【相談募集中】保護者から「評判が悪い先生だ」と言われました

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千葉県公立小学校教諭

松尾英明

20代の先生から「みん教相談室」に相談が寄せられました。保護者から「評判が悪い先生だ」と言われて、どのような心持ちでがんばればよいか悩んでいるそうです。この相談に、全国の教員や保護者を対象にセミナーや研修会を行うなどの情報発信を行っている松尾英明先生がアドバイスしてくれました。こちらでシェアします。

悩んでいる先生
イラストAC

Q.保護者から「評判が悪い」と言われて悩んでいます

担任をしていた児童の保護者から、「もっと子どものことを見てほしい。評判が悪い先生だ」のような電話を受け、悩んでいます。

私は自分の時間も大切にしたいので、残業をしてまで丁寧に仕事をしていなかったことが悪いのかもしれません。

しかし、やはり「評判が悪い」と言われると、辞めてしまいたいなと思います。どのような心持ちでがんばればよいのでしょうか。(うた先生・男性・20代)

A.多くの先生が経験していることです。辞めずに一緒にがんばりましょう

とても辛い状況ですね。私自身も似たような経験がありますが、実際に担任をした保護者からそのように言われるのは、精神的に相当なダメージを受けます。そして、私自身が『捨てる!仕事術』や『不親切教師のススメ』というようなタイトルの本を書いていることもあって、ますます他人事ではない内容です。

結論を先に述べると

「決して辞めずに一緒にがんばりましょう」

です。

嫌なのは十分、痛いほどよく分かりますが、安心してください。うた先生のようなことを言われるのは、決して珍しいことではありません。実際は、多くの人が経験する「必修科目」のようなものです。多かれ少なかれ、同様のことを言われます。

(もし周りに「私は言われたことがない」という人がいたら、単に陰で言われているのに気付いていないだけです……。ただし「知らぬが仏」で、余計なことを言うのは「藪蛇」ですので、そこはむきになって説得せずにそっとしておきましょう。)

さて、最初に整理すべき内容は「評判が悪い先生だ」の部分です。これは、誰が言っていると感じますか? 恐らく多くの人は「みんな」そう思っているんだ、と直感的に受け取ってしまいます。

しかしこれは、完全な誤認です。正確には、当該の保護者がまず1名。もしかしたら、その保護者と仲の良い方も同調しているかもしれないので、もう1名か2名。今の時点で、多く見積もって3名ですね。ただし「同調しているフリして本当はそう思っていない」というのもよくあるパターンです。学校における「ママ友」の人間関係のバランスの取り方は極めて難しいそうです。この調子で増やしていけば、クラス全員の35名程度に届きそうでしょうか。恐らく、ここから先の増やし方がわかりませんね。

「みんな」に評判が悪いというのは、何かよほどの傍若無人ぶり、悪逆無道をしてきたという場合以外、通常考えられません。「集団署名で管理職に訴えてきた」というレベルの場合はさすがに悩むでしょうが、今回はそれではなさそうです。いわゆる余程の「スーパースター教員」でもない限り、恐らく8割方は「まずまず」「普通」という評価です。

つまり「評判が悪い」と言っているのは少数かも、という気持ちの押さえが必要です。(逆に「みんな」いいクラスだと思っていた、いい先生だと思っていたはずだというのも、相当危ない勘違いです。そんな状況はまずあり得ません。)

次に「もっと子どものことを見てほしい」は願いです。願いは、叶えてくれそうな人にしか言いません。つまり、わざわざ電話してくるぐらいですから、うた先生に対し「言えばわかってくれるかも」と期待されているということです。

少なくとも「言っても無駄」というように絶望されていないことは間違いありません。「言ったらうちの子どもが酷い目に遭うかも」というように捉えられていないという点でも、ある意味安心されています。

また、20代という若さも、保護者にとって言いやすいポイントです。(40代以降になると、何につけても気を遣われて気軽に言われにくくなり、それはそれで恐ろしいことです。)

次に、うた先生の仰る「自分の時間も大切にしたい」は、重要です。自分を犠牲にしてまで頑張ってしまう人は、周りにも同様のことを求めます。不幸をまき散らす人になってしまいます。また、そういう子どもを育てかねません。恐ろしいことです。

「犠牲」と感じるまで仕事をするのは、明らかに誤りです。自分や家のことを「犠牲」にしてまで仕事をする人が職場にいるのは、昭和の時代には推奨されましたが、令和の今では傍迷惑です。(責任の重い管理職の方々の場合の事情は、また別かもしれません。)

教材研究でわくわくするような状況の「時間をたくさん使ってでもやりたい」や、苦しんでいる人を助けたい時の「やってあげたい!」というような気持ちとは全く違います。そういう場合は、犠牲とは言わないので、大いに時間を使えばいいのです。そのための残業なら、してもよいでしょう。

一方「丁寧に仕事をしていなかったことが悪かったのかも」という反省は大切です。うた先生は自分でそう思えること自体、まず立派です。これは、次につながります。至らない点があったかもしれない、という自己反省を促してくれるのは、こういった厳しい言葉のお陰ということが多々あります。

例えば私は、ある年、自分の時間を費やして学級通信を書いていました。それこそ、家庭の時間も犠牲にしていたと思います。しかしある日、保護者の方お二人から「紹介する子どもが偏っている」「もっといろいろな子どものことを書いてほしい」と苦言を呈されてしまったのです。

その時はショックでしたが、そういった落ち度は、他人に言われないとなかなか気付きません。もちろん、その後は気を付けて出すようになり、そのようなトラブルもなくなりました。

総じて言えば、今回の件はうた先生が長い教員生活を営んでいく上で、有意義かつ必要な経験だったといえるでしょう。嫌なこと、辛かった経験の価値は、後になってこそわかるものです。(学生の頃に出会った、厳しかった先生の授業や難しかった課題のようなものです。)

今は私に騙されたと思って、是非この仕事を続けてください。きっと「とりあえず騙されておいて良かった」と思うはずです。

いつでも、先生方は決して一人ではありません。「みん教」もいます。一緒にがんばりましょう!

割と親切な教師松尾英明

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不親切教師のススメ
『不親切教師のススメ』(さくら社)
「捨てる」仕事術
『「あれもこれもできない! 」から…「捨てる」仕事術 忙しい教師のための生き残りメソッド』(明治図書出版)

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