誰に相談したらよいか困ったときの相談相手とは?「教師という仕事が10倍楽しくなるヒント」きっとおもしろい発見がある! #20

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教師という仕事が10倍楽しくなるヒント~きっとおもしろい発見がある!~
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帝京平成大学教授

吉藤玲子
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教師という仕事が10倍楽しくなるヒントの20回目のテーマは、「誰に相談したらよいか困ったときの相談相手とは?」です。仕事をしていれば悩みはつきもの。仕事だけでなく人生のそれぞれの場面で相談したいことがあるでしょう。今回は、誰に相談したらよいか迷ったときの手がかりが満載です。悩んだときのヒントにしてみてください。

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執筆/吉藤玲子(よしふじれいこ)
帝京平成大学教授。1961年、東京都生まれ。日本女子大学卒業後、小学校教員・校長としての経歴を含め、38年間、東京都の教育活動に携わる。専門は社会科教育。学級経営の傍ら、文部科学省「中央教育審議会教育課程部社会科」審議員等、様々な委員を兼務。校長になってからは、女性初の全国小学校社会科研究協議会会長、東京都小学校社会科研究会会長職を担う。2022年から現職。現在、小学校の教員を目指す学生を教えている。学校経営、社会科に関わる文献等著書多数。

悩んだときには相談しよう

今、いろいろな大学でホームカミングデーなどを設け、卒業生と在校生の交流をしています。本大学でも先日、すでに教員として活躍している先輩と現役学生との交流会がありました。そのときに、学生から「現場に出てから職場の先輩たちは自分の面倒を見てくれるのか、いろいろと教えてくれるのか不安だ」という声がありました。当日参加していた卒業生からは、「現場の先生たちはとても丁寧に教えてくれますよ」という具体的な話があり、学生たちは安心していました。

仕事をしていれば悩みはつきものです。まだ仕事をしていない学生でも不安はあるのですから、日々忙しい仕事をしている先生たち、特に若手教員はいろいろと悩みがあるでしょう。また、仕事だけでなく、人生のそれぞれの場面、結婚や出産などにおいて自分のことを人に相談したいときもあるでしょう。ところが、いざ相談したいと思ったとき、誰に相談してよいか分からなくて悩んだということはないでしょうか。そんなとき、誰に相談したらよいか迷ったときのヒントをお伝えします。

誰に相談イラスト

学校の仕事のことで悩んだとき①

学級のことでの悩みは、同じ学年の先生に相談するのが一番です。学年で行動することも多いので実態も分かっているでしょうし、悩みを聞いてくれて一緒に解決してくれるでしょう。

相談しやすい先生に

でも場合によっては、なんとなく学年の先生には相談しにくいという場合もあるでしょう。人間ですから相談しづらい学年の先生に出会ってしまうときもあるかもしれません。そんなときは、一般的に使う俗語で、同じ「シマ」(※)の先生に相談してみてはどうでしょうか。職員室で机を隣りや前にしている先生方に目を向けてはどうでしょうか。例えば、5・6年の先生は同じところに机が配置されていることが多いものです。高学年という立場で一緒に行事に取り組むことも多いため管理職がそのように配置しているのですが、違う学年でも話しやすい先生に相談してみるのは悪いことではありません。

私は、新任採用(以下、新採)でいきなり5年生の担任でした。でもそのとき、よく相談に乗り、助けてくれたのは6年生の学年主任でした。とても自分と気が合い、なんとなく相談しやすかったのです。相談しやすい相手を見付けて悩みを聞いてもらうことは大事なことです。学年の先生に相談できなかったら、誰か校内で他の先生を見付けて悩みを相談してみましょう。

※机を向かい合わせにくっつけてつくったグループの一つ一つのこと。

上司や管理職に

学校内の仕事であれば、上司や管理職に相談してみるのもよいでしょう。「えっ、いきなり?」と思うかもしれませんが、副校長や主幹教諭の先生たちは、全体を見て仕事をしているので、自分が見逃していることにも気付いてくれている場合があります。長年の経験で適切なアドバイスもくれます。自分の校務分掌の仕事のことや保護者対応など、遠慮せずにたくさん経験を積んできている先生たちに聞いてみましょう。管理職に相談しづらい場合は、学年主任に一緒に付き合ってもらうのもよいかと思います。何よりも悩みを1人で抱え込んでしまうことは、余計に問題が大きくなってしまったり、自分のメンタルヘルスにもよくなかったりします。ともかく、相談してみることが大事です。

