新たな章へと歩み出します。そんな大切な日に、担任の先生から贈られるサプライズプレゼントは、きっと一生の宝物になるはずです。卒業生を担任しているみなさん、児童の心に深く残り、未来を応援してあげられるような特別なプレゼントをしてあげませんか? わたしが実行したことや、これまで見聞きしてきたことをご紹介したいと思います。

【連載】マスターヨーダの喫茶室~楽しい教職サポートルーム~

小学校卒業生へのサプライズプレゼント、準備期間別提案

卒業する児童へのプレゼントは、やはり卒業する日に突然あげるような、サプライズプレゼントが最も喜ばれます。いつも多忙な先生方が、児童に内緒で、どれだけの時間をかけられるのかはさまざまでしょう。そこで、準備期間別に、様々なアイデアとポイントを紹介します。

長期作戦~半年くらい前から準備したいもの~

① 児童それぞれに手渡す「手作りのアルバム」
学級通信の素材などとして、日頃から学級と児童の様子を写真に撮っておられる方も多いのではないかと思います。また、各学年ごとの行事などで撮影された写真も多くあるのではないかと思います。それらを収集して、児童ごとに卒業までの思い出の写真をまとめたアルバムを作ってみましょう。業者に依頼した卒業アルバムでは収められない、生き生きとした日常的な児童の様子が伝わります。
●作成ポイント
日常的に撮影する場合、全児童がまんべんなく被写体になるように心がけておきます。また、児童ごとにフォルダに分けるなどして、分類をしておきます。写真にコメントを残しておくとさらに作りやすいです。図工の作品や身長体重のデータなどが残っていれば、それらの記録を活用するのも喜ばれます。
●活用法
卒業式当日、アルバムをプレゼントする際に、一人ひとりの児童の名前を呼びながらメッセージを伝えます。
●メッセージ例
「このアルバムには、君たちの成長がぎゅっと詰まっています。卒業しても、このアルバムを見返して、この日のことを思い出してほしいです。君たちの笑顔が、わたしにとって宝物でした。このアルバムを制作できたことを本当にうれしく思います。このアルバムが、君たちの未来への出発の合図となりますように祈っています」
●教え子談
「卒業アルバムをもらった時、クラスの皆との絆を感じることができて、とても感動しました。卒業後も、時々このアルバムを見て、せんせいや友だちとの日々を思い出しています」

② 実用的なアイテムに想いを込めて「オーダーメイド名入れグッズ」
名前やメッセージ入りのペンや鉛筆、マグカップなど、オリジナルのグッズを作成します。業者依頼の場合は、余裕をもっての依頼が必要です。
●作成ポイント
マグカップには卒業生全員の名前を入れます。ペンには、児童の名前を刻んだり、担任のメッセージを刻んだりします。
●活用例
最後の学級指導時にプレゼントし、担任の思いを伝えます。
●メッセージ例
「皆さん、一年間本当にありがとう。あなたたちとの時間は私にとって宝物です。新しい道に進む皆さんを心から応援しています。自分を信じて前に進んでください。楽しい思い出や大変だったことも、すべて成長の糧です。このクラスは素晴らしい仲間でした。その絆を大切にしてください。皆さんが次のステージでも輝くことを願っています。『さよなら』ではなく、『また会おう』という気持ちでいます。そして、わたしの分身としてこの鉛筆を贈ります。この鉛筆にはわたしが大切にしている言葉が刻まれています。新しい挑戦を楽しんでください!」
●教え子談
「いただいた鉛筆を削らないままいつも筆入れに入れていました。時々思い出して懐かしんでいました。そして、ここだ!と思う時にこの鉛筆を削って使おうと思っています」

