「放課後児童クラブ」とは?【知っておきたい教育用語】

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国の関係省庁と各自治体は、すべての小学校区で子どもが放課後などに安全かつ安心して過ごせる居場所づくりのために「放課後児童対策パッケージ」を策定して進めています。その内の一つに、こども家庭庁が進める「放課後児童クラブ」事業があります。

執筆/創価大学大学院教職研究科教授・渡辺秀貴

行政施策としての「放課後児童クラブ」

【放課後児童クラブ】
保護者が仕事などで昼間の時間帯にいない小学生を対象として、授業終了後に小学校や児童館等の施設を利用し、自治体が「放課後児童クラブ」と称して遊びや生活の場を提供している。

放課後児童クラブは、国の「放課後児童健全育成事業」として実施されているもので、名称は自治体によって異なる場合があります。多くは、「学童保育」や「学童クラブ」といった名称で呼ばれています。

この事業は、国が進める「放課後児童健全育成事業」の一環として、2023年に発足した、こども家庭庁がそれまでの厚生労働省から受け継いで所管しています。経済的な必要性やキャリア志向の変化などの理由から、フルタイムで働く共稼ぎ家庭等の増加に伴い、放課後の子どもの居場所づくりが行政の施策としても必要となり、国がその予算の1/3、都道府県が1/3、区市町村が1/3の負担を原則として実施しています。

対象となる子どもは、小学校1年生から6年生まで。2017年4月までは、その対象は小学校3年生まででしたが、ニーズが高くなったために対象学年を拡大しました。当然、人数も増えますので施設や活動の内容、方法、指導員等の体制も変えることになりました。放課後児童クラブへの登録者数は、93万6452人(2014年度)から102万4645人(2015年度)と約10万人増えました。2023年度は、145万7384人ということですから、社会的なニーズが高くなっていることがわかります。

放課後児童クラブは、このように社会事情の急速な変化に対応する行政施策であり、児童福祉法第6条に基づき、こども家庭庁や文部科学省などの関係省庁が連携して事業を進めています。

放課後児童クラブの運営状況

2023年度の全国の放課後児童クラブへの登録は、145万7384人(5月1日時点)でした。しかし、登録を希望していながら、待機状態にある3年生までの子ども、4年生から6年生までの子どもはそれぞれ、500人~600人増加し、全体で1万6276人となっています。少子化の一方で、共働き家庭の増加等で待機児童解消の問題が続いていることがわかります。

この状況を受けて、こども家庭庁と文部科学省は、「放課後児童対策に関する二省庁会議」を組織し、今後の対応策などを協議し、連名で「放課後児童クラブへの待機児童の解消等に向けた学校施設等の活用について(通知)」を2023年8月に自治体へ出しています。さらに、2023年12月に閣議決定された「こども未来戦略」に基づいて、「放課後児童対策パッケージ」の推進について各自治体に通知しました。

また、登録児童数が多い都道府県は、東京都で3534人、埼玉県で1881人、千葉県で1227人と、首都圏1都2県が全国の約4割を占めています。関東の人口集中地域の該当都府県は、地域の実態に応じた施策を展開していることになります。

では、児童クラブの受け入れ体制の状況はどうなっているでしょうか。児童クラブでは、正規職員と支援員、補助員等、総数19万2144人で子どもの対応を進めています。この内、支援員は、保育士や教員免許取得者、2年以上福祉事業に従事した者など、教育や福祉に関わる資格や経験が求められていますが、人材確保が難しい現状があります。

「放課後子供教室」との違い

放課後児童クラブと混同されるものに「放課後子供教室」があります。前者の所管がこども家庭庁、後者は文部科学省が所管しています。放課後の子どもの居場所づくりの行政施策として目指すところは同じでも、放課後子供教室は、家庭の状況に関わらず、すべての小学生を対象としているところに大きな違いがあります。

小学校の施設を使うことが多く、学校の施設が使える午後5時を目安に地域の方々の協力を得て実施しています。事前の登録によって基本的には無料(保険料を取る場合もある)で、子どもが校庭などを使って遊んだり、地域の方との交流を楽しんだりします。

また、実施日数にも大きな違いがあります。放課後児童クラブが行政の専任職員を中心に年間250日常に運営しているのに対し、放課後子供教室は、行政から任された地域の協力者などで年間平均110日程度の運営となっています。

一方、放課後児童対策パッケージでは、親の就業状況に関わらず、すべての子どもの安全で安心できる放課後の居場所を作るという観点から、この両者の事業が連携していくことを施策目標としています。同じ小学校内の放課後児童クラブと放課後子供教室の子どもが交流できるよう、「連携型」にすることで、2つの事業の運営を補完し合う体制づくりを進める方針が国から打ち出されています。

「放課後児童クラブ」の課題

学校生活と家庭生活の間をつなぐことの意味合いをもつ放課後児童クラブには、通っている子どもにとって安全かつ安心に、しかも楽しく過ごせる場であることが求められています。学校が終わり、親が帰ってくるまで一人で過ごさなければならない状態が継続することは、健全な成長に支障をきたす可能性もあります。全国で1万人を超える待機児童の解消が最も大きな課題といえそうです。

また、放課後児童クラブの職員からは、先生でもなく親でもない立場で指導や支援することの難しさがあるという声も出ています。子どもの状態や預ける保護者の思い、考え方も多様化していることへの対応を含めた、当該職員としての専門性の向上も課題です。さらには、教員不足と同様、継続的に支援員等を務める職員の確保も難しいという報告もあります。

放課後児童クラブや放課後子供教室を拡充し、連携型あるは一体型にしていく行政の施策が打ち出されていますが、そもそも異なる目的と様態でスタートさせた事業の統合は難しいものです。また、小学校の余剰教室などの活用にしても、この事業を必要とする子育て世代が多い地域の小学校における児童数は、増加傾向にあり、教室が足りないという学校も珍しくはありません。施策の理念と現場の実態が乖離した問題がここでも表出しています。

さらに、職員の待遇改善の問題もあります。放課後という限られた時間で生計を立てるには、相応の待遇の工夫が必要です。学校と家庭の生活をつなぐ、子どもの成長に関わる仕事を単発のアルバイトで埋めていくというわけにはいきません。この問題も含め、公設民営化によって放課後児童クラブの質と量の改善を図ろうという自治体もあり、今後は公民連携の運営の動きがさらに進みそうです。

▼参考資料
こども家庭庁(PDF)「放課後児童対策パッケージ」令和5年12月25日
こども家庭庁(PDF)「令和6年度以降の放課後児童対策について(通知)」令和6年3月29日
こども家庭庁(PDF)「放課後子供教室と放課後児童クラブの一体型の推進に向けた取組
こども家庭庁(ウェブサイト)「放課後児童健全育成事業について
文部科学省(PDF)「『放課後子どもプラン』の概要
厚生労働省(PDF)「放課後児童クラブと放課後子ども教室について

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