小1特別活動「みんな仲よくーふわふわ言葉とちくちく言葉ー」指導アイデア
前文部科学省視学官監修による、小1特別活動の指導アイデアです。10月は、学級活動(2)イ「みんな仲よくーふわふわ言葉とちくちく言葉ー」の実践例を紹介します。
執筆/鳥取県公立小学校教諭・松田菜結
監修/帝京大学教育学部教授(前文部科学省視学官)・安部恭子
鳥取県公立小学校校長・太田敦弘
目次
年間執筆計画
04月 学級活動(1) 学級会を始めよう!(学級会オリエンテーション)
05月 学級活動(2)ア 元気にあいさつ
06月 学級活動(2)ウ 上手な歯の磨き方~6歳臼歯は歯の王様
07月 学級活動(3)ウ 楽しさ発見 学校図書館
09月 学級活動(1) わくわくハッピー係活動をしよう
10月 学級活動(2)イ みんな仲よくーふわふわ言葉とちくちく言葉ー
11月 学級活動(1) 1年〇組ジャンボかるたを作ろう
12月 学級活動(3)イ きれいな教室
01月 学級活動(2)エ 楽しい給⾷
02月 学級活動(3)ア もうすぐ2年生
03月 学級活動(1) 友達集会をしよう
本時の内容
本題材である「みんな仲よくーふわふわ言葉とちくちく言葉ー」は、学級活動(2)「日常の生活や学習への適応と自己の成長及び健康安全」のイ「よりよい人間関係の形成」の指導内容です。
ここでは、その指導法について紹介していきます。この記事では、国立教育政策研究所が作成した「小学校 特別活動指導資料」を参考に、「つかむ」「さぐる」「見つける」「決める」の流れで行っていきます。
〇「つかむ」…実態や現状の把握
アンケートや子供たちの発言を通して、教室に溢れている言葉を再認識し、よりよい言葉を使いたいという意欲を高めます。本実践では、事前アンケート結果の活用とともに、絵本『ことばえらびえほん ふわふわとちくちく』(監修:齋藤孝著、絵:川原瑞丸/日本図書センター)の読み聞かせを行い、「ふわふわ言葉」と「ちくちく言葉」の意味について共通理解を図るようにします。
〇[さぐる]…原因の追求・改善への意欲付け
だれもが少なからずちくちく言葉を使ってしまった経験があることから、ちくちく言葉を使うとどんな気持ちになるか、ふわふわ言葉を使うとどんな気持ちになるかを考え、ふわふわ言葉を使うよさについて話し合います。
〇[見つける]…解決方法などの話合い
どうすればちくちく言葉を使わず、友達とコミュニケーションをとることができるのか、言い換えることを通して学習します。また、「つかむ」で出てきた言葉を参考に教室に溢れさせたい言葉を「1ねん◯くみ なかよくなれることば」として決めていきます。
〇[決める]…個人目標の意思決定
「1ねん◯くみ なかよくなれることば」の中から特に自分が積極的に使っていきたい言葉を決め、ワークシートに記入します。また、いつ、どんなときに使うのかを書くことで、行動につなげられるようにします。
事前の指導
◯事前アンケートの実施
友達の言葉で嬉しい気持ちになったことがあるか、それはどんな言葉か、友達の言葉で嫌な気持ちになったことがあるか、それはどんな言葉かについて事前にアンケートをとります。結果をグラフなどにまとめ、可視化できるようにしておきます。
子供たちの多くは、自分では「嫌なことを言ってない」、でも「言われた経験はある!」という認識のため、アンケートに「ともだちにいやなことばをいわれたことはありますか。」「ともだちにいやなことばをいったことはありますか。」という項目を付け加えることも考えられます。
集計結果をグラフに示して、ギャップに気付かせ、「自分では言ったつもりはなくても、言ってしまっているのだ」という自覚を高め、言ってしまう原因を考えるようにします。
◯絵本の活用
上述の『ことばえらびえほん ふわふわとちくちく』のほかにも、『しあわせのバケツ』(作:キャロル・マックラウド、絵:デヴィッド・メッシング/TOブックス)、『ちくちくとふわふわ』(作・絵:なないろ/CHICORA BOOKS)など、1年生にも分かりやすく言葉の大切さを伝えるための絵本があります。学校図書館司書の先生と相談して、児童の実態に合った本を借りておくとよいでしょう。
※本実践では、「つかむ」段階で活用しましたが、授業の終末に活用することも考えられます。
本時のねらい
この時期は、運動会等の大きな学校行事を終え、新学期が始まってから日数が経っているため、「目標をもってがんばろう」「教室を温かい言葉で溢れさせよう」という意識が薄れがちです。教室に溢れる言葉は、教室の空気や子供たちの安心感、居場所感に影響を与えます。
本時は、子供たちが、自分が普段から使っている言葉を振り返り、自分では意識していなくてもちくちく言葉を使ってしまうことがあるということに気付かせるとともに、ふわふわ言葉を使っていきたいという意欲を高めること、自分が使いたいふわふわ言葉を決め、行動につなげることをねらいとします。