③ 思い出を共有する「タイムカプセル」
卒業生一人一人がメッセージを書いた手紙や思い出の品を、タイムカプセルに入れます。校庭などに埋めるよりも、どこか倉庫に保管しておくほうが良いです。所在がわからなくなることがありませんし、キレイな保存状態を保つことができます。
●作成ポイント
成人式の日、あるいは卒業の10年後、20年後など、再会してカプセルを開ける日を決めましょう。
●活用法
担任が転勤したり遠くに行ったりすることもあるので、タイムカプセルの保管場所と再会の日にち、代表児童への連絡方法を全員で共有します。
●メッセージ例
「このタイムカプセルには、君たちの夢や希望が詰まっています。未来の君たちがこのカプセルを開けたとき、きっと今の自分と重ねて、たくさんのことを感じることでしょう。10年後、20年後の君たちはどんな大人になっているかな?楽しみだね。このタイムカプセルが、君たちの未来への羅針盤となりますように」
●教え子談
「タイムカプセルを開ける日が待ち遠しいです。大人になった自分にもう一度会えるのが楽しみです。タイムカプセルに手紙を書いたとき、将来の夢について深く考えるいい機会になりました」
「クラスのみんなで一緒に作ったタイムカプセルは、宝物です。大人になったとき、またみんなで集まって開けたいです」

⑵ 中・短期作戦~3か月前くらいから1か月前までに準備すれば間に合うもの~

① デジタルで未来への記憶に残す「感動」のムービー「動画制作」
各児童にアルバムを作れるほどではないが、写真や動画がかなりある場合。卒業までの思い出をまとめた動画を作成します。*無料で簡単に作成できるツール、Canva(キャンバ)がおすすめです。
●作成ポイント
画像や動画を編集し、BGMやナレーションを加えます。まず最初に使える素材を集め、全体の構成を考えてから作り始めると楽ですよ。
●活用法
最後の学級指導の時間や卒業を祝う会で上映したり、共有ドライブに上げておき、URLをQRコードなどでプレゼントします。帰宅して後で見返せるようにします。
●メッセージ例
「この動画には、君たちの成長がぎゅっと詰まっています。卒業しても、この動画を見返して、小学校での日々を思い出してほしいです。君たちの笑顔が、わたしにとって宝物です。この動画を制作できたことを本当に嬉しく思います。この動画が、君たちの未来への出発の合図となりますように」
●教え子談
「卒業動画を見て、これまでの学校生活が走馬灯のように駆け巡りました。せんせい、本当にありがとうございました」
「卒業後も、時読この動画を見ています、せんせいや友だちとの思い出を大切にしたいです」

② みんなの未来を応援する「手書きのメッセージボード」
ホワイトボードや大きな模造紙、黒板などに、児童一人一人へのメッセージを手書きする。
●作成ポイント
卒業証書授与式の会場に飾ったり、写真撮影の背景にしたりします。
●活用例
バルーンアートなどで装飾すると映えます。メッセージボードの一部を、児童それぞれに持ち帰らせるのもいいですね。
●メッセージ例
「みなさんへの思いと、みなさんのいいところを書こうとしたら、こんなに大きなボードが埋まってしまいました! みなさんのいいところを活かして、大きく羽ばたいていってください!」
●教え子談
「メッセージボードが、卒業式の会場に飾られていて感動しました。わたしの親も喜んでくれたのがうれしかったです」
「せんせいの言葉は、わたしにとって、心の支えになっています」

③ 永遠に歌い継がれる宝物「オリジナル曲の制作」
歌や音楽に心得のある方なら、オリジナルの卒業メッセージソングはどうでしょうか。
●作成ポイント
音楽に堪能な同僚に作曲を依頼したり、担任自身が作詞作曲したり。もちろん、児童がよく知っているような曲を替え歌にするのも良いでしょう。
●活用法
もちろん、最後の学級指導時に披露します。そして、オリジナル曲をCDに収録しプレゼントします。
●メッセージ例
「この歌には、君たちへの感謝の気持ちと、未来への願いを込めています。卒業しても、この歌を聴いて、この日のことを思い出してほしい。君たちの笑顔が、わたしにとってはいちばんのエネルギーになりました。そんな君たちにこの歌を贈ります」
「この歌が、君たちの未来への出発の合図となりますように」
●教え子談
「せんせいのオリジナルソングを聴いて、感動して涙が止まりませんでした。せんせいの気持ちが歌に込められていて、とても心に響きました。一生忘れられない思い出として時々あのシーンがよみがえってきます。

