いじめに気づいたら!担任教師がすぐとるべき4つの対処

長年、いじめや不登校の問題に正面から向き合い続けて来た現役教師が、クラスでいじめの情報をキャッチした時に担任がすべき具体的なフローを提案します。たくさんの事例と向き合ってきた著者だからこその、教師が犯しがちなミスや、陥りがちな心理状態への指摘は、ハッとさせられるものばかりです。

執筆/北海道公立中学校教諭・千葉孝司
ちばこうじ●1970年、北海道生まれ。いじめ防止や不登校に関する啓発活動に取り組む。ピンクシャツデーとかち発起人代表。著書『いじめ 困った時の指導法40』『不登校指導入門』(以上明治図書)『空気マン』(なごみすと)他。
目次
炎上NGワードを口にしない!

あなたにも悪いところがあるよね。
これは絶対にNGです! いじめを訴える子どもに絶対に口にしてはいけません。もしも責任ある立場の人が、犯罪の被害にあった人に、「被害者側にも落ち度がある」と口にすれば、炎上し大問題になることでしょう。
たしかに戸締りをしていない家が、空き巣の被害に遭うこともあるでしょう。しかし鍵があいていたから空き巣に入ってもよいという話には絶対になりません。確かに、いじめを誘う性質というのは存在します。しかし、何があってもしてはいけないのがいじめなのです。
いじめの行為そのものは絶対に許容してはなりません。
実際にいじめは、まじめでおとなしい子どもがターゲットにされやすいものです。なぜなら反撃されるリスクが低いからです。
「それはつらいね」
「気が付かなくて悪かったね」
「絶対に守るからね」
いじめを訴える子どもにはこんな言葉をかけ、安心させる必要があります。
では、仮に自己中心的な言動が、いじめを誘発していると思われる場合はどうでしょうか。対応は同じです。被害者側の気になる点、改善すべき点への指導には、いじめが解決してから取り組むべきなのです。
あの時はつらい思いをしたけど大丈夫? 二度とあんな思いをしないために、何か自分で工夫できることはあるかな。
こう振り返らせ、教訓をつかませます。間違っても、いじめの渦中で「あなたにも原因があるだろう」と口にしないようにしましょう。

【関連記事】保護者から「うちの子がいじめにあっているらしい」と相談を受けたら、この記事もチェック → いじめ・仲間はずれの解決は学校チームで!「保護者あるある」
管理職への報告
いじめの情報をキャッチした時に、担任が最初にすることは何でしょうか。情報収集でしょうか。家庭への連絡でしょうか。被害者へのケアでしょうか。
答えは、管理職への報告です。
「ただの悪ふざけかもしれないし、何だか言いにくいなあ」という思いを抱くこともあるでしょう。言いたくないという気持ちがあると、言わなくてもよい口実が次々と浮かんでくるものです。言いにくいという気持ちの奥には、どんな思いがあるでしょうか。
「こんなことが起きてしまって、何だか恥ずかしい」
「自分の学級経営にダメ出しをされるんじゃないだろうか」
「ダメな担任だと思われるんじゃないだろうか」
「がっかりされるんじゃないだろうか」
そんな思いに対して、その一つ一つにきちんと反駁してください。きちんと向き合うことが大事です。なぜなら担任が、いじめを管理職に報告したくないなあと思う心理は、被害者が担任に打ち明けにくいなあと思う心理に似ているからです。被害者の場合は、さらに加害者からの報復を恐れる心理も働きます。
「いじめ防止対策推進法」が施行されてからも、重大な案件は起き続けています。せっかく学校、地域が一体となって取り組むシステムがあっても、機能しない場合も多くあります。その理由は、担任がその事案をいじめだと感じていないことと、自分で何とかしようと考えることにあります。
いじめを訴えても、教師にいじめだと認めてもらえない児童生徒がたくさんいます。それはいじめに対する感度に差があるからです。いじめに対して敏感な教師も鈍感な教師もいます。だから担任一人の判断に委ねるべきではないのです。
周囲の教職員よりも、担任である自分が一番子どものことを知っているのに……。
そう思う人もいるかもしれません。知っているからこそ危険なのです。そこには「〇〇さんも、周りに同じくらいのことをやっているし、普段から平気な顔をしているし、大丈夫だ」といった判断や思い込みが生まれるからです。
いじめは、衆知を集めて、学校全体として対応すべき事案です。そのスタートラインは管理職への報告です。「こんな話を耳にしたのですが……」とその日のうちに伝えましょう。