はじめての周回リレーはどうしたらいいの? 【使える知恵満載! ブラッシュアップ 体育授業 #66】
運動場のトラックを使った「周回リレー」は、体育の授業ではもちろん、運動会の種目としても馴染みのある運動です。コーナートップやバトンゾーンなど、リレーの基本的なルールを理解させながら、チームで競う楽しさを味わわせる指導のポイントを紹介します。
執筆/筑波大学附属小学校教諭・齋藤直人
監修/筑波大学附属小学校教諭
体育授業研鑽会代表
筑波学校体育研究会理事・平川譲
目次
1 記録をもとにしたチーム編成
子どもたちが高い意欲で取り組んだり、競走を夢中で楽しんだりするには、チームの編成が大切になります。チームを編成する前に、全員の短距離走の記録を計測し、個人記録の合計タイムが全チーム同じくらいになるように男女混合でチームを分けます。100mトラックであれば1周分、200mトラックであれば半周分の記録を計測します。直線での100m走の記録を計測してもよいでしょう。(→#34「バトンパスの知識・技能を評価するには、どうしたらいいの?」参照)
このように、全チームが記録上は同じ合計タイムで始められるので、不平不満が起きづらく、意欲的に学習をスタートさせることができます。
もちろん、タイムがピッタリにならない場合もありますが、1秒以内の差であれば問題ないと思います。人数に差が生まれてしまう場合には、平均タイム程度の架空の子どもを設定し、その子より少し(1秒程度)速い子が2人分走ることにします。もちろん、誰が2人分走るのかについては、子どもたちが納得した上で、学級ごとのルールで進めても構いません。
2 順位やチームを超える得点化
周回リレーは、競走を楽しむ反面、当然順位もはっきりします。単元を進めていくうちに順位が下位に沈むチームが固定されることも想定されます。それに伴って、自分たちのチームの勝敗にばかり気持ちが向いて、意欲を向上させにくくなる状況も考えられます。
そこでチームの記録を得点化(チーム得点)し、そのチームごとの得点の合計を「クラス得点」とします。チーム得点の更新を目指すと同時に、クラス全員でクラス得点の更新を目指すようにします(→#34「バトンパスの知識・技能を評価するには、どうしたらいいの?」参照)。
上記の表は、チームの合計のタイムが2分40秒のクラスの場合の得点表です。合計のタイムである2分40秒を「10点」とし、1秒タイムが縮まるごとに1点加算されます。
まずはチームで何点取ることができるかに向かって全力で取り組ませます。その上で、クラス得点を更新することができたのかに着目させるようにします。そうすることで、自分のチームの善し悪しよりも、全体の記録の伸びに着目し、全体で伸びたことに価値を置きながら、意欲の高いまま学習に取り組むことができます。
3 場の設定
バトンゾーンは18~20m程度に設定しています。コーナートップを判断する位置として、第3コーナーにカラーコーンを置きます。
子どもたちの待機場所をトラックの外側にすると、トラック全体を視野に入れることができ、子どもたち自身がレースの状況を把握しやすくなります。
4 バトンは左手でもらう!
バトンパスは右手でもらって、左手に持ち替える指導が多くあります。しかし、初めてトラックを使ったリレーでは、左手でバトンをもらい、右手に持ち替えて次の走者に渡すようにしましょう。
こうすることで、バトンをもらう際に、トラックの内側に体を向けて待つことができ、前の走者をずっと目で追うことができます。レースの状況はもちろん、コーナートップも確実に確認することができます。
5 親指は上向き!リードは慣れてから!
まずはミスなく確実にバトンパスができるようになることが大切です。
そのために、バトンをもらう際には大きく手の平を広げて、親指をなるべく上に向けます。こうすると、バトンを渡す的が広くなり、前の走者が渡しやすくなります。
また、慣れるまではリードをせずに、バトンを受け取るまで、しっかり自分の目で確かめるようにさせましょう。
6 抜くのは外側!
レース中は抜いたり、抜かれたりすることがたくさんあります。
その際に「基本は一番内側を走る!抜くときは必ず外側!」を徹底させます。
安全にも関わる問題ですし、トラブルが起きやすい場面でもあります。ぶつかってしまう危険性や走るのを妨害したと思われてしまう可能性に触れ、初めのうちから声をかけて意識させましょう。
7 力と心を合わせる!
自分の力を出し切ることと、チームの仲間と力を合わせることの両方の楽しさがリレーにはあります。
チームごとに作戦を立ててレースに臨むことも大切ですが、円陣を組んだり、声を掛け合ったりして、気持ちや団結力を高めて盛り上がることも大切です。
一生懸命に応援したりアドバイスをしたりする姿や、最後まで懸命に走る姿などに対して、教師は積極的に価値づけしていきます。クラス全体の雰囲気を大切にしながら、チーム得点、クラス得点の更新を目指して、学習を進めていきましょう。
【参考文献】
・筑波大学附属小学校体育研究部 平川譲、清水由、眞榮里耕太、齋藤直人(2017)『1時間に2教材を扱う「組み合わせ単元」でつくる筑波の体育授業』明治図書出版
・齋藤直人(2021)『対話でつなぐ体育授業51』東洋館出版社
イラスト/佐藤雅枝
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執筆
齋藤直人
筑波大学附属小学校 教諭
筑波学校体育研究会 理事
1985年 山形県庄内町生まれ。「体の基本的な動きを身に付け、高めること」を目指した対話(声かけ、お手伝い)でつなぐ体育授業を研究。全国の子どもたちや先生方が、今よりほんの少しでも体育授業を好きになってもらえる方法を模索中。著書に『対話でつなぐ体育授業51』(東洋館出版社)等。
監修
平川譲
筑波大学附属小学校 教諭
体育授業研鑽会 代表
筑波学校体育研究会 理事
1966年千葉県南房総市生まれ。楽しく力がつく、簡単・手軽な体育授業を研究。日本中の教師が簡単・手軽で成果が上がる授業を実践して、日本中の子どもが基礎的な運動技能を獲得して運動好きになるように研究を継続中。『体育授業に大切な3つの力』(東洋館出版社)等、著書多数。