資料写真1
名入れ鉛筆を取り出して
資料写真2
思い出の写真をもらって

④ クラス全員による、それぞれのための寄せ書き
児童一人一人に色紙を用意し、クラス全員でメッセージを書きあっていきます。各色紙の同じ箇所に、担任がメッセージを書き込むスペースをあらかじめ設定しておいてください。クラス全員が、全員分の色紙を書き終わったあと、一旦すべてを回収し、担任が卒業する児童それぞれに向けたメッセージを書きます。
●作成ポイント
クラスメイトで協力して、個性あふれる寄せ書きを作り上げます。
●活用法
ただ贈るだけではなく、額装してプレゼントすると長持ちし、大変に喜ばれます。色紙サイズの額は、100円ショップなどでもお手軽に入手可能です。
●メッセージ例
「みんなとの楽しい思い出が詰まったこの寄せ書き。卒業しても、このクラスで過ごした日々を忘れずに、それぞれの道でがんばってください。せんせいはいつもみんなを応援しています」
「この寄せ書きには、みんなからのたくさんの愛情が込められています。この寄せ書きを宝物にして、次のステップへ進んでください」
●教え子談
「卒業のときにクラスのみんなからもらった寄せ書きは、部屋に飾って今でも大切に保管しています。みんなからのメッセージを読むたびに、当時のことを思い出して、がんばろうという気持ちになります」
「寄せ書きには、わたしへのサプライズメッセージがたくさん書かれていて、感動しました。卒業後も、この寄せ書きを見返して、みんなとの絆を感じています」

⑤ 思い出を詰め込んだ、手作りの宝物ボックス
手芸が好きな方におすすめです。小物を入れられるような箱を担任が手作りします。
●作成ポイント
包装紙やリボンで飾り付け、プレゼントのような見た目にしてみましょう。
●活用法
箱の中には、一人一人に向けたメッセージカードを入れます。
●メッセージ例
「みんなが手にした手作りボックス、このボックスを開けるたびに、クラスの皆との楽しい思い出がよみがえりますように」
「この宝物ボックスは、君だけの特別な宝物です。これからも、このボックスを開けて、学校の日々を思い出してね」
●教え子談
「宝物ボックスを開けるたびに、卒業した実感が湧いてきます。せんせいからいただいた温かいプレゼントでした」
「宝物ボックスの中には、メッセージカードなど、宝物がいっぱい詰まっています。宝物ボックスを見るたびに、友だちとの絆を感じます」

似顔絵で、担任の気持ちを絵に
絵を描くのが好きな方におすすめです。似顔絵を描いてあげてはどうでしょう?
●作成ポイント
児童のよい所(明るい、優しいなど)を絵で表現し、似ていなくても温かな笑いが生まれるようにしたいですね。
●活用法
児童のよいところを、一言添えてみましょう。
●メッセージ例
「せんせいにはみなさんのことがどう見えていたか、ということを絵にしてみました。卒業しても、せんせいはいつも君たちの味方だよ。この似顔絵は、君たちのことを一生忘れないという証です。これからも、元気でいてほしいです」
「この似顔絵に、せんせいからのたくさんの想いを込めました。君たちの未来が、素晴らしいものであることを心から願っています」
●教え子談
「卒業式の日に先生からもらった似顔絵色紙を部屋に飾っています。いただいた時のことを今でも覚えています。せんせいの言葉に励まされ、今の自分があると思っています」