本時の指導
〇[つかむ]…自分たちの使っている言葉について関心をもち、課題をつかむ
アンケートを通して、友達の言葉で嬉しい気持ちになったことがあるか、それはどんな言葉か、友達の言葉で嫌な気持ちになったことがあるか、それはどんな言葉かを明らかにします。アンケートの結果をグラフなどにまとめ、自分たちの使っている言葉について振り返ることができるようにします。
本実践では、絵本『ことばえらびえほん ふわふわとちくちく』の読み聞かせを行い、相手の心が元気になったり楽しくなったりする言葉を「ふわふわ言葉」、相手の心が痛くなったり切なくなったりする言葉を「ちくちく言葉」ということを伝え、共通理解を図ります。
言葉のアンケートの結果を見てみましょう。
「ありがとう」って言葉はたくさんの人が嬉しくなるって答えているね。
「バカ」「あっちいって」って相手を嫌な気持ちにする言葉だけど、使ってしまったことがあるなあ。
相手を嫌な気持ちにする言葉が溢れているクラスでは、楽しく過ごしたり、友達と仲よくしたりできないよね。
(絵本『ことばえらびえほん ふわふわとちくちく』の読み聞かせを行う)
相手の心が元気になったり楽しくなったりする言葉を「ふわふわ言葉」、相手の心が痛くなったり切なくなったりする言葉を「ちくちく言葉」と言うんだよ。
〇[さぐる]…どうして、ちくちく言葉を使ってしまうのかをさぐる
どうして、ちくちく言葉を使ってしまうのかをさぐるとともに、ちくちく言葉を使うとどんな気持ちになるか、ふわふわ言葉を使うよさは何かを考えることで、改善の必要性を感じることができるようにします。
どうして、ちくちく言葉を使ってしまうのかな。
イライラしたときに言ってしまう。
気分が悪いときに、つい言ってしまう。
ちくちく言葉を言われた相手はどんな気持ちになるだろう。
いやな気持ちになる。
友達だと思われてない気がする。
ちくちく言葉は、友達が悲しくなったり、いやな気持になったりするから、友達には使わない言葉なんだね。
ふわふわ言葉を使うよさは何だろう?
嬉しくなる。
言われたら、ニコニコになる。
心がぽかぽかする。
ふわふわ言葉をたくさん使って、温かいクラスにしていきたいね。
〇[見つける]…ちくちく言葉を減らして、ふわふわ言葉を増やすにはどうしたらよいか考える
これまでつい言ってしまっていたちくちく言葉を減らして、ふわふわ言葉を増やすためにはどうしたらよいか考えたり、ちくちく言葉をふわふわ言葉にして言い換えてみたりします。その後、学級で大切にしたい言葉集めをします。
ちくちく言葉を減らして、ふわふわ言葉を増やすにはどうしたらいいかな。
すぐ言い返さないで、やさしく言ったらいいと思う。
ふわふわ言葉を毎日たくさん使ったらいいと思う。
普段みんなが使ってしまっているちくちく言葉をふわふわ言葉に言い換えてみよう。
友達に「貸して」って言われて、「やだ!」って言っちゃうときがあるので、「ちょっと待ってね」と言い換えたいな。
友達のおしゃべりに「うるさい!」ではなく、「小さな声でお話しして」と言うようにしたいな。
ふわふわ言葉を使って「1ねん◯くみ なかよくなれることば」を集めてみよう。どんな言葉を大切にしていきたいかな。
「ありがとう」ってたくさん言いたいな。
「上手だね」って言われたら嬉しいから大切にしたい。
「ちくちく言葉を言い換えればよい」「ふわふわ言葉をたくさん使えばよい」だけでなく、カッとなってちくちく言葉を言わないようにすることや、相手の気持ちを考えて言うことの大切さにも触れるようにします。
〇[決める]…教室に溢れさせたいふわふわ言葉と、自分が特に使っていきたい言葉(個人目標)を決める
教室に溢れさせたい言葉を「1ねん◯くみ なかよくなれることば」として決め、「1ねん◯くみ なかよくなれることば」の中から特に自分が積極的に使っていきたい言葉を選び、個人目標を決めます。
「1ねん◯くみ なかよくなれることば」の中から、自分が特に大切にしたい言葉とその言葉をいつどんなときに使うか考えてみよう。
クラスの状況や子供たちの関係によって、いろいろな言葉が考えられるため、クラスとして言葉をしぼらずに示し、その中から自分が特に使いたい言葉を決めるとよいでしょう。
◆個人目標シート例
※資料1 個人目標シート「ぼくの・わたしのふわふわことば」は、下記ボタンからダウンロードできます。
◆板書例
事後の指導
「1ねん◯くみ なかよくなれることば」と個人目標を掲示し、そのような発言が子供たちから出た際に、すかさず認める言葉がけを行います。また、そのふわふわ言葉を1日○回言うなど、目標を数値化して決め、個人目標のシートに自分で振り返って色を塗るなどの工夫も考えられます。
イラスト/高橋正輝、イラストAC