養護教諭も相談相手に

私の場合は、同じ学校内では、保健室の養護教諭の先生も相談相手の1人でした。どこの学校に配置されたときも、教諭や管理職など立場が違っても養護教諭に相談に行きました。保健室の先生は、管理職の次に学校全体を見ています。学校の様子がとてもよく分かっています。また、不登校などの子供たちの相談にも乗っているので、自分が悩んだときは頼りにしてみるとよいと思います。子供と同じように大人でもなんとなくほっとする存在なのです。

保健室の養護教諭の他には音楽の先生にもよく相談しました。音楽や図工、算数少人数担当の先生たちも、学校全体の様子をよく見ています。音楽や図工の先生は全学年を教えていることが多いので、問題の発見も早いのです。悩んでいる自分の今の立ち位置や子供たちの関わりについて適切なアドバイスをしてくれるはずです。

学校の仕事のことで悩んだとき②

区や市の研修会で

どの自治体でも研究会を開催しています。新採であれば新規採用研修会、教務主任であれば教務主任研など、それぞれの職種に応じた研修会があります。また教科や領域による研修会もあります。先生たちは必ず区や市の中でいくつかの研修会に参加することになります。そこで知り合いになったり、友達を見付けたりしていろいろと相談してみるのも大事です。さらには、研修を重ね、都や県などの広範囲の研修会で知り合いを見付けるとよいですね。仕事をしていると出会いの場も広がります。私は、都の社会科研究会の仲間には本当にお世話になりました。公私共にたくさん相談しました。今でも悩みを聞いてもらっています。同じ社会科が好きな仲間ですし、よりよい授業をつくりたいと討論した仲間でした。

管理職になってからは、校長という立場での悩みも同期にいろいろと相談してずいぶん助けられました。公立小学校といっても地域や学校によってだいぶ様子が違います。その中でがんばっている人たちに悩みを相談するとスッキリしました。

ぜひ皆さんも研修会に参加することを面倒くさがらずにいろいろな場に出かけてください。おのずと悩みを相談できる人も増えてくるはずです。

プライベートなことで悩んだとき

その道を経験した人に

プライベートなことは、学生時代の友達や自分の親など、より親密な人、自分の過去を分かってくれる人に相談することが一番です。私の場合、産休や子育てについては同じ職場の子育て経験のある女性の先輩に相談してずいぶん助かりました。どのように休みをとることがあまり職場に迷惑をかけないか、つわりがひどいときには勤務をどうしたらよいか、復帰したときの保育園の問題、子供が病気になったときの対処法など様々なことを相談しました。

学生時代に教えてもらっていた先生や大学のゼミの先生などに相談していた知り合いの教員もいます。ケースバイケースですが、自分が悩んでいるその道を経験した人に相談してみることをお勧めします。

相談場所が分からないとき

スクールカウンセラーに

相談場所が分からないときは、学校に来ているカウンセラーに相談してみるのもよいでしょう。カウンセラーは臨床心理の研修も積んでいるプロですから的確に相談に乗ってくれると思います。

私は、管理職になってからカウンセラーに相談することが多くなりました。全てのクラスをよく見ているし、決して否定的なことは言われないので安心して相談してみるとよいと思います。ただし、カウンセラーも大変忙しいので、互いの負担にならない時間帯にカウンセリングをしてもらうことが大切です。

ウェブサイトなどへ

また、この「みんなの教育技術」(みん教相談室)でも教員相談を行っています。ウェブサイトに掲載されるので不安があるかもしれませんが、丁寧に相談に応じてくれます。全く知らない相手に相談してみるのも解決の糸口が見付かる第一歩かもしれません。また、厚生労働省では「こころもメンテしよう」というメンタルヘルスのウェブサイトがあります。このように公の機関も悩み多き人たちに対応しようと努力しています。

悩みを1人で抱え込まないで

悩みは外へアウトプットして1人で抱え込まないことが大事です。早いうちに相談できる人を見付けて心を開いてみましょう。1人で抱え込んでいると負の連鎖反応が起きてしまいます。やる気がなくなった結果、辞めさえすれば解決するだろうなど簡単に思ってほしくないのです。働く希望がなくなってしまっては大変です。ぜひ、勇気を出してまず相談してみましょう。必ずあなたのことを受け入れてくれる場所があると思います。悩みがあったら相談して、すぐに解決はしなくてもあきらめずに明日への一歩を踏み出しましょう。

構成/浅原孝子 イラスト/有田リリコ

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