資料写真3
一人ひとりに言葉を添えて
資料写真4
メッセージカードを手にして

直前作戦~1か月から1週間前でも間に合うもの~

① 心がこもった手作りのしおり
一枚一枚心を込めてメッセージを書いてしおりを作ります。
●作成ポイント
リボンやマスキングテープなどで装飾したり、ラミネートをしたりします。時間があれば、押し花を入れるのもいいですね。
●活用法
しおりに担任といっしょに一人ひとり撮った画像を入れたり、別にプリントしてしおりと一緒にわたしてもいいですね。
●メッセージ例
「みなさんの笑顔が、わたしの毎日の活力でした。卒業しても、それぞれの道でがんばってください。わたしはいつも応援しています。 ○○小学校での日々は、一生の宝物です。これからどんな困難が待ち受けていようとも、決して諦めないでください。君たちなら、きっと乗り越えられます。わたしから本にはさむしおりを贈ります。本は心のエネルギーになります。ぜひこのしおりをつかって人生を豊かにする本をたくさん読んでください」

② お花のプレゼント
これは、児童の人数が少ないときにおすすめです。鉢植えの花をプレゼントします。
●作成ポイント
卒業生の好きな花を選んだり、よい花言葉を持つ花や、季節の花をプレゼントします。
●活用法
花言葉に合わせたメッセージを添えます。
●メッセージ例
「この花に、君たちの未来がたくさんの花を咲かせるようにとの願いを込め、ここに贈ります。卒業おめでとう! 君たちが選んだ花は、どれも本当に素敵だね。この花のように、君たちもそれぞれの場所で輝いてほしいです」
「この花は、君たちとの温かい日々を象徴するものです。大切に育てて、小学校のことをときどき思い出してくれたらうれしいなあ」
●教え子談
「卒業のときにいただいた花は、今でも部屋に飾っています。せんせいからのメッセージが心に響いて、泣きそうになります」
「好きな花を選んでいただけてうれしかったです。花言葉の意味を知り、せんせいからのメッセージがさらに心に響きました」

資料写真5
みんなで思い出DVDを視聴
資料写真6
せんせいへの感謝の手紙

3  思い出に残る贈り物を選ぶためのヒント

単に物を贈るだけでなく、児童の心に響き、卒業の思い出として長く記憶に残るような、そんな贈り物をしたいですよね。思い出に残る贈り物を選ぶための3つのポイントをご紹介します。

① 児童の個性を盛り込んであげよう
プレゼントには、趣味や興味関心、将来の夢など、個々人の個性をしっかりと理解し、その児童に合ったテーマや言葉を選ぶことが大切です。

② 卒業の思い出を形にする
卒業は、児童にとって大きな転換期です。小学校での思い出、クラスメイトとの友情、担任やせんせい方との出会いなど、たくさんの思い出が詰まっているはずです。プレゼントを通して、そうした思い出を形にしたいです。

③ 未来へのエールを込めて
卒業は、新たなスタートでもあります。児童が未来に向かって羽ばたいていけるように、エールを込めたプレゼントを選びましょう。
卒業という大切な日に、児童へ贈るプレゼントは、単なる贈り物ではありません。児童の成長を祝い、未来への応援歌を送る、そんな心のこもった贈り物にしたいものです。

資料写真7
バルーン装飾で記念写真

この贈り物が、児童が自信を持って未来へと歩んでいくための励みとなり、そして担任にとっても、教員となった喜びを再確認できる、そんな機会になれば幸いです。
なお、ここに示した方法は、卒業担任だけではなく、学級替えになる学級や担任が替わることがわかっている学級などにも応用できると思います。

イラスト/坂齊諒一


山田隆弘(ようだたかひろ)
1960年生まれ。姓は、珍しい読み方で「ようだ」と読みます。この呼び名は人名辞典などにもきちんと載っています。名前だけで目立ってしまいます。
公立小学校で37年間教職につき、管理職なども務め退職した後、再任用教職員として、教科指導、教育相談、初任者指導などにあたっています。
現職教員時代は、民間教育サークルでたくさんの人と出会い、様々な分野を学びました。
また、現職研修で大学院で教育経営学を学び、学級経営論や校内研究論などをまとめたり、教育月刊誌などで授業実践を発表したりしてきました。
『楽しく教員を続けていく』ということをライフワークにしています。
ここ数年ボランティアで、教員採用試験や管理職選考試験に挑む人たちを支援しています。興味のあるものが多岐にわたり、様々な資格にも挑戦しているところです。


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