小1国語「おおきなかぶ」京女式板書の技術
今回の教材は、有名な物語文の「おおきなかぶ」です。この単元の学習課題は、「みんなで楽しみましょう」です。本時では、お話を声に出して読み、学習のまとめをします。かぶや登場人物を記号化して場面ごとに人が増えていくことの楽しさを、声に出す活動と重ねて経験します。その際の子供たちのよりどころとなる板書の工夫を紹介します。
監修/元京都女子大学教授
同附属小学校校長・吉永幸司
執筆/京都女子大学附属小学校教諭・松下祐子
教材名 「おおきなかぶ」(光村図書出版)
目次
単元の計画(全6時間)
- お話のはじめの場面を読む。
- 2・3場面を読む。
- 4・5・6場面を読む。
- 7場面を読む。
- お話を声に出して読み、これまでの学習のまとめをする。
- 外国の昔話を読み、お話を楽しむ。
板書の基本
〇教材「おおきなかぶ」には、「みんなで たのしみましょう。」という学習課題に向けての具体的な2つの学習活動があります。
・やくを きめて よもう。(劇化)
・うごきながら こえに だそう。(動作化)
この2つの活動は、直接楽しさにつながります。しかし、同じ活動の繰り返しでは、入門期の子供たちは、緊張感がゆるむことを経験として分かっています。そこで、これらの学習活動を満足させながらも、他の視点から考えた「たのしみましょう。」につながる学習活動が本時です。特に、「かぶは、ぬけません。」の繰り返しは、「うんとこしょ、どっこいしょ。」と同じように、「たのしみましょう。」につながると考えました。一覧にすると、次のようになります。
・けれども、かぶは ぬけません。
・それでも、かぶは ぬけません。
・やっぱり、かぶは ぬけません。
・まだまだ、かぶは ぬけません。
・なかなか、かぶは ぬけません。
特に、「けれども・それでも・やっぱり・まだまだ・なかなか」の言葉の響きは、楽しく音読することができると同時に、場面の様子を想像する上で役立つ語彙でもあります。声に出して繰り返し読むことの楽しさを経験させようと考えました。
〇本時までに、場面ごとに「おじいさんは、おばあさんを よんで きました。」の文、つまり、「( )は、( )を よんで きました。」という文型を習得しています。また、「かぶを おじいさんが ひっぱって、おじいさんを おばあさんが ひっぱって、」と「うんとこしょ、どっこいしょ。」の繰り返しも楽しんで学習してきました。
それぞれ場面ごとに楽しんできた学習活動のまとめとして、本時の板書では、次のことを工夫しています。
・かぶや登場人物を記号化して、場面ごとに人が増えていくことの楽しさを、声に出す活動と重ねて経験をすること。
・「おじいさんは、おばあさんを よんで きました。」などの場面が変わったことを説明する文と「うんとこしょ、どっこいしょ。」は板書しないで覚えさせ、覚えたことを声に出すという学習形態を繰り返すこと。
このように、まとめの段階の板書として、既習事項を生かし、さらに、新しさへの興味をもたせることを意図したものにしました。
板書のコツ(5/6時間目前半)
板書のコツ①
日付・題名・めあてを板書します。めあては、次の通りです。
「おおきな かぶ」を こえに だして よもう。
続いて、おじいさんがまいたかぶの種が育ち、「あまい あまい、おおきな おおきな かぶに なりました。」の文を音読させた後、板書をします。「おおきな おおきな」と2回書いてあるのは、とても大きく育ったことを表していることを、既習事項として確認をします。
板書のコツ②
まず、かぶの絵を示し、●に置き換えることを説明します。さらに、〇とつなげると「かぶを おじいさんが ひっぱって、」の文を表すことを説明し、声に出して読ませます。「けれども、かぶは ぬけません。」を板書します。
次に、●のカードを黒板に貼り、「これは、かぶです」と説明します。続けて、二つ目の○のカードを「これは、おじいさんのカードです」と説明し、3つ目の〇のカードを示し、「これは、だれのカードでしょう」と問いかけます。「おばあさんのカード」であることを説明し、「かぶを おじいさんが ひっぱって、おじいさんを おばあさんが ひっぱって、」と声に出し、続いて「うんとこしょ、どっこいしょ。」と続けます。その後、「それでも、かぶは ぬけません。」と板書します。
板書のコツ③
次の場面は「おばあさんは、まごを よんで きました。」から始まります。場面が変わったことに気づかせ、同じように〇のカードを黒板に貼っていきます。途中で、「これはクイズです」と言って、「この○は誰でしょう」という方法もあります。〇が記号ではなく、頭の中で擬人化され、挿し絵の登場人物になるような支援をします。
「やっぱり、かぶは ぬけません。」という文は、この段階では、板書しないで、板書をはじめから読み返し、〇の理解ができているかどうかを確かめます。
板書のコツ(5/6時間目中盤)
板書のコツ①
板書の〇のカードを確かめながら、「おおきなかぶ」の文を声に出して確かめます。覚えている子は暗唱し、覚えていない子は、教科書を見ながら音読させます。
「けれども、かぶは ぬけません。」「それでも、かぶは ぬけません。」の「けれども、」と「それでも、」に赤チョークで波線を引き、「おばあさんを まごが ひっぱって、」の後、どうなったかということに着目させます。
「やっぱり、かぶは ぬけません。」と板書し、大きなかぶであることを想像させます。「やっぱり、」に注目をさせる板書です。
板書のコツ②
おばあさんやまごのときと同じように、いぬやねこの〇カードを板書に貼ります。
「まごは、いぬを よんで きました。」の場面では、〇カードを見ながら「かぶを おじいさんが ひっぱって、」から「うんとこしょ、どっこいしょ。」までを声に出して読み、「まだまだ、かぶは ぬけません。」と板書します。
同じような文が続きますが、記号になっているので、緊張感を持続させることができます。
続けて、ねこ、ねずみと進めていきます。
板書は「ねこを ねずみが ひっぱって、」のところまでにして、「とうとう、かぶは ぬけました。」は、この段階では板書をしないで、ここまでのことを黒板で確かめるようにします。
特に、本板書では、次の文を意識して指導をします。次の文「とうとう、かぶは ぬけました。」に、期待感をもたせるとともに、語彙を広げることを大事にしたいからです。
・けれども、かぶは ぬけません。
・それでも、かぶは ぬけません。
・やっぱり、かぶは ぬけません。
・まだまだ、かぶは ぬけません。
・なかなか、かぶは ぬけません。
かぶを抜きたい気持ちが「けれども・それでも……」に出ているからです。
板書のコツ(5/6時間目後半)
板書のコツ①
「とうとう、かぶは ぬけました。」で、お話は完結します。そのときの、登場人物がどんなことを言ったかは、想像できます。それを、言葉にするという学習活動です。まず、「とうとう、」から始まる文を板書し、登場人物になって、言ったであろう言葉を考えさせます。
板書のコツ②
登場人物が言った言葉は「やっとぬけた。」「大きいかぶだな。」という意味の言葉です。そこで、より想像を広げるために、ワークシートを用意しておきます。
ワークシートには、おじいさんの絵と余白があります。余白には、まず、抜けたかぶを絵で表現させます。この絵が、子供たちそれぞれが想像した「おおきなかぶ」です。言葉を絵で表現するという子、絵と言葉で表現する子の違いはあっても、本時のめあてである「たのしい」につながる学習活動です。
構成/浅原孝子