教員不足①【わかる!教育ニュース#48】
先生だったら知っておきたい、様々な教育ニュースについて解説します。連載第48回のテーマは「教員不足①」です。
目次
中央教育審議会特別部会は教職調整額の引き上げを提言
人口が減っている日本では、どの職場も人手不足が悩みの種。優秀な人材を取り込むには、働く人の視点に立った労働環境にすることが欠かせません。多忙な職場と見られている学校でも、深刻な教員不足の打開は急務。改善策を議論してきた中央教育審議会の特別部会はこのほど、提言案をまとめました。柱は3つ。教員の処遇改善、働き方改革、指導や運営体制の充実です。
処遇改善の目玉は、教職調整額の引き上げ。実現すれば約50年ぶりの増額です。
教員給与特別措置法(給特法)では、教員に残業代を出さない代わりに、月給の4%分を一律に上乗せして支給する教職調整額を定めています。教育人材の確保を重視し、給与面で他の公務員より手厚くするために設けた仕組みです。
けれど、公務員全般の待遇改善などが進み、相対的に教員への優遇は低減。忙しさが増す中で、職業としての魅力が薄れていると指摘されていました。残業代を払うことも取り沙汰されましたが、結局、教職調整額は維持し、10%以上引き上げるとしました。他に、学級担任の手当加算や管理職手当の増額にも言及しています。 働き方改革では、教員の残業時間を月45時間以内に抑え、将来的に月20時間程度に減らすとも掲げました。また、終業から次の始業まで一定時間空ける「勤務間インターバル」も、11時間を目安に取り入れるように促しています。
教科担任制を小3、4にも広げる
教職調整額の話題で目立ちませんでしたが、指導や運営体制の充実では、小学校への影響が大きい事柄が提案されています。新卒1年目は学級担任をもたせない。若手教員をサポートするポストの新設。そして小5、6で行っている教科担任制を、小3、4にも広げることです。
教科担任制は、2022年度に本格導入された制度。学習内容が高度になる高学年には専門性の高い指導が求められることや、小中間の円滑な接続が唱えられ、まずは理科、英語、体育、算数を「優先教科」として始められました。
利点は、全教科の授業準備をする教員の負担が減り、指導や教材の研究に打ち込めること。1人の子を複数の教員の目で多角的に見ることもできます。反面、教員間の連携や教科横断の学びを展開するむずかしさといった問題が指摘されています。
ただでさえ足りない教員の確保も課題。文科省によると、教科担任制の導入率は22年度で小6の理科が65.4%、外国語は48.9%ですが、体育は21.7%、算数は15.9%と教科によって差があります。チームティーチングや、中学校教員の指導でしのぐケースもあります。 提言案も「専科指導のための、教職員定数の改善を図る必要がある」と言い添えています。人件費の財源や教員の確保が絡む話。「小3、4へも拡大」と言っても一気に広げるのは簡単ではなく、当面は現場が知恵を絞ることになるかもしれません。
【わかる! 教育ニュース】次回は、6月15日公開予定です。
執筆/東京新聞記者・中澤佳子