「教育委員会」の役割は?教育委員会と学校の関係~シリーズ「実践教育法規」~

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横浜市立大学国際教養学部准教授

阿内春生

田中博之

『規範意識』という言葉があります。それは単に法律や制度に則って行動する、というだけでなく、法律を支える道徳的原理に基づいて行動する、ということです。国の法のもとで運営されている学校機関に勤めるすべての先生にとって、規範意識は教育活動の下支えとなる大切な素養。もちろん、管理職の職務遂行時にはもちろん、昇進試験で問われる大切な知識でもあります。
本連載は、教育に関する法令や制度に詳しい早稲田大学教職大学院・田中博之教授監修のもと、そんな「教育法規」をわかりやすく解説していきます。
第4回は「教育委員会と学校の関係」です。教育委員会の教育行政における立ち位置や、役割についておさらいしていきましょう

執筆/阿内 春生(横浜市立大学国際教養学部准教授)
監修/田中 博之(早稲田大学教職大学院教授)

【連載】実践教育法規#4

教育委員会の業務

市町村・都道府県には、地方自治法上の行政委員会の一つである教育委員会が設置されます(地方自治法第180条の8)。教育委員会は執行機関であり、市町村・都道府県内において、首長やその他の行政委員会とともに「……地方公共団体の事務を、自らの判断と責任において、誠実に管理し及び執行する義務を負う」(地方自治法第138条の2)ものです。地方自治体において学校に関する事務を管轄するのが教育委員会です。

地方自治体の仕事と関連する執行機関の図
教育委員会は、地方自治体の行政委員会の一つ(筆者作成)。

学校はその設置者である地方自治体の教育委員会の管理に服しますが、ここでは特に施設設備、教員の研修・服務管理、および授業等の指導助言について解説します。

まず、公立学校の施設、土地等の財産は公立学校の設置者である地方自治体の所有であることが原則です(公有財産、地方自治法第238条)。そのため、教育委員会が日常的に管理するのは物品等に限られます。学校の物品などの管理については各地方自治体の規定があり、学校の自律的な意思決定にはおのずと制限があります。例えば、「○○万円以上の物品調達には教育委員会の決裁が必要」といった調達の金額や目的などに関する制限です。こうした制限の中で、日常的な物品の購入や管理を各学校が担います。物品購入・施設設備の修繕など、日常的な学校での予算管理の実務は学校事務職員が担当し、学校の管理職や教育委員会との連携のもとにそれらの管理が行われています。

次に教員の研修や服務管理についてです。教員の人事権を都道府県、政令指定都市の教育委員会が持っていることは【せんせい虎の巻/知っておきたい教育制度 #3】の通りであり、教員の研修などは都道府県教育委員会、政令指定都市教育委員会、中核市教育委員会が実施します(※)。市町村教育委員会や学校も独自の研修や、校内研修などを企画・実施できますが、初任者研修などの法定研修については権限を持っていません。公立学校に勤務する教職員の身分は設置する地方自治体職員となるため、服務管理は学校を設置する地方自治体の教育委員会が行います。近年、学校の働き方改革に関する議論が進められていますが、教員の勤務時間の把握や業務量の削減など、公立小中学校の大部分を設置する市町村教育委員会が果たす役割は大きくなっています。

※中核市教育委員会は教員採用や異動の人事権は持たないが、地方教育行政の組織及び運営に関する法律第59条により、特例として研修を実施する。

研修のイラスト
教員の法定研修は教育委員会が行う。

指導主事の配置状況とその役割

教員の服務管理以外にも、教育委員会には指導主事などの教員の授業や学級経営、学校経営などについて指導助言を行う職員が在籍する場合があります。文部科学省が実施する令和3年度教育行政調査によれば、人口5000人未満の規模の小さな自治体では、指導主事の配置率が30.7%にとどまるなどまだ課題はあるものの、5000~8000人未満の自治体では61.5%、10万~30万人未満の自治体では100%になるなど、人口規模が大きくなると指導主事が配置される教育委員会の割合が増えます。指導主事は教員としての人事異動の中で、つまり教員としてのキャリアの途中でその職につくことが多くなっています。そのため学校・教員に対する指導助言に専門性を持っており、学校に在籍する教職員にとっても身近な教育行政職員なのです。

指導主事は日常的に学校を訪問し教職員の指導助言に当たりますが、計画訪問や要請訪問などの形で、授業研究会に指導助言者として招かれることもよくあり、学校で研究授業を参観し、事後研究会などの機会を通じて、授業を参観しての指導助言が行われています。こうした指導主事の役割は教員としての専門性を有する職員からのアドバイスでもあるため、指導助言を受けた教員の力量形成、職能成長に大変重要です。

教育委員会による学校の管理・指導業務
教育委員会は学校の管理監督、教員への指導助言などを行う(筆者作成)。

『実践教育法規 2023年度版』に加筆・修